Interview インタビュー 青山極め人

祖父の背中を追い、メロディを奏でる〈中等部・羽田 ありあさん〉

サクソフォン

小5の時、ジャズクラブのBlue Note Tokyoでサクソフォンの演奏を聴き、その音色に魅了されたという羽田さん。「メインのメロディを吹く重要な楽器。その役割も魅力」と話す。本格的にレッスンをスタートしたのは中1。日ごろは一日3時間ほど練習に費やし、わずか2年で、ジュニアコンクールの中学生木管楽器部門で最高位を獲得した。
著名なピアニスト故・羽田健太郎氏をご祖父にもち「祖父が亡くなって14年。自分が活躍できるぐらいの年齢になる頃には、時代と共に祖父を知っている人は少なくなっていくと思う。そうなる前に、早く活躍できるようになりたい」と話す羽田さんからは、柔らかな中にも意志の強さが感じられた。
中等部卒業後は、音楽科のある高校への進学を目指す。そしてその後は「アメリカのバークリー音楽大学で学びたい。でも英語が苦手なので、がんばらないと」と意気込む。「そこで出会った世界中の仲間とグループを組んで、いずれ本場アメリカのBlue Noteで演奏してみたい」と夢を語った。

 

羽田 ありあさん

青山学院中等部3年

◆主な受賞歴
2021年第40回全日本ジュニアクラシック音楽コンクール 木管楽器部門 中学生の部 第4位(1~3位なしの最高位)/2021年8月桐朋学園大学音楽学部主催 子供のための音楽教室[成績優秀者]による中学3年生卒業演奏会に出演

「青山学報」277号(2021年10月発行)より転載

 

Episodes ―こぼれ話―

紙幅の関係で掲載がかなわなかったインタビューをご紹介いたします。

羽田ありあさん

 

──普段はどれくらい練習しているのでしょうか。
家の防音室で3時間ぐらい練習しています。吹き続けていると頭が痛くなるので、休みながらですが、休みの日はもっと長い時間練習しています。そのかわりあまり勉強の方は……(笑)。

──それだけ長時間練習していると嫌になってしまうことはないですか?
曲の練習ではそう感じることはありませんが、エチュード(練習曲)は、吹いていてつまらないなと思うことはあります。

──サックス以外に楽器の経験はありますか?
祖父がピアニストだったので、生まれた時からピアノが家にあって、3歳の時から弾いていました。祖父は私が生まれて4か月後に亡くなり、一緒に演奏することはできませんでしたが、弾き始めた頃から音楽教室に通い、ソルフェージュ(楽譜を読むことを中心とした基礎作り)などを習っていました。

──これまでの経験でうれしかったことを聞かせてください。
コンクールでは、本選から全国大会に進む段階で、けっこうな人数が落とされます。先生にも親にも「初めて受けるコンクールだし、そんなに簡単に通るものではないから、通らなくても仕方ないという気持ちで挑んで」とリラックスできるように声をかけられていました。そのような中、本選を通った時の得点が、中学生から大学生の中で一番高い点数をいただくことができたんです。周りのレベルも高かったので、うれしさもありましたが、驚きました。

──大変だったことなどはありますか?
指が長くて、指を移動する時に邪魔に感じるんです。長いとバタバタしてしまいます。先生にも時々注意されるのですが、押さえようとすると音が出にくかったりと、指使いに苦労します。

──演奏するには、肺活量が必要なイメージがあります。
私はそれほどありません。運動は全部苦手です(笑)。長くは吹いていられないので、吹奏楽の時は、一緒に吹いている人と交互に息継ぎをして、音が消えないようにしています。

──サックスの中でもアルトを選んだのはなぜですか?
サックスを始めたいとなると、最初は基礎的なアルトからスタートして、途中で変える人がほとんどだと思います。私は最終的にはテナーを吹きたいと思っています。憧れているサックスプレーヤーの清水玲奈先生がテナー奏者です。とても活躍されている方で、演奏の仕方や自分の見せ方などの表現力がすごく理想的で、憧れです。

──アルト、ソプラノなどそれぞれで指の動きの違いなどあるのですか?
同じです。ただ、サックスはピアノの楽譜通りの音程ではありません。サックスの楽譜にはピアノの実音よりも3つ下の音が書かれているので、その難しさがあります。

──得意な曲のジャンルというのはあるのでしょうか。
最初は先生に短いポップス系の曲を薦められて、徐々にクラシックの曲らしいものに挑戦するようになりました。クラシックよりもポップスの方が吹いていて楽しいので好きですが、私はこの先、ジャズの方面に行きたいと思っています。

──演奏する上で大切にしていることはありますか?
ピアノはひとりでの演奏でしたが、サックスは伴奏がつくので、伴奏の方が視界に入る位置に立って、息を合わせるようにしています。
上手な方だと、私のテンポが速くなってしまっても合わせてくれますが、コンクールの審査としてはNGです。私の伴奏をしてくださっている方は、“サックスの伴奏といったらこの方”と言われるぐらいのプロフェッショナルの方なので、安心して演奏できます。

──ご家族にも音楽と関わりのある方はいらっしゃいますか?
亡くなった祖父がピアニスト、そして祖母と母は宝塚歌劇団の出身です。
私が母のお腹にいた時、日本丸という船で母が仕事で歌っていたら、私がお腹の中で動いたそうです。

──期間限定で、中等部の吹奏楽部に参加しているそうですね。
8月に吹奏楽のコンクールがあり、以前吹奏楽部の顧問をされていた中等部長の上野亮先生が声をかけてくださいました。コンクールに向けて、5月から練習に参加しています。

──普段のひとりでの演奏と、複数の楽器との演奏はまた違って新鮮なのではないでしょうか。
そうですね。中等部では本当は吹奏楽部に入りたかったけれど、活動日のスケジュールが、音楽教室の日と重なっていたり、レッスンがあって入ることができなかったので、期間限定だけれど、うれしい経験ができています。

──次の目標は?
毎年札幌で、アメリカのバークリー音楽大学の先生から直接教えていただけるレッスンを体験できる貴重な機会で、いろいろな人たちと練習して、その中から選ばれた人がバークリー音楽院に1か月留学できるので、それに挑戦したいと思っています。