幻のプリンが復活【青学・美食探求隊】
2025/07/19
4月下旬、大学生のインタビューのために相模原キャンパスを訪れた。
レッド隊長一押しのラーメン屋で絶品の牡蛎ラーメンを食してお腹を満たしたのち、食後の甘味を求めて、相模原キャンパスに出張の際には必ず寄ってしまう楽しみな場所、学食の売店に立ち寄り「とちおとめソフトクリーム」を購入して食べていた時のこと。昼食終わりの職員さんから声をかけられた。
「お久しぶりです」と挨拶すると「ブルーさん、幻のプリンが復活したんですよ!」と、少し興奮気味に話すKさん。青山キャンパスの学食で、昔よく食べていたあの「プリン」のレシピが見つかり、15年ぶりに相模原の地で復活した、という。「1日20個限定販売」との情報を得て、すぐさま売店へ。幸運なことに5個残っていた。早速、新相棒のオレンジ隊員(タイムトラベラ―の隊員はみなカラーネームなのだ)の分も合わせて2個購入。席に戻って、すぐさま口の中へ。あの懐かしい食感と甘さと苦さが口の中に広がった。
「あー、これだ」。
透明な器に入った、ほんのり苦さのある甘いカラメルシロップの池に浮かぶ、少し硬めのプリン……。学生の頃、特に「ソフト乗せ」は、今で言うところの自分への最高のご褒美だったものだ。卒業生の方であれば、皆さん誰でも知っているであろう“青学学食の顔”とも言える名物である。
この日は、「牡蛎ラーメン」「とちおとめソフトクリーム」、そして「幻のプリン」、さらにはインタビュー後に学生さんと「クレープ」を食べるという、美食ツアーに来たのではないかと思うほど、豪華なラインナップだった(オレンジ隊員は「私はちゃんと仕事をしました」と言っているが……)。
レシピが見つかったことから復活したというプリン。
青山キャンパスでは久しく見なくなってしまった幻のプリン。
その復活劇を知るべく、後日、IVYCSのフードサービス事業部を訪ねてみることにした。
タイムトラベラー隊の出動かと思われたが、歴史というよりは食の調査である。
そこで急遽、新たな組織を立ち上げることになった。
数次にわたる協議の末、その名も「青学・美食探求隊」が誕生!
「青学・美食探求隊」初出動である。
(ちなみにタイムトラベラー隊を踏襲し、隊員はみなカラーネームなのだ)
7月某日。
オレンジ隊員と、そして、2019年にアオガクプラスで「青山学院の四季彩-グリーンパーティーへようこそ」コーナーを主催した、食通であり、食べることも作ることも大好きな、ブラック&ホワイト隊員、久しぶりの登場である。
この日も牡蛎ラーメンからはじまり、「とちおとめソフトクリーム」(ブルーのみ)と、お気に入りのメニューをこなし、ダブルダッチ大会で世界4位になった理工学部の水野大運さんのインタビュー取材を実施。
水野さん、なかなかな傑物であった。
こちらの取材記事も後日、オレンジ隊員が掲載するのでお楽しみに。
そして学食へ。
IVYCSの久川雅憲さんが出迎えてくださった。
ちょうど今、プリンを焼いているとのこと。
裏からまわって長靴に履き替え、マスクをして厨房へ。
焼いている様子を撮影させてもらった。
この場は撮影だけで、お話を伺うべく、再び学食へ。
──学生時代に学食で販売していたプリンは最高の贅沢でした。
久川さん かつて「ジャンボプリン」は学食の“売り”で、「ビーフシチュー」と並び人気がありました。特にプリンの上にソフトクリームを乗せる「ソフト乗せ」が人気でしたね。
──この4月からその幻のプリンが復活したと聞きました。レシピが見つかってプリンが焼けるようになったと聞いたのですが?
久川さん 私が入社したての32年前、上司の神森さんに言われて、青山キャンパスで毎日プリンを焼いていました。レシピは先輩から引き継いだもので、私が他大学の学生食堂に異動になるまでの2年間で、相当の数を焼いたと思います。
相模原キャンパス開学の翌年の2004年に相模原の学食に戻ってきました。そこで再びプリンを焼き始めました。
──「レシピが見つかったから復活した」のではなく、久川さんが戻ってこられたから復活した、ということですか。“レシピ”とはまさに久川さんのことですね。そうすると相模原キャンパスの学食ではプリンがずっと提供されていたのでしょうか。
久川さん コロナ禍もあり、その後は焼いたり焼かなかったりしていました。しかし学食にプリンを置かないと、顔見知りの職員さんたちから「プリンないの?」と聞かれ、さらに青山キャンパスで「ジャンボプリン」を食べたことがないであろう若手の職員さんからも「プリンを焼いてほしい」と言われて……。そう言われると「焼かなくちゃ」という気持ちになります(笑)。
この3月に新しいコンベクションオーブンが導入され、そのおかげで、またムラのないプリンが焼けるようになり、今年4月からはほぼ毎日焼いています。
──味へのこだわりを教えてください。
久川さん あえて変えないことでしょうか。32年前に受け継いだプリンの味は特に変えていません。昔ながらの硬いプリンを、あの時の味そのままで提供したいなと思っています。本当はもっと低価格で提供したいのですが、牛乳も値上がってしまい、難しい状況です。
──手間暇のかかる手作りプリンですが、1日にどのくらい販売しているのですか。
久川さん 1日10個くらいでしょうか。プリンだけで飽きがこないように杏仁豆腐も作っていて、2種類合わせて1日約20個で展開しています。
──最後にメッセージをお願いします。
久川さん 昔からいらっしゃる職員さんから「懐かしい味がした」と言っていただけることもあります。私としては「喜んでいただける」、ただそれだけで嬉しいです。
──青山キャンパスでも、大学同窓祭の折などに提供して、校友の方に懐かしんでいただければ最高ですね。今日はありがとうございました。
インタビューの途中で、プリンが焼けたということで、3人分のプリンをご用意いただいた。
しかもたっぷりのソフト乗せ!
出てきた瞬間、3人から感嘆の声がこぼれ、ほっぺたが落ちそうになるほど美味しくいただきました。
レシピも工程も諳んじられるほど身についている“生けるレシピ”久川さんに、プリンの材料と作り方を伺いました。〈ブラック&ホワイト隊員まとめ〉
ジャンボプリンの復活、大変嬉しかったです!
久川さんご自身が生けるレシピだったとは。あの少し硬めの食感と素朴なほろ苦い甘さを口にした瞬間、学生時代、学食で友人や先輩たちと笑い合った当時の思い出がまるでフラッシュバックのように蘇ってきました。こんな風に味覚が記憶を呼び起こす体験に自分でも驚きました。
“ジャンボプリンで校友若返り大作戦!”
多くの校友の方にも懐かしんでいただけるよう、青山キャンパスでも懐かしのプリンの復活を心待ちにしています。
見た目に圧倒される「ジャンボプリン」。
スプーンを入れても震えることなく、スプーンの上にしずしずと収まる。ひとさじすくっても尚、奥ゆかしいまでの固さを保っている。
硬いプリンだけど味はまろやかでやわらかい。牛乳臭さも卵臭さもなく、卵と牛乳が混ざり合うことで、棘がとられ、お互いの良いところを高め合っている。その優しい甘さをほんのり苦いカラメルソースが上手く引き立てている。甘いけれど決してくどくない。どこか懐かしい味がする。
3時間も冷蔵庫で休まされ、温かな湯に浸かりながら低温で焼き上げられたプリンだけがもつ、優しさは宇宙に届けたくなる味だ。
ちなみに宇宙食ではまだプリンはないらしい(webサイト上の情報による)。相模原キャンパスに行くということで、理工学部物理科学科S本先生に「プリンを宇宙に持っていったらどうなりますか」という質問をしようと思い、そもそも宇宙食にプリンがあるのか調べてみたら、「(宇宙食の条件のひとつとして)常温で長期保存が可能であること」というJAXAのwebサイトにあった一行で宇宙食プリンは(質問も)玉砕した。恐らく、プリンは地球にいる間でしか食せないであろう。作ると面倒だけど、食べれば美味しい。地球限定食のプリン。しかも学食ではジャンボサイズで食べられる💛
地球にいる間に食べてみては?
某日、久川さんのレシピをもとに、我が家でも作ってみた。
材料は、牛乳500mlの分量で。
残念ながら「す」が入ってしまったが、味も硬さもほぼ同じに出来上がった。
ソフトクリームを乗せればよかった!
ちなみに、ブラック&ホワイト隊員には独自のプリンレシピがあるそうで、後日、青学・美食探求隊のみんなにふるまっていただければと、楽しみにしている(ブラック&ホワイト隊員は「宇宙には持って行けないから」となにやらつぶやいている……)。
ブラック&ホワイト隊員から宇宙食の話も出て、「本当にS本先生にインタビューに行かなくてはいけないのだろうか?」と、内心冷や冷やしながらも、某テレビ局の番組「新プロジェクトX ~挑戦者たち~」で、高校生が作るサバ缶が宇宙に行った、という番組を見て感動したばかりの頃だったので、「宇宙食もあり得るかも」と前向きになったので、ぜひS本先生にお話を伺いたかったものだ。
そしてプリンは、どうやら、レシピが見つかったから復活した、というわけではなく、パティシエの久川さんが戻ってきてくださったおかげで相模原キャンパスで復活し、コロナ禍を経て、販売したりしなかったりの状況だったが、新しいコンベクションオーブンが手に入ったため、毎日10個ずつ販売できるようになった、というのが正解のようだ。
32年前に毎日作り続けた方が今も作っているのだから、味も保障されている。
久川さん、ありがとうございます。
ただ、青山キャンパスで見かけなくなった理由はわからないが……。
そして隊員3人は同じことを思った。
「いつまでもお元気で、これからも作り続けてください」
「そして青山キャンパスでも、幻のプリンが食べられますように」
( `・∀・´)ノヨロシク
美食を追い求め、「青学・美食探求隊」の活躍はまだまだ続く。
〈協力〉
・株式会社アイビー・シー・エス フードサービス事業部相模原店グループ