Interview インタビュー 青山極め人

強さの秘訣は双子の絆〈内田実那さん/奈那さん・初等部6年〉

レスリング

双子姉妹の内田実那さんと奈那さんが、自宅近くのレスリング練習場を体験で訪れたのは初等部1年生のとき。父の「力が強いからやってみたら」という一言がきっかけだった。もともと二人は3歳からバレエを習っていたが、スピード感あふれる技と力強さが求められるレスリングに、先に実那さんがのめり込んだ。レスリングの魅力について「試合終了の直前まで結果が分からないところが面白い」と実那さんは語る。一方奈那さんは、レスリングに励む実那さんの姿を追い3年生からレスリングを始めるものの、当時夢中になっていたバレエとの両立に悩んだ。レスリングの試合で何度も悔しい思いをした結果、5年生でレスリング一本に絞る。「やればやるほど伸びるところが好き」と努力が結果に結びつくことに魅了されていった。二人の強さの源は、「お互いが切磋琢磨して強くなるための存在」であるという双子ならではの絆だ。特に印象的なのは、たまたま同じ階級で決勝戦を戦ったときのエピソード。実那さんが勝利したものの、奈那さんの悔しさを思い二人で号泣したという。ともにめざすは、7年後のブリスベンオリンピックで二人そろっての金メダル。その目標に向かって「まずは全国中学生レスリング選手権大会での優勝」と一歩一歩実績を積み上げる内田姉妹の挑戦はこれからも続く。

 

内田実那さん・内田奈那さん

初等部6年


左:実那さん 右:奈那さん

◆主な戦績
【全国少年少女レスリング選手権大会】
2022年 実那さん:28kg級 優勝/奈那さん:28kg級 準優勝
2023年 実那さん:30kg級 第3位/奈那さん:30kg級 準優勝
2024年 実那さん:33kg級 準優勝/奈那さん:30kg級 優勝
【全国少年少女選抜選手権大会※】
2025年 実那さん:36kg級 準優勝/奈那さん:33kg級 優勝
【吉田沙保里杯】
2022年 実那さん:28kg級 優勝
2023年 奈那さん:30kg級 準優勝
2024年 実那さん:36kg級 優勝/奈那さん:33kg級 優勝

※ 全国少年少女レスリング選手権大会のベスト8以上の選手が出場できる大会

文:「青山学報」291号(2025年3月発行)より転載

 

Episodes ―こぼれ話―

紙幅の関係で「青山学報」への掲載がかなわなかったインタビュー全文をご紹介いたします。

 


左:実那さん 右:奈那さん

 

──いつからレスリングを始めたのですか?
実那さん 私の方が先で、1年生の後半くらいから始めたのですが、すぐにコロナ禍で練習もできなくなってしまい、本格的には2年生の中頃から習い始めました。
奈那さん 実那が先に習い始めたのをずっと見ていて、私も3年生の最初ぐらいから始めました。

──レスリングを始めようと思ったきっかけは?
実那さん お父さんから「力が強いからやってみたら」と言われたのがきっかけです。家の近くにレスリングを練習するところがあって、そこで1回体験してみて、本格的な習い事をしたことがなかったこともあり、私はレスリングを続けてみたいと思いました。
奈那さん 最初の体験は一緒に行ったのですが、結構ハードだし疲れるので、私は習わなくても別にいいかなと思いました。

──奈那さんは3年生まで何かほかの習い事をやっていたのですか?
奈那さん バレエを3才から5年生までやっていました。バレエにも発表会があるのでバレエの練習を中心にやっていたのですが、そうするとレスリングの練習が人よりも遅れるし、試合で勝ち続けることができなくて負けてしまうから、一番の目標を考えてみた時に、レスリングのほうをやりたいと思いました。バレエも好きだったので、結構悩んだのですが、家族に相談して、バレエを辞めると決断しました。

──レスリングの魅力は何だと思いますか?
実那さん 結果がすぐに決まらないで、試合が終わる直前まで逆転されたり、逆転したりと、最後まで結果が分からないところです。
奈那さん やればやるほど伸びていくところです。トレーニングすればそれだけその力を発揮できるし、そういうところがいいなと思っています。

──得意技を教えてください
実那さん 相手の片方の足に入る「片足タックル」です。基本相手の左足をタックルするのが得意です。
奈那さん 組んでいた状態で相手が肩の上に手を置いてきたところに肘を取ってかわす「振り」からの右足の「片足タックル」です。


実那さん(赤ユニフォーム)

奈那さん(青ユニフォーム)

 

──何キログラム級という階級では、お二人は同じ階級ですか?
奈那さん 実那のほうがひとつ上の階級ですね。

──お二人は階級が違うのに、一緒に対決した決勝戦があったのはなぜですか?
実那さん 二人が戦わなくてすむように、私が上で階級をずらしてきたのですけれど、奈那の階級の人数が少なくて、上の階級と併級されて戦うことになってしまいました。


左:奈那さん 右:実那さん

 

──練習相手は年上が多いですか?
実那さん 同い年が多いです。女子がもともと少ないから、男子やコーチと練習することもあります。

──試合中、瞬間瞬間でこの技を出そうなど、その場でぱっと出てくるものですか?
奈那さん ほとんどは試合中にぱっと出てきます。事前にトーナメント表が発表されて、相手がわかっている時はコーチと一緒に、相手が出ている大会の動画を見て、この技がかかりそうかな、など対策をたてることもあります。


奈那さん

 

──結構ハードなトレーニングをされているのだと思いますが、練習前、大会前など何を食べますか? また、好きな食べ物はありますか?
実那さん 大会前は、お母さんが作ってくれるおにぎりです。私が好きな食べ物はチーズですね。
奈那さん やっぱりおにぎり、お米です。好きな食べ物は牛肉や鶏肉です。
実那さん あと、和食のおかずも好きです。特に胡麻和えとかきんぴらごぼうです。
奈那さん お菓子も好きですね。
実那さん 大会前は、お菓子を食べると体重が増えてしまうので、お菓子は我慢します。

──大会が終わった後に真っ先に食べたいものはありますか?
奈那さん ポテトチップスや揚げ物などです。
実那さん がっつりしたものを食べたくなってしまいます。私は、小麦系のパスタとかピザとかを食べたくなりますね。

──レスリング以外の趣味や好きなことはありますか?
奈那さん 料理を作ったり、食べたりすることが好きです。おじいちゃまとおばあちゃまとアップルパイを一緒に作ったり、自分たちでお菓子を作ったりします。自分たちだけで作ったのはベーグルですね。チョコのお餅なども作りました。
実那さん 私は読書です。本が好きで、魔法を使ったファンタジーや、「探偵チームKZ(カッズ)」などの推理小説にはまっています。「ハリーポッター」は、難しいけれど面白いから読み進めてしまいます。

──双子の姉妹としてお互いの性格を紹介してもらえますか?
実那さん 奈那は基本どんなことにでも笑顔で取り組めるタイプです。私は嫌だとか言ったりするのですが、奈那は「やってみよう」と、前向きに取り組めるタイプです。
奈那さん 実那はやりたいことに対してすごく夢中になれるので、できることをどんどん広げていけるタイプです。

──双子ゆえの特徴があったら教えてください
実那さん 相手に強く同情することがあったり、あと急に二人で……
二人 同じことを言ったりすることです(笑)。

──ある動画で、お二人が決勝戦で対決をしていて、実那さんが勝って奈那さんが負けた時に、実那さんが号泣したという場面を見たのですが、それはどのような気持ちからでしょうか?
実那さん 二人で戦うとどうしても勝ち負けという結果ができてしまうから、そのあと喧嘩になっても嫌だし、奈那が泣いるのを見て悲しくなりました。
奈那さん 私が負けて悲しかった気持ちが伝わり、実那が泣きました。

──レスリングという同じ競技をやっていて、双子だからこそよかった点、逆に困った点があれば教えてください
奈那さん よかったなと思う点は、言葉にしなくとも気持ちがわかってもらえるので、負けた時に優しい言葉をかけてもらえるのは嬉しいです。
実那さん 困っている点は、二人で組み合って練習している時に喧嘩になってしまうところです。
奈那さん ちょっかいをかけられたと思ってしまって……
実那さん そういうつもりはないけど、そう感じてしまうことがあって……
奈那さん それでやり返してしまい、急に喧嘩が始まることがあります。

──喧嘩中、周りはどんな反応ですか?
奈那さん 周りは気づいているけれど、それほど気にしていないようです。
実那さん でも、後から親に「練習中にそういうことはやめなさい」と言われることがあります。

──どうやって仲直りするのですか?
実那さん お互いに組まない時間が少し続くと……
奈那さん 気づいたら自然と仲良くなっています。

──憧れの選手はいますか?
実那さん 去年のパリオリンピックで金メダルを取った藤波朱理選手です。
奈那さん 吉田沙保里さんです。

──憧れている理由を聞かせてください
実那さん もちろん強いというのはあるのですが、レスリングがすごく好きで、楽しみながらやっているところがすごいなと思っています。
奈那さん 吉田さんは話しやすく、明るくてとても面白いです。もちろん強いというのもありますが、人間性が素敵だなと憧れます。

──大会では、優勝、準優勝と常に上位に入っていますが、その強さの秘訣は何だと思いますか?
奈那さん 負けて悔しいからリベンジしたいという気持ちです。全国優勝という目標に向かって頑張りたいと思っています。
実那さん たしかに奈那はすごく負けず嫌いですね。私は、負けた相手にリベンジしたいというのももちろんあるのですが、まずは奈那に負けたくないという気持ちがあるので、互いに切磋琢磨して、頑張っている奈那がいるから私も奈那を超えられるように頑張ろうと、互いが強くなるための存在だと思っています。
奈那さん それともう一つ、優勝すると初等部の礼拝で表彰していただけることが嬉しくて、次も頑張ろうと意欲がわきます。

──これからの目標を教えてください
奈那さん 目標は、7年後のブリスベンオリンピックに二人で出場して、二人で金メダルを取ることです。
実那さん 奈那と同じく、オリンピックで金メダルを取ることを目標にしています。近い目標としては、全国中学生レスリング選手権大会(以降「全中」)というのがあるのですが、全中では、小学生までの学年別で分かれていたのとは違い、中学1年生から3年生までが一緒に戦うことになるので、上級生の相手と戦って全中で優勝することが目標です。

──全中でも頑張ってください。応援しています! これからもずっとレスリングを続けますか?
二人 好きでいられる限り、続けていきたいです。


実那さん

 

──7年後のブリスベンオリンピックで、金メダルを手にしたお二人の笑顔を楽しみに、これからの実那さん、奈那さんのご活躍を応援しています。ありがとうございました

 

追記


2024年度第10回吉田沙保里杯にて
左:実那さん 右:奈那さん

上記写真は、昨年11月に行われた吉田沙保里杯でお二人が優勝したときのもの。この時、吉田沙保里賞を姉妹で受賞しています。後日お母さまより「二人の階級がかぶることもあり決勝で当たってしまうと、二人そろって笑顔で大会を終えることがあまりないので、昨年の吉田沙保里杯は、貴重な経験でした」とのお話を伺いました。

また、今年3月11日には、初等部の特別授業として、吉田沙保里さんによる講演会が行われました。吉田さんが学院を表敬訪問された際に、内田姉妹も同席し、憧れの吉田さんとともに写るとっておきの笑顔での一枚。


左から奈那さん、吉田沙保里さん、実那さん

 

 

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