Interview インタビュー 青山極め人

【全日本学生音楽コンクールバイオリン部門第1位】人の心に響く音をもとめて〈中等部3年 的場 桃さん〉

第76回全日本学生音楽コンクール全国大会バイオリン部門中学校の部で、見事第1位に輝いた青山学院中等部3年・的場桃(まとばもも)さん。ピンと伸びた背筋とまっすぐな視線、朗らかな笑顔が印象的な的場さんに中等部礼拝堂でお話を聞きました。

 

バイオリニストである祖父の姿にあこがれて

──このたびの優勝、本当におめでとうございました
優勝するとは思っていなかったのでとてもうれしかったです。もちろん出場するからには1位をとりたいと思ってはいたのですが、結果もそうですが何より、今までの本番のなかで一番自分の思うような演奏ができたことがうれしかったです。

中等部礼拝堂にて

──コンクール本番で思いどおりに弾くことはやはりとても難しいことなのですね
完璧にうまく弾くというのは本当に難しいです。必ずどこかで「あそこは思うようにいかなかったな」と思うところがあったりします。でも、先日の大会本番では、技術的に完璧だったというよりは、自分の今までやってきたこと、表現したいこと、自分が今出せる一番のものが出せたと思いますし、それが本当にうれしかったです。

──5歳のときにバイオリンをはじめられたそうですが、何がきっかけだったのでしょうか
バイオリニストである祖父(NHK交響楽団名誉コンサートマスター・堀正文さん)を見ていて、楽しそうだなと興味をもったのを覚えています。母は私にピアノを習わせたかったようですが、私は祖父がバイオリンをしていたので迷わずバイオリンをやりたいと思いました。

──的場さんのバイオリンのご活動について、お祖父さまはどのようにおっしゃっていますか
喜んでくれていると思います。普段はあまり祖父にバイオリンを教わることはないのですが、家族旅行に出かけたときに、滞在先で練習を見てもらったことはあります。日頃から応援してくれているとは思いますが、祖父は私に直接何かを言うことはあまりありません。ただ母には「大人になってから活躍できる人はほんの一握りしかいないから、難しい世界だよ」と言っているようです。

 

コンクールの結果よりも「自分がいいと思える演奏」を

──的場さんは幼い頃から練習がお好きだったとお聞きしました
人前で演奏する機会が小さい頃からよくあったのですが、終わったあとに必ず先生やまわりのみんなが褒めてくれるのが本当にうれしくて。それで本番で演奏することが楽しくなりました。練習していくうちにどんどん上達していくのが自分でわかるのも楽しいことでした。

初等部のクリスマスページェントで生演奏を披露した

──現在はどのような活動をしていらっしゃるのでしょうか
平日は学校から帰ったあと夜まで、休日は朝からずっと自宅で練習しています。桐朋学園の音教(音楽教室)に在籍していて、毎週土曜日はそこでオーケストラとソルフェージュの授業を受けています。本番で一番いい演奏ができるようにという気持ちでいつも練習しているのですが、うまくいかないときもあります。たとえコンクールなどでいい結果が出たとしても、自分が一番いいと思える演奏ができないときは悔しい。今回優勝した大会でも予選・本選での演奏は、けっして悪くはなかったのですが、これ以上ないというほど一番いい演奏ではなかったんです。でも全国大会では思ったとおりの演奏ができたのでうれしかったです。

 

空を見上げて楽曲のイメージを膨らませる

──的場さんが「一番いい」と思われるのはどんな演奏でしょうか
シンプルでありながら自分にしかできない表現をすることです。そういう演奏をできるようになりたいですし、そういう演奏を聴くと「すてきだな」と思います。

──「自分にしかできない表現」、すばらしいですね。そのためには、音楽を深く理解したり表現力を高めたりといったことも意識されると思うのですが、バイオリンの練習以外でご自身の音楽性に影響を与えていると思われるようなご趣味などはありますか
絵を描いたりきれいなものを見たりすることでしょうか。それから、私は空を見るのが好きで、出かけるときは必ず空を見上げるんです。たとえば犬の散歩のときに空を見ながら「ああ。あの楽曲の雰囲気はこういう空の感じだな」と想像したりしています。そういう普段のちょっとしたことから演奏のイメージを膨らませるということはよくあります。自分のしたい表現が、聴いてくださる方にすべて伝わるわけではないかもしれないけれど、それでもやっぱり、しっかりとイメージをもって演奏するのとしないのとでは、表現がまったく違ってきます。

──最後に、将来はどんな演奏家になりたいと思われますか
聴く人の心に響く演奏をしたいというのが一番の思いです。自分にしかできない表現をして、聴いてくださっている人の心を動かすことができるような演奏家になりたいです。今はまだ成長段階なので、毎年毎年成長していって、自分なりの表現ができるようになりたいなと思いながら練習をしています。(了)

初等部のクリスマスページェントで。抒情的な音色が会場に響き、劇中世界に引き込まれた

◆的場桃さんのおもな成績◆
2022年全日本学生音楽コンクール全国大会バイオリン部門「中学校の部」優勝/同年桐朋学園全国ジュニア音楽コンクール中学生の部第1位/同年国際ジュニア音楽コンクール中学生の部第1位/同年チェコ音楽コンクールジュニアの部第1位/2021年全日本学生音楽コンクール全国大会バイオリン部門「中学校の部」第3位/2019年同東京大会バイオリン部門「小学校の部」第1位ほか