青山学院幼稚園のクリスマスアドヴェント─現園舎でむかえる最後のクリスマス
2023/12/20
毎年クリスマスを約ひと月後に控えた頃から、青山学院幼稚園ではアドヴェントのお祝いが行われます。「アドヴェント(Advent)」とはイエス・キリストの降誕を待ち望む、クリスマスの準備期間のこと。ラテン語で「到来」を意味する「Adventus(アドベントゥス)」という言葉が語源となっています。通常毎年12月25日のクリスマスの直前の日曜日からさかのぼって、3つめの日曜日が第1アドヴェントにあたり、そこから12月24日まで日曜日ごとに第2アドヴェント、第3アドヴェント、第4アドヴェントと約4週間のアドヴェント期間が続きます。
青山学院幼稚園では2学期の終業日に合わせて、約3週にわたってアドヴェント礼拝を行います。アドヴェントクランツ(Kranz=ドイツ語で冠)に毎週1つずつ火が灯るのをみんなで見まもりながらクリスマスの訪れを待つときです。
ちょうどこの時期、年長組の園児たちが、チームに分かれて学院のさまざまな部署を訪れ、そこで働く職員たちのためにクリスマスキャロルを歌い、手づくりのクリスマス飾りをプレゼントしてくれます。職員たちは毎年このときをとても楽しみに待っています。
12月の2学期最後の日には年長組がページェント(キリストの降誕劇)をささげてクリスマスをお祝いします。ここ数年はコロナ禍での人数制限により、このクリスマスページェントを全学年の園児やご家族・来賓の皆さんと一緒にお祝いすることがかないませんでしたが、今年12月14日のクリスマス礼拝には、2019年以来4年ぶりにたくさんの方々が参列することができました。
青山学院が創立150周年をむかえる来年2024年に、幼稚園は新しい園舎に引っ越しすることが決まっています。そのため、この園舎での最後のクリスマスを、たくさんの皆さんとともにお祝いできたのはとてもうれしいことでした。
年長組のページェント。皆が心を合せてすばらしい降誕劇をささげることができました。
年長組が礼拝当日をむかえるまでの日々には、園児たちの間で毎年たくさんのドラマが繰り広げられます。
ここからは、クリスマスのページェント礼拝をむかえるまでの2022年度年長組園児たちの様子を、「青山学報」掲載の記事を引用してご紹介します。
幼稚園教諭 橋本 治奈──「青山学報」283号(2023年春号)より抜粋
年長組の子どもたちは、クリスマスページェントを通して、年少組や年中組の子どもたち、保護者、学院の方々に、クリスマスの喜びを伝える大切な役目があります。クリスマスページェントでは、年長児全員が神さまから与えられた大切な役を担います。その役は、保育者が決めるのではなく、子どもたちが自分で担いたい役を考え、やりたい役が友だちと重なった時には、どのようにしてその役を担う人を決めるのか、保育者の支えの中で、子ども同士で話し合いをして決めています。
年長組の子どもたちは、これまでの幼稚園での歩みの中で毎年クリスマス物語を聴いていますが、アドヴェントの少し前、一人ひとりの子どもの心の中にもイエスさまをお迎えする準備ができるようにと願い、改めて保育者がクリスマス物語を伝えたり、保育者が演じるクリスマスページェントを見たり、クリスマスページェントを行う中で、自分の好きな役をやってみたりするときを大切に持ちました。また、遊びの中では、「クリスマスページェントごっこ」として、馬小屋や星や羊のご飯など、必要な物を作り、子どもたちなりに保育者から聴いた話を再現している姿がありました。
クリスマスの少し前。年長組四十名にクリスマスページェントの役決めをすることを伝え、それぞれ担いたい役を出し合いました。自分が一番担いたい役を担えることになった子どももいましたが、いくつかの役では、担いたい役が重なり、そこに該当する子どもたちで話し合いをして役決めを行いました。
ある役では、その役を担うのは一人でしたが、担いたいと言ってきた子どもが二人いました。どのように決めようかと保育者が投げかけようとすると、Aちゃんが声を出して祈り始めました。「神さま、今から役を決めます。私はこの役をどうしてもやりたいです。でもBちゃんも同じ役をやりたいです。神さま、どちらがやることになっても、二人を守っていてください。でも私はどうしてもやりたいです」と、少し緊張しながら神さまにお願いするように祈り始めたAちゃん。その姿を見てBちゃんも目を閉じて、しばらくの間声を出さずに祈ります。Aちゃんはその様子を緊張しながらじっと見つめます。少ししてから、「私もAちゃんのことをお祈りしたよ」と優しく微笑むBちゃんの姿に、初めはやりたい気持ちで溢れて、少し緊張していたAちゃんの肩の力がふっと抜けた様子で「どちらがやっても神さまはきっと喜んでくれるね」と、話し合いを始めました。どのように決めるのか、二人で話し合いをして、くじ引きで決めることになり、Bちゃんがやることに決まりました。「私もやりたかった! でも、私には大切な役が他にあるから、Bちゃん良かったね!」とAちゃんはすぐにBちゃんに声を掛けました。
幼稚園に入園してから、毎日お祈りをしたり賛美したり、礼拝の中で神さまのお話を聴いたりするときを大切に過ごしてきたその積み重ねから、今回の役決めでも、子どもたちは当たり前のように、神さまを信頼し、神さまへの信仰が培われていることを感じました。
役が決まり、子どもたちはクリスマス礼拝の日を楽しみに待っていました。三回目のアドヴェント礼拝では、礼拝の退場時には、保護者がハンドベルの演奏を聴かせてくださいました。保護者のハンドベル演奏は、元女子短期大学子ども学科教授の飯靖子先生が指導してくださっていて、子どもたちも礼拝後に、飯先生からハンドベルの持ち方や鳴らし方を教わりました。飯先生が「皆で演奏するときに大切なことは何かわかるかしら?」と子どもたちに尋ねると、「心を一つにすること!」と子どもたちが口々に呟きました。
クリスマスまでの間、子どもたちが遊びや集まり等での活動に見通しを持って過ごせるように、その日や翌日の流れなどを伝えながら過ごしました。「そろそろ集まるわよ」と保育者が声を掛けると、それを聞いた子どもが「(クリスマスページェントをするから)集まろう」と園内を走り回って声を掛け、その声を聞いた別の子どもが「わかった。裏庭でも遊んでいる友だちがいるから声を掛けてくるね」などとまた別の子どもに声を掛けにいき、保育者が声を掛けて回らなくても、子ども同士で声を掛け合って、部屋に集まる姿が見られました。「心を一つに」という言葉が子どもたちの心にしっかりと届き、年長組四十人で心を一つにしておささげしたクリスマスページェントとなりました。
今、世界の中でも日本の中でも苦しみや悩みの中で過ごしている方がたくさんいます。神さまのことを知っていて、神さまを信頼して過ごしている私たちだからこそ、何かできることはないかと、アドヴェントの期間に改めてその方たちのことを覚え、子どもたちと毎日祈り、献金をおささげしながら過ごしました。
そのことを心に覚えながら、皆で心を一つにしておささげしたクリスマスページェントは、目の前で一緒にクリスマスの喜びを感じていた方たちだけではなく、神さまの心にもしっかりと届いていたことでしょう。