Christianity キリスト教

大人になった今こそ知りたいクリスマスの本当の意味

青山学院大学総合文化政策学部総合文化政策学科教授、大学宗教主任

森島 豊

 

「メリー・クリスマス!」。
12月になると街なかでジングル・ベルの音と一緒に聞こえてきます。クリスマスと言えばサンタクロース。幼い子どもたちは、真っ赤なお鼻のトナカイにソリを引かせたサンタが、真夜中にプレゼントを持ってきてくれることをドキドキしながら待っています。サンタの存在が大きいので、クリスマスはサンタの誕生日だと思っている人もいます。しかし、そもそもクリスマスとは何の日なのか。青山学院の建学の精神であるキリスト教とどのような関係があるのか、ご一緒に考えてみましょう。

 

クリスマスの語源

クリスマスは英語でChristmasと表記するように「キリスト(Christ)」と「ミサ(mass=礼拝)」という言葉でできています。日本語に訳すと「キリストを礼拝する」という意味です。実は、クリスマスはキリスト教の祝祭で、イエス・キリストの誕生を喜び祝う日なのです。

ちなみに、キリストはギリシャ語でΧριστόςと表記します。これを古くから「X」と略記する習慣がありました。ギリシャ語の Χ(カイ)が英語のエックスと見た目が似ているため、クリスマスを「Xmas」と表記するようになりました。

ともあれ、クリスマスはサンタクロースの誕生日ではないのです。
ちなみに、サンタクロースの元になった人物は、聖ニコラウス(St. Nicholas)という4世紀のキリスト教の司教(現在のトルコ南部・ミラの司教)です。

 

Saint Nicholas.
聖ニコラウス(St. Nicholas)〈wikimedia commonsより〉

 

なぜ12月25日にお祝いするの?

クリスマスはイエス・キリストの誕生を祝う日ですが、聖書にはイエスの誕生日が12月25日であるとはどこにも書いてありません。それどころか、本当のイエスの誕生日はいつであるか今も分からないのです。

12月25日をイエス・キリストの誕生日としてお祝いした最古の確実な記録は紀元336年と言われています。ローマ皇帝コンスタンティヌス(在位 306–337)の治世にローマで祝われました。

12月25日に定めた理由については諸説あります。その一つが、冬至との結びつきです。冬至は太陽の光が一番短くなり、暗闇が一番長くなる季節です。当時のローマでは、冬至を過ぎて太陽の光が再び強くなる時期として12月25日が「太陽の復活の日」とみなされていました。聖書はイエス・キリストの誕生について「闇の中を歩んでいた民は大いなる光を見た。死の陰の地に住んでいた者たちの上に光が輝いた」(イザヤ書9章1節)と書いています。こうした象徴性から、イエス・キリストの誕生を暗闇に輝く光を一番感じるこの日に祝ったという説があります。

Saint Nicholas.

 

クリスマス・イヴの夜が特別なのは意味がある

ヨーロッパの教会では、古くからクリスマス・イヴの夜に礼拝堂に集まりました。夜の暗闇の中でロウソクに光を灯す礼拝をしたのです。真っ暗の中で、外から一本のロウソクの光が入ってきます。それが祭壇に灯され、会衆が持つロウソクに灯され、隣の人のロウソクを灯し、真っ暗だった礼拝堂が光で明るくなります。「光は闇の中で輝いている」(ヨハネ福音書1章5節)と聖書が語るように、神が地上に来られた喜びを身体で味わうキャンドル・ライト・サービス(燭火礼拝)が行われたのです。

青山学院のスクール・モットーは「地の塩、世の光」です。青山学院はこの暗い世界に神の愛の光を灯すことを大事にしているのです。

今年のクリスマスはぜひ教会で過ごしてみてはいかがでしょうか。
良いクリスマスを。メリー・クリスマス!

Saint Nicholas.

 

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