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卒園式を花でいっぱいに~大学経営学部生による幼稚園お花プロジェクト

たくさんの花で卒園生を送りたい──大学と愛知県田原市との連携


2023年3月。青山学院幼稚園では卒園式が行われました。この3年間はさまざまな制限のなかで多くの行事を行ってきた幼稚園ですが、卒園式も在園児は出席できず、卒園児と保護者のみという最少人数での実施が2年続いていました。
しかし今年は年中組の子どもたちの参列が叶い、みんなで卒園児にありがとうの言葉を伝え、大きな声で歌を歌ってお見送りすることができました。コロナ禍以前の風景が少しずつ戻ってきています。

 

エントランスには桜も咲き始めました

 

玄関や園庭、保育室などにはいつも花や緑があふれている青山学院幼稚園ですが、卒園式のこの日、卒園証書授与が行われたホールにはいつもよりたくさんの花が並んでいました。式では名前を呼ばれた園児が元気な声でお返事をしたあと、花道を歩いて前に進み、山本与志春園長先生から証書を受け取りました。


卒園児が歩く花道にずらりと並んだ愛らしいフラワーアレンジは、年中組の子どもたちが、卒園する年長組のことを思いながらつくったものです。牛乳パックの空き箱でできた花器には、年少組の子どもたちが絵の具で色を染めたカラフルな紙が巻かれています。
このようにたくさんの花で彩られた幼稚園の卒園式ですが、この花を用意してくれたのは、青山学院大学経営学部の学生団体SBSL(School of Business Student Leaders)の皆さん。SBSLは地方活性化を目的とした取り組みのひとつとして、愛知県田原市との協働でこれまでもさまざまな活動を行ってきました。幼稚園の卒園式に花を提供するというこのプロジェクトは、花の産出額日本一である田原市JA愛知みなみとの連携から実現したもので、自然豊かで活気ある田原市の認知度向上に貢献することを期待されたものでもありました。

事前準備で幼稚園に集まった大学経営学部の学生団体SBSLの皆さん。右から2人目がリーダーの酒井さん

今回このプロジェクトの中心となって活動したのは、経営学部マーケティング学科2年の酒井菜々子さん。スタートから3回目を数える今年は、これまでの実績をふまえて、幼稚園の先生方から事前に具体的なイメージの聞き取りを行い、花の種類や色など園の希望に沿って田原市との折衝を進めてきました。
「幼稚園の先生方からは、昨年よりもピンクやオレンジなどの明るい色の花材であると嬉しいということと、花の種類についてのリクエストをいただきました。田原市の方にお伝えしたところ、快くご了承いただき、昨年より華やかな色の花材を多くいただくことができました。また今年度は市のご厚意により量も昨年より多めに送ることができるとのありがたいご提案をいただいて、昨年の倍以上の2000本のお花を送っていただくことになりました」。

 

卒園式の事前準備

卒園式直前の土曜日。幼稚園には2000本あまりの美しい花々が届いていました。「色も雰囲気もイメージ通りのお花が届きました!」と喜びの声を聞かせてくれたのは、年中組の担任である迫田先生と近藤先生。「リーダーの酒井さんが中心となって皆さん本当に一生懸命準備してくださいました」。

この日はSBSLの皆さんが朝から幼稚園に集まって事前の準備を行いました。
「今日の事前準備に参加できる学生が例年よりも少なかったことから、お花の数が増えたとしても準備が時間内に終わるよう、準備日以前にできることは先取りして行うなどの工夫をしました」と話す酒井さん。そんな姿を間近に見ていた幼稚園の近藤先生は「(事前準備日前日である)昨日も遅くまで準備してくださいました。本当に感謝しています」と笑顔で話してくれました。

まずは届いたたくさんの花の長さを整えます。年中組の子どもたちの小さな手でも扱いやすいように、すてきなアレンジができるようにと、学生の皆さんがアイディアを出しながら手慣れた様子でお花を捌いていきます。「お花の長さや組み合わせかたなど、どうしたら一番きれいに見えるかというのも時間をかけて考えてくれて、本当にありがたかったです」(迫田先生)。

できあがりのイメージを相談しながら決めていきます。左から幼稚園の迫田先生、近藤先生、経営学科2年清水理さん
花の長さに変化をつけて何度も試作しました
できあがりイメージに合わせて花をカットしていきます

こちらは花器の準備をする皆さんです。牛乳パックの空き箱をカットしたものに、子どもが色をつけたカラフルな紙を巻いて完成させます。心のこもったすてきな花器ができあがりました。
この染め紙はもともと年少組が、年長さんへ贈りものをするために手づくりしたものですが、そのとき余った分をお裾分けしてもらったそうです。



SBSLの皆さんが万全の準備をしてくれた花を使って、年中組の子どもたちが思い思いに自分のフラワーアレンジをつくっていきます。


こうして学生、園児、幼稚園の先生たちがみんなで心を込めて用意したフラワーアレンジが花道を彩りました。年長組の子どもたちは、みんな元気いっぱいに花道を歩いて卒園していきました。
大学経営学部SBSLによる田原市とのコラボ、そして学生の「卒園式にたくさんのお花を」というアイディアから始まったこのプロジェクトが、学生と幼稚園との協働によって年々より充実したものに進化してきました。幼稚園から大学までを擁する総合学園としての青山学院ならではのつながりが、コロナ禍の困難をみんなで乗り越えてきた幼稚園の卒園式に、文字通り花を添えることとなりました。卒園児にとっても、心を込めて送り出した在園児にとっても、きっと特別な思い出になったことでしょう。