私のコミュニケーション【ススメ!コミュニケーションの新しいカタチ第10回】
2022/10/14
株式会社ドムドムフードサービス 代表取締役社長・卒業生
青山学院の公式機関紙「青山学報」のインタビューコーナー「あおやますぴりっと」。在校生・教職員・校友から、活躍をされている方にスポットをあてています。 「青山学報280号」の「あおやますぴりっと」に株式会社ドムドムフードサービスの藤﨑忍社長にご出演していただいたご縁で、今回コミュニケーションについての記事へとつながりました。人を包み込む大きさのある藤﨑社長の魅力あふれるコミュニケーション術をどうぞご覧ください(アオガクプラス編集部) |
私は2歳の孫と同じ建物の階違いで生活しております。
ごく稀にお出かけやお食事・入浴など2人で過ごします。
彼が発する言葉の数はまだ少ないけれど私の言葉はほぼ理解できる状況。
そこで発揮するのは優しいばーばの「たっぷり時間とスキンシップのコミュニケーション」。
彼の意思を片言の言葉・表情・手振りなどから推測し、推測した意思を何度も私の言葉で反復確認いたします。
そして私の意思は当該の場所やモノを提示しながら反復して伝えます。たっぷり時間をかけられるのは“ばーば”の特権でしょうか。(自身の子育て中には出来ていなかったと今更ながら反省してしまいます)。
そして重要なのは
などのスキンシップ。
このコミュニケーションでトラブル(泣き叫ぶ・逃げ出す)に見舞われず楽しい時間を共有出来るのです。
株式会社ドムドムフードサービスは、北は岩手県江釣子から南は福岡県笹丘まで、全国で29のハンバーガーショップを運営しております。
新型コロナウイルス感染症拡大前は週4日~5日、店舗巡回をしておりました。
入社9か月の2018年4月に代表取締役になった私の第一の取り組みは、社内風土の改革でした。
スタッフは突然の代表交代に不安を抱いたはずです。ですから、まず私自身が信頼される必要があると考えました。
店舗に出向きスタッフの作ったハンバーガーを食し笑顔で言葉を交わす。
感謝の言葉・労いの言葉・励ましの言葉・お願いの言葉など、“相手を思いやる言葉”が相互理解を深めたのだと思います。
そしてその日会えなかったスタッフのために、思いを込めたメッセージを手書きしてお店に貼付しました。
これらは信頼関係の構築、社内風土の改革に有効であったように感じています。
その結果、お客様からのクレームは激減し(まだまだ完璧ではありませんが……)
ファーストフードの常識から逸脱したオペレーションの「丸ごと!!カニバーガー」を事も無げに販売できるスタッフに変化したのです。
「たっぷり時間とスキンシップのコミュニケーション」・「訪問・思いやりのコミュニケーション」ともに、対象者の心理的安全性を担保していると思います。
例1であれば、時間とスキンシップにより私が良き理解者であると認識し、安心感を持って共通の時間を楽しめるのです。
例2であれば、思いやりのある言葉がけにより私がスタッフの業務への理解と感謝の気持ちを持つ存在であると認識してもらえます。
その結果、スタッフは私と目標を共有し、自発的行動を伴いながら業務遂行できるのです。
ですから私は、心理的安全性を導き出すコミュニケーションを第一に心がけております。
さて、新型コロナウイルス感染症拡大は私たちの生活様式を変化させました。特にコミュニケーションは、その手法を大きく変えなければならなくなりました。
家族が体調を崩したのに、帰省が叶わず、辛い思いをされた方も見受けられました。
私の叔母もこの期間に入院いたしましたが、面会には一度も行けませんでした。唯一、駐車場から、病院の窓辺に立つ叔母に手を振るだけでした。
仕事においては 2020年3月から店舗巡回を中止いたしました。
スタッフに対して心を尽くす、または信頼関係を構築するために、対面コミュニケーションが必要であると考えていただけに先行きに不安を感じていました。
一方営業施策は、先行き予測不能な時期でしたが、2020年5月「オリジナルマスク販売」開始、
同年9月「浅草花やしき店」開業、同時に「丸ごと!!カニバーガー」再販、
2021年3月「市原ぞうの国店」開業、同年7月「イオンモール新利府店」開業、
異業種とのコラボなど、展開し続けました。
すると、それらが次々とSNSで話題にのぼり、各メディアに取り上げられるようになったのです。連動して私への取材が多くなりました。
その時々、ドムドムハンバーガーの歴史・コアコンセプト・営業施策への考え・スタッフとの関係性などの質問に対し、丁寧にお答えし、その言葉がメディアに掲載され続けました。要するに私の考えをアウトプットする機会をいただけたのです。中には動画で表現する機会もありました。
対面コミュニケーションが叶わないスタッフにも、そのアウトプットが届き、インプットしてもらえるようになったのです。
店舗に出向き、感覚的な意思疎通が出来たとしても、私の考えを深く理解してもらうのは中々大儀なことです。
しかしながらメディアを通した場合、理論的な言葉を届けることが可能になりました。
その結果、スタッフはドムドムハンバーガーのあり様を深く理解してくれるようになり、事業承継以来初の黒字化を達成してくれたのです。
コロナ禍という不測の事態ではありましたが、思いがけない新たなコミュニケーションが生まれたわけです。
いずれにせよ、誰に対しても優しく丁寧な対応が(取材にいらした記者さんも含めて)
それぞれの心の満足度を向上させ、豊かなコミュニケーションを構築するのではないでしょうか。