Interview インタビュー 青山極め人

自身のスタイルを貫き、“唯一の存在”を目指す〈大学・髙津 奈々さん〉

フィンスイミング

「小さい頃は水が怖くて、スイミングをやりたくなかった」という髙津さんは、今ではフィンスイミングの競技で日本記録を持つ。早くプールから出たい一心で泳いだことでスピードがつき、いつの間にか競うのが楽しくなっていったのだそう。フィンスイミングは、「競泳では出せない速度を出せることに惹かれて、挑戦した日からハマった」という。

日頃は、競泳にも取り組む一方、サーフィンやスキーなども楽しむ。「全てがフィンスイミングに活きている。色々やった方が楽しく、結果も出る。それが自分のスタイル」と活き活きと話す。

2022年に開催される“第2のオリンピック”といわれるワールドゲームズ出場を目指し、その選考会を兼ねる世界選手権8位以内入賞を目標に、練習に励んでいる。

「日本は強豪国と比べると、世界で戦える選手がいないので、今後、日本としての強さを世界に知らせることができたら」と意気込む。さらにその先は、「スポーツ心理学を学び、自分の経験も活かして、アスリートをサポートする職を視野に入れている」と語った。

 

髙津 奈々さん

青山学院大学教育人間科学部心理学科3年

◆主な戦績
第30回フィンスイミング日本選手権大会400mサーフィス 優勝(日本新記録)
5th Finswimming University Competition 200mサーフィス 準優勝(日本新記録)
第31回フィンスイミング日本選手権大会 200mサーフィス 優勝 他

「青山学報」273号(2020年10月発行)より転載

 

Episodes ―こぼれ話―

紙幅の関係で掲載がかなわなかったインタビューをご紹介いたします。

髙津奈々さん

──水泳を始めたのは、ご家族など身近な方の影響ですか?
私が喘息だったので、その治療として母の考えで水泳を始めました。自分でやりたいという意志はなくて、水が怖かったためプールサイドで見学しているような子でした。プールからいち早く出たくて、プールの縁に手をかけて進むカニさん歩きというものが、他の子と比べてあり得ないぐらい速かったそうです。その頃を知っている人たちからすると、今の私は衝撃のようです(笑)。

──競泳とフィンスイミングの違いは?
フィンスイミングはゆっくりのスピードで泳ぐと楽に泳げますが、スピードを求めるとすごく体に負荷がかかるので、足や体幹を鍛えないといけません。そのため練習では、競泳選手よりもウエイトトレーニングの比重が大きいように思います。競泳では出せない速さを出せることが魅力ですが、競泳よりもシンプルな動きになるので、その中で試行錯誤して泳ぎを見つけていきます。

──遠征などがあると、学業との両立もたいへんなのではないでしょうか。
入学するにあたって、心配していたところでした。
たいへんではありますが、私に関わってくださった心理学科の先生方は全員応援してくださっています。そのおかげで何とか両立することができています。とても感謝しています。

──コロナ禍で、遠征や大会が中止となっているようですが、練習はどうされていますか?
私の所属しているチームはプールを持っていないので、普段は公共プールのコースを借りて練習しています。コロナの影響でプールが閉まってしまい、泳げる環境を確保できなかったのですが、コーチが毎日オンライントレーニングをしてくれました。久しぶりに泳ぐことができた時は、「苦しいな、こんなにプールは長かったっけ!?」と思いましたが、“やっぱり水の中は楽しい!”と気がつきました。

──思い出に残っているエピソードがあれば教えてください。
最初に日本の代表になることができたのは、フランスでのユース選手権でした。世界の同世代の選手たちに刺激を受けて、“もっと速くなりたい”と、結果志向になりました。
初めて世界大会で個人で表彰台にのぼったのは2年前、世界学生選手権で2位になった時です。やっぱり結果が出せた時も、続けていてよかったと感じます。

──世界との差は何だと思いますか?
世界ではフィンスイミング専用のプールがあったり、競技をしやすい環境が整っていることが多いのですが、日本ではまだ使えるプールが少ないです。フィンを使うためには、プールのコースを貸し切る必要があるのですが、確保が難しい時もあって、練習できる環境が少ないんです。その分、日本人は考えて上達しようとするので、そのような考える視点は、世界には負けていないと思っています。
日本はまだまだ発展途上で、自分たちでがんばっていこうとしています。

5th Finswimming University Competition 200mサーフィス 準優勝(2018年7月)

──今後はどのように活動していく予定ですか?
大学4年間で、競泳メインの生活は一区切りかなと思っています。でも競泳がフィンスイミングに活きてくるので、完全にやめるわけではなくて、メイン競技をフィンスイミングにシフトしていこうと思っています。
体育会水泳部現役部員としては、大学のプールが取り壊されてしまうのが気がかりです。初等部生や高等部生の頃から使っていたし、大学生になってからは部活動の他に、フィンスイミングの大会前にも泳がせてもらっていました。
プールがなくなってしまうと、部員の練習量が足りなくなってしまうので、これから入ってくる後輩がかわいそうです。せっかく水泳の強い学生たちが入部してきてくれるようになり、女子は一部に昇格できたばかりなので、特に残念です。
今後、学校側には良い施設を作ってくれることに期待しています。後輩のために、私ができることは、してあげたいなと思っています。

20th Finswimming World Championships(2018年7月)

そして、これまで同様、身体を鍛えるために色々なスポーツをしたいです。
スキーやスノーボードも好きで、今でも冬場は1か月間ほどスキー場に行きます。サーフィンやボディボードもします。周りからは、けっこう遊びに行っていて、不真面目って言われます(笑)。でもどれもフィンスイミングに活きていて、水泳だけに集中するよりも、自分のスタイル的には、色々やった方が結果が出ます。”楽しく競技を続けたい”、それがよい発散にもなっています。

──いろいろなスポーツが得意なのですね。
陸上も球技も苦手なので、運動神経はそんなによくないですよ(笑)。
フィンスイミングはまだマイナースポーツです。「歴史に残りたい」「唯一の存在になりたい」そういうのを目指しています。
色々なことをやって、結果を出す。好きなことに挑戦しながら楽しく勝てるのが一番!

写真右が髙津さん