Interview インタビュー あおやま すぴりっと

“見えないから面白い” 世界初・ブラックホールの撮影に成功〈校友・秋山和徳さん〉

今年の4月にブラックホールの輪郭の撮影に世界で初めて成功し(写真〈上〉)、世界中で話題になりました。この成功がもたらしたことは、アインシュタインの相対性理論で予言されたブラックホールの存在が、100年を経て、視覚的に初めて確認され、ブラックホールの存在が証明されたこと。この偉業達成のために、メンバー約200名に及ぶ国際的な研究グループが組織され、日本では、国立天文台の本間希樹教授を中心としたメンバーがこのプロジェクトに参加しました。その中の重要な役割である画像化チームのリーダーを務められたのが、青山学院初等部、中等部、高等部出身の、秋山和徳さんです。
秋山さんは、日本人初のアメリカ国立電波天文台 Jansky Fellowとしてマサチューセッツ工科大学ヘイスタック観測所の研究員として働いていらっしゃいます。
お忙しい合間を縫って母校の中等部を訪問された際にお話を伺うことができました。

 写真(上):M87銀河の中心にあるブラックホールの画像
       国際プロジェクト『イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)』撮影・画像提供

(2019年5月14日インタビュー)
秋山和徳さん
左から、浦田浩中等部教頭、秋山さん、関隆一教諭(秋山さんが3年生の時の担任)

 

中等部時代に興味をもった相対性理論
青山学院中等部のころ

──もともと理科が好きだったのですか?
科学の実験が好きで、中等部に入ってから物理が好きになりました。これが現在の私の原点の一つです。当時の読書感想文のノートを見ると、ほとんどが理科の本で、講談社のブルーバックスシリーズの量子論や相対性理論の本を読んでいました。

──中等部はどのような学校でしたか?
自由な校風で、生徒がやりたいことを先生方はサポートしてくれました。たとえば、ハイキング好きが集まって同好会を作ろうとしたらすぐ許可をもらえて、有賀実男先生が顧問になってくださいました。フィッシングクラブも先輩と一緒に作りました。松延素男先生(現・高等部教諭)が顧問になってくださいました。学校行事で自然に触れる機会も多く、理科への興味をもつ環境が揃っていましたね。また、受験勉強をする必要がないため、好きなことを勉強できました。

 

世界で活躍する人物を輩出する科学部

──クラブは何部でしたか?
浦田浩先生(現・中等部教頭)が顧問だった科学部に所属していましたが(科学部副部長を務めた)、理科実験が楽しかったですね。その時の仲間で、私と同じように博士号まで取っている友人が大勢います。2019ミス・インターナショナル日本代表の岡田朋峰さんも学年は違いますが科学部出身ですよ。

──多彩な方々ですね。中等部生の頃の夢は何でしたか?
小学生の頃は医者になりたくて、ウイルスの本を読んでいました。算数が得意で大好きでしたね。そして、中等部で物理が好きになって、科学者になることが夢になりました。

──まさに実現されていらっしゃいますね。中等部時代の印象に残っている思い出はありますか?
文化祭の時、科学部でホバークラフトを作りました。ブロワー(落ち葉掃除機)を使って作りましたが、バランスが悪く、空気が漏れて、失敗しました(笑)。中学生レベルだと、まだ雑でしたね。

 

多様な文化・環境に順応

──毎日の礼拝などキリスト教に触れた機会は活かされていますか?
私はクリスチャンではないのですが、キリスト教文化を知ることでキリスト教文化の地である欧米圏の方の思考の理解ができました。そのため、今回の200名にのぼる国際プロジェクトの一員として、異なる文化の中でお互いを理解し、尊重しあうことが可能となり、このプロジェクトの成功へとつながったと思います。キリスト教に触れていたことが良かったですね。

──大学は北海道大学へ進まれました。
北海道大学に行ったのも良かったですね。ノビノビとした校風と土地柄でしたので。大成功でした。

──東京大学大学院を終了後、マサチューセッツ工科大学に勤務されていますが、中等部の頃、英語は得意でしたか?
ようやくものにできたのは大学からですね。大学院では英語の論文をよく読んでいたのですが、マサチューセッツ工科大学に行った当初は、日常会話に少し不自由しました。むしろ専門用語を使う会話や打ち合わせの方が大丈夫でしたね。英会話学校に通ったり、プロジェクトで頻繁に電話会議をする機会を経て、だんだん英語に不自由しなくなってきました。

 

“見えない星が見たい”から始まった

──宇宙に興味を持ったのはいつからですか?
いわゆる“星少年”ではありませんでした。座標という数値ではわかっていますが、今回撮影したブラックホールがある“おとめ座”の位置と形を、実はよく知らないのです(笑)。
宇宙を研究する人の中には、もともと星が好きな方のほかに、宇宙支配の法則や成り立ちに興味がある人が多いですね。私もそのうちの一人であり、“見えない星が見たい”“見えないから面白い”と、ブラックホールの存在に興味を持っていました。

──どのような経緯で今回のプロジェクトの一員になったのですか?
大学卒業後、大学院に入るときに今回の日本人リーダーの本間教授からお誘いを受けました。学生としては、日本人で最初のメンバーとなりました。
さらには、様々な分野の研究者の方々と接する中で、脳科学者や統計数理学者の方々との関わりから、スパースモデリングを使った画像化の手法を共同で考案したりしました。異分野とのコラボレーションは、私の研究スタイルと言えます。

 

宇宙物理学の新たな時代へ

──今回のブラックホール可視化成功の意義についてお聞かせください
1915年にアインシュタインが発表した一般相対性理論から約100年。間接的にその存在が予測されていたものの、今回ブラックホールの撮影に成功したことで、その存在に対してかつてないほど強い直接的な証拠が得られました。またこれは宇宙物理学の新たな時代に突入したと言えるもので、人類はブラックホールを撮影して視覚的に研究できる段階までたどり着きました。今回撮影されたブラックホールのように、銀河の中心に存在する巨大ブラックホールは銀河と一緒に進化していくと考えられています。私たちの成り立ちへの影響も含めて、ブラックホールが宇宙で果たす役割について、今後一層研究が進むことが期待されています。

──今後のご自身の目標をお聞かせください
ブラックホールの撮影ができたものの、より鮮明な画像が撮影できるように努めていきたいですね。その後は、また異なる分野とコラボした研究をしたいですね。

──中等部の後輩へメッセージをお願いします
自分の好きなことをトコトンやること、ですね。中等部の先生がサポートしてくれるので安心してください。

新校舎「メディアセンター」で浦田教頭と科学書籍コーナーで懐かしむ秋山さん
中等部新校舎「メディアセンター」で浦田教頭と科学書籍コーナーで懐かしむ秋山さん

 

秋山 和徳 Akiyama Kazunori

青山学院初等部、中等部、高等部を経て、北海道大学理学部物理学科へ進学。
首席で卒業後、東京大学大学院理学系研究科天文学専攻を修了(博士〈理学〉)。
2015年3月、同研究科総代、東京大学総長賞を受賞。
2017年9月より、アメリカ国立電波天文台 Jansky Fellow(日本人初)。
現在、マサチューセッツ工科大学ヘイスタック観測所に勤務。

 

 

秋山さんお勧めの本

『巨大ブラックホールの謎 宇宙最大の「時空の穴」に迫る』
『巨大ブラックホールの謎 宇宙最大の「時空の穴」に迫る』
講談社ブルーバックス
著者:本間 希樹
定価:1,000円(税別)