ラクロスが繋ぐ未来 ❝Lacrosse Makes Friends❞ 【第1回 ラクロスってどんなスポーツ?】
2025/08/19
ラクロスというスポーツの名前は耳にしたことがあるけれど、実際見たことがない、という方もまだまだ多いのではないかと思う。あるいは、今まさにラクロスをやっているとか、昔ラクロスやっていたけど…という方もいらっしゃるかもしれない。
「今、日本で最も勢いのあるスポーツ」のひとつとして、また、特に、2028年のロサンゼルス五輪の追加種目に決定してから、その成長は一気に加速している「ラクロス」について紹介したい。
約40年前に日本に上陸した「ラクロス」というカレッジスポーツは、本学と深いつながりを持つ。1986年に慶應義塾大学の男子ラクロス部が日本で初めて創設されたことをきっかけに、翌1987年には本学で女子ラクロス部が発足。女子ラクロス部としては、日本の大学の中でも最初に作られたひとつだ。その後、本学の男子ラクロス部が、慶應義塾大学、東京大学に続いて日本で3番目に創設され、1989年の第1回全日本選手権大会では優勝を果たしている。
本学ラクロス部は、短い日本ラクロスの歴史の中でも伝統ある由緒正しいチームである。また、男女ともに数多くの選手が歴代日本代表に選出されており、直近の代表では男子3名、女子3名の合計6名が選ばれており、本学は日本ラクロス界において重要な存在感を発揮している。
これから、計7回にわたり、本学との関わりを紐解きながら、ラクロスというスポーツの魅力と未来について、様々な方に語っていただこうと思う。
初回は「ラクロスとはどんなスポーツか」を紹介する。
その起源は、17世紀にまでさかのぼる。
ラクロスは、もともと北米の南東部の先住民達が自分たちの神との繋がりを深める儀式の一環として、または、部族間の争いの平和的解決のために用いたものだった。道具も、スティック1本ではなく、部族によっては両手にスティックを持つなど、スティックの形状も部族ごとに異なり、競技を行っていたようだ。
時には、各チームが1,000人以上になることもあり、ゴールとゴールの距離は短くても500ヤード(約460メートル)、長いときには数マイルにも及ぶ広大なフィールドを用いたとのこと。この先住民のゲームは、狩りに必要な体力や耐久力、勇気を養うためのものだったようだ。今ではとうてい考えられないほどのスケールである。
そうして、17世紀に半ばに入植してきたフランス系の移民によって発見され、スポーツ化したものが始まりだと言われている。また、その使用していた道具が、僧侶が持つ杖(Crosse)に似ていたことから「La-Crosse」と呼ぶようになった。
100年近くアメリカ、カナダ、イングランド、オーストラリアのみで行われていたが、現在アメリカ・カナダを中心に オーストラリア・英国全土・チェコ・ドイツ・アルゼンチン・韓国など、日本を含め94の国と地域が国際競技連盟であるワールドラクロス(WORLD LACROSSE)に加盟し、世界的競技人口は約110万人にもなる。
ラクロスの試合を楽しんで観戦いただくために、競技について説明しよう。
「ラクロスってどんなスポーツ?」と聞かれた場合、ボール自体が空中を飛び交うため、よく空中ホッケーのようなスポーツだと説明することもある。サッカーやラグビー場ほどの大きさのフィールドで、ホッケーのスティックの代わりに、先端に網のついたクロスと呼ばれるスティックを使い、テニスボールくらいの大きさの硬質ゴム製のボール(直径約6cm、約145g)を相手側の約180cm四方のゴールに入れることで得点を競うゲームである。
また、ボールを手で持つことはできない。選手が持つ「クロス」に入れたら、歩数無制限。
クロスの網からボールが落ちないように、遠心力を利用してクレイドリング(ゆりかごをゆらすような動き)という巧みなクロスワークでボールをキープしたり、転がったボールをいち早く拾って味方へパスしたりしながらボールを運ぶ。
カレッジスポーツとして行われているのは、10人制競技だが、男子と女子ではルールが大きく異なり、共通点は以下の部分。
①フィールドサイズ:110m×60m(最小は92m×48m)
②試合時間は15分×4クォーター
③ゴーリー(G)* 1人、ディフェンダー(DF)3人、ミッドフィールダー(MF) 3人、アタッカー(AT)3人の1チーム10人制
*ゴーリーはゴールキーパーのこと。
【男子競技】
①上半身にヘルメット、ショルダーパッド、グローブなど防具を装着
②DFのクロスは180cmほどの長さのものを使用
③ボールを持っている選手の首から下、腰から上へのクロスを使用したチェック(叩くこと)が可能
④ボディチェック
グラウンドボール(地面に転がったボールを取ること)の時、ボールから半径3m以内にいるプレーヤーに対して、ボールを持っている、持っていないにかかわらず体当たりや押しのけたりといったフィジカルコンタクトが許される。そのため、ボールが転がった時には、「ボールを取りに行く選手」と、「それを援護すべく相手選手の邪魔をするために体に当たりに行く選手」に分かれる
【女子競技】
①ゴーリー以外は防具をつけず、アイガードとマウスピースを着用
②身体への接触プレーは禁止。ただし、相手選手のクロスにボールが触れているか、または、相手選手がボールを保有している状態のクロスに対しては、クロスで叩くことができる
2021年に世界ラクロス連盟は、競技の普及とオリンピック正式種目化を目指して開発してきた6人制ラクロス「SIXES(シクシズ)」を発表。従来の10人制とは異なり、SIXESは試合展開が非常に速く、選手のスピードと技術がより際立つ形式である。観戦者にとっても、よりエンターテインメント性の高い競技として注目を集めている。
2028年ロサンゼルス五輪では、このSIXESでの競技が決定されており、日本でも2023年から公式戦が開催されるなど、国内でも着実に広がりを見せている。
そして、2025年8月7日~11日に開催された「ワールドゲームズ2025」のラクロス大会では、女子6人制ラクロス(SIXES)が正式競技として採用。女子日本代表チームは、強豪オーストラリアとの接戦の末、1点差で惜しくも敗退。結果は4位となったが、世界の舞台で堂々たる戦いを見せた。
本学からも理工学部の織田温子選手が代表メンバーとして出場し、得点にも貢献しており、日本ラクロス界の未来に希望を与える存在の一人である。
ラクロスは今、進化の真っ只中である。SIXESという新たなスタイルも加わったことにより、競技の魅力をさらに引き出し、次なる舞台、ロサンゼルス五輪での日本代表の活躍にも期待が高まっている。
以下は、10人制競技と6人制競技の比較表である。日本ラクロス協会のウェブサイトに掲載されていたものを紹介する。
最後に、日本ラクロス協会のご協力のもと、ラクロス初心者でも楽しめる動画やウェブページを紹介しよう。
以下の動画やサイトでルールや見どころをチェックし、予備知識を入れたらラクロスの試合を観戦しに出かけてみては? そして、緑色のアイテムを手に、スタンドを緑一色に染め、本学のチームを熱く応援してほしい! そのエールが選手たちにどれほどの大きな力になるだろうかと想像すると、応援する私たちも元気をもらえそうだ。
次回は、さらなるラクロスの特徴と魅力を本学の男子・女子ラクロス部の試合日程も併せて公開。どうぞお楽しみに!
引用元:
JLA「ラクロスの現状と概略」
SIXESの特徴 | JLA | 公益社団法人日本ラクロス協会
大久保宜浩監修『ゼロから始めるラクロス』実業之日本社