Interview インタビュー あおやま すぴりっと

「声」を武器に、表現する―芸術を比較するおもしろさから見えた世界〈文学部比較芸術学科教授・佐藤かつら先生×卒業生・諸星すみれさん〉

大学文学部に比較芸術学科が設置されて今年で11年目を迎えました。
これまでに第7期までの学生、総勢577名が卒業し、社会で活躍しています。

幼少時から舞台やドラマに出演し、声優として第一線で活躍されている諸星すみれさんも、本学科から巣立った学生の一人です。

ゼミで諸星さんを指導していた佐藤かつら先生を迎え、お二人の思い出や学科での学び、古典芸能と現代のエンターテインメントとの関連性まで、比較芸術学科の学びと魅力が詰まった対談となりました。

(2022年7月30日インタビュー)

 

学ぶ喜びを知った比較芸術学科での4年間

──諸星さんは今春、比較芸術学科を卒業されました。本学科を進学先に選んだ理由をお聞かせください。
諸星 小さい頃からお芝居や声優の仕事をしてきましたが、大人になっていく上でより質の高い、厚みのあるお芝居がしたいと考えていました。そのために様々な経験を積みたかったので、大学進学は早い段階から決めていました。そんなとき、青山学院大学の比較芸術学科ではあらゆる分野の芸術・芸能を学ぶことができると知り、「自分の表現に生かせるような知識を蓄えられるのはここしかない!」と感じ、志望しました。

 

    諸星すみれさん
諸星 すみれさん

    1999 年生まれ。青山学院大学文学部比較芸術学科卒業。3 歳より劇団ひまわりに所属。映画(吹き替え)『シュガー・ラッシュ』シリーズ、『トイ・ストーリー3』『アナと雪の女王』、アニメ『アイカツ!』『ハイキュー! !』『約束のネバーランド』『ULTRAMAN』、ゲーム『ファイナルファンタジー』シリーズなど、幼少期から現在まで数多くの映画やアニメ、ゲームなどで声優を務めるほか、女優、歌手としても活躍中。

 

──比較芸術学科ではどんなことを学べるのでしょうか。
佐藤 比較芸術学科は、芸術という人間の根源的能力の本質に迫ることにより、現代社会における各種の問題に対応できる「人間力」を持った学生を育成することを目的として2012年4月、文学部の5番目の学科として新設されました。「比較学習」「古典重視」「鑑賞教育」を学びの柱として、美術・音楽・演劇映像の3分野にわたり、幅広く、かつ深く、芸術についての研究・教育を行っています。通常の授業だけでなく、講演会や鑑賞体験などいくつもの素晴らしい体験をする授業もあります。卒業生は社会の諸分野において当学科の学びを生かして活躍しています。大学院へ進学し学芸員や研究者となった人もいます。教員も学生も、今後もさらに学際的・国際的な研究と学びを深め、発信していくことを目指しています。 

 

    佐藤かつら先生
佐藤 かつら先生

    1973 年新潟県生まれ。東京大学教養学部教養学科第一比較日本文化論分科卒業、同大学院総合文化研究科超域文化科学専攻比較文学比較文化修士課程修了、同大学院人文社会系研究科日本文化研究専攻日本語日本文学専門分野修士課程修了、同博士課程修了。博士(文学)。2012 年青山学院大学文学部比較芸術学科准教授に就任し、2016 年同教授となる。2020 〜2021年度は同学科・専攻主任を務めた。専門は日本近世演劇、日本近世文学、日本芸能史。

 

──教育内容が多岐にわたっていますね。諸星さん、これまで学業と仕事との両立は大変だったのではないでしょうか。
諸星 小学校から大学まで、どの学校でも先生方が協力してくださいました。授業を受けられなかった部分はプリントを用意してくださったり、宿題や課題を丁寧に見てくださったり……。周りの人に恵まれていたおかげで両立できました。事務所もなるべく学業を優先できるようにスケジュールを組んでもらっていましたが、テスト期間中に仕事が入った場合は移動中やアフレコの合間、時には睡眠時間を削って勉強していました。また、収録現場で、アフレコの合間に先輩の声優さんから英語を教えてもらったこともあります。私は自己推薦入学を希望していたので、高校では3年間良い成績を保つために日頃から気を引き締めて勉強しました。ただ昔からそれが当たり前の環境だったので、自分が特別大変だという意識はなかったですね。

──諸星さんがとりわけ印象に残っている授業は何でしょうか。
諸星 歌舞伎俳優の6代目・中村児太郎さんが講師としていらして、隈取をする過程を見せてくださった授業です。生で伝統芸能に触れられるのは比較芸術学科ならではで、この学科に入っていなければきっと経験できなかったことだと思いました。また、雰囲気が良く和やかな授業が多いので本当に楽しくて、学問を「学ぶ」というより「経験する」という形で自分の糧になったものが多かったです。

中村児太郎さんの授業

中村児太郎さんの特別授業

 

それから、比較をすることのおもしろさをどの授業でも感じました。一つの分野にこだわってそれだけを見ていたら分からなかったこと、得られなかった学びが多かったですね。ある授業で学んだことが別の授業で生かされるなど、自分の中でいくつもの点と点がつながっていく感覚が猛烈に楽しかったです。幅広い知識を持つことで共通点、相違点を知り、その中から自分が学びたいと思った部分をより深く研究できるという、学ぶ喜びがありました。

諸星すみれさん

 

──佐藤先生のゼミは日本の古典芸能・演劇の研究がテーマですね。
佐藤 ゼミではまず古典芸能各分野の代表的な作品を精読します。また学生一人ひとりが自分の興味・関心に従って研究発表を行います。これらに基づき毎回討議をします。ゼミ生は能や歌舞伎のほか様々な芸能分野に関心があり、熱心に調査や発表を行います。どんどん知識や考察を深める様子は見ていて頼もしく思います。毎年熱意に満ちたゼミ生たちが集まってくれます。

佐藤かつら先生

 
ゼミ生に限らず、本学科の学生は皆芸術が好きでとても熱心です。入学時はある特定の分野だけが好きでも、入学後様々な分野を学んでいくうちにほかの芸術にも興味を持ち、多くを吸収していくという感性を持っている学生が多く、そういう点が素晴らしいと感じています。

諸星 芸術を楽しむこと、体験することで意外な発見をすることも多かったです。私は古典芸能を学ぶうちに、歌舞伎や能には声のお芝居に通じることがたくさんあると気づき、驚きました。例えば歌舞伎はエンターテインメント性が強く、リアリティを追求するというよりもちょっと誇張したお芝居が求められる点は、アニメでのお芝居と共通していると思います。また、能は能面をつけるため役者本人の表情は見えませんが、体の動きやちょっとした角度で見せ方が変わる繊細な芸能です。声のお芝居でも、声色や間合、抑揚のつけ方などニュアンスの違いで見せ方を変えているので、そんな部分が似ていると思いました。役者としても「生かせるな」と思う部分が多かったので、自分でも意外な選択でしたが、ぜひ古典芸能を学びたいと思い、佐藤先生のゼミを選びました。

諸星すみれさん

 

最初は歌舞伎の知識など皆無に等しかったのですが、先生はゼロから学ぶ学生にも分かりやすい授業をしてくださいました。質問にも丁寧に答えてくださるし、ゼミの雰囲気も良かったおかげで、意見を言うことが怖いとか、ためらうということも一切ありませんでした。歌舞伎の演目の映像を観せてくださることも多くて、先生の解説はもちろん貴重なものですし、さらに実際に映像を観てどう感じるかという点にも重きを置いてくださったおかげで、古典芸能を身近に感じられるようになりました。映像を観ながらゼミ生みんなで大笑いしたり、芸術を楽しむ、体験するという意味でも貴重な授業をしていただいたと思います。

佐藤 諸星さんは仕事と学業の両立で忙しかったと思いますが、ゼミにも真面目に参加していましたね。今日もそうですが、自分の言葉でしっかり発言していたことがとても印象に残っています。諸星さんが自分の考えをゼミで話してくれることで、ほかのゼミ生がその発言に刺激を受けて自分の考えをふくらませることができ、よいゼミの時間となりました。世阿弥の「花」を取り上げた卒業論文では、学科で数名のみの優秀論文賞を受賞されましたね。

諸星 能は普遍的なテーマというか、登場人物にも作者の意図にも人間味があふれていて、さらに人間や世の中、芸の本質など多彩なものが凝縮されている芸能だと感じました。その中でも特に世阿弥の「花」に興味を持ち、この研究ができたら自分にとって価値のあるものになるだろうと思い、卒論のテーマに選びました。

佐藤 世阿弥が説いた「花」という概念は、さまざまな解釈ができ、一筋縄ではいかない難しいものがあります。ただ、あえて一言で表現しようとするならば、「舞台上にあふれる魅力」と言ったらよいでしょうか。諸星さんの素晴らしいところは、資料をよく読み込んだ上で、自分の考えを自分の言葉できちんと表現できていること。私が卒論で学生に取り組んでほしいことは、資料を読み込んだ上で、テーマに対して自分の考えを導き出すということなのですが、まさにそれができていました。また、「花」を考えるとき、普通は演者の視点からだけになってしまいがちですが、諸星さんの卒論の特徴として、観客側の心の働きを考え、そこに花が咲くと書いていたのが印象的でした。ずっと演技のお仕事をされてきた、まさに諸星さんならではだと思いました。

──とても考察の深い、立派な卒業論文だったのですね。お二人が特に好きな能や歌舞伎の演目があれば教えてください。
佐藤 能では『隅田川』が好きです。母子の別れを描いた作品ですが、母の哀れさを痛切に感じます。歌舞伎ですと『京鹿子娘道成寺(きょうがのこむすめどうじょうじ)』ですね。大学2年生のときに初めて観たのですが、華やかで、しかも背景には悲劇的な物語があり、歌舞伎を好きになるきっかけとなった作品です。
諸星 私は能だと『山姥(やまんば)』が好きです。この作品を観て、善悪の考え方が変わりました。歌舞伎では『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』がやはり印象深いです。女形が重要な作品なのですが、乳母の政岡が見せる母としての表情にぐっときます。

──諸星さんにとってどのような学生生活でしたか。
諸星 大学に入学してからは、自分の世界が広がりました。入学当初は自分がいかに狭い世界で生きてきたかを痛感させられて、落ち込むこともありました。同級生の芸術への関心の高さや知識の豊かさなどにも圧倒されて、ついていかなくちゃと必死でした。それが次第に知らなかった情報や知識をどんどん吸収できるようになると快感に近いような楽しさを覚え、ネガティブな気持ちが消し飛んでしまいました。アンテナを張ってどれだけ多くのことを吸収できるか、その中からとりわけ夢中になれるものは何かを見つけることに専念できました。友人もたくさんでき、比較芸術学科の合同研究室にみんなで集まって課題に取り組んだり意見交換をしたり、それぞれおすすめの映画や歌舞伎の演目の映像を持ってきて一緒に観たり、友人たちとの交流も自分の世界を広げてくれました。

諸星すみれさん

 
比較芸術学科での学びは仕事にも生かされています。私はお芝居を感覚的にしてしまうことが多くて、自分がお芝居に対してどう思っていてどういうアプローチをしているのかをうまく言葉にできないという悩みがありました。それが青学での4年間を通して言葉にして伝えられるようになったのは、自分の言葉で伝える力が鍛えられたからだと思います。また、私の演技の軸には、リアルを追求したい、生っぽいお芝居をしたいという思いが常にあります。この軸となる大事な部分をすべての芸術から学び取ることができたので、今の自分のお芝居にも反映されていると思います。台本を読み込み、役や世界観への理解を深めることや、読み解いたことを自分の中に落とし込むという作業の大切さも、授業で資料を読み込むことを通じて改めて学びました。

諸星すみれさん

 

性別も年齢も超え、人間以外の役も演じられる声優の魅力

──諸星さんが声優になられた経緯をお聞かせください。
諸星 最初から「声優になりたい」という目標があったというわけではなく、子役としてお芝居をしていた中でお芝居の延長線上に声優があったという感じですね。事務所に入ったきっかけが映画『千と千尋の神隠し』の湯婆婆になりたいという夢があったからで(笑)、マネージャーさんから「湯婆婆が最終目標ならいずれは声優という道もあるよ。でも最初は舞台やドラマでしっかりお芝居の基礎を学ぶといいよ」とアドバイスをもらいました。最初に子役としてお芝居を学べたことは良かったです。声優の仕事をしていておもしろいことは、演じられる役の幅が広いことですね。性別も年齢も超えられるし、人間ではない役もできるというのは、声優ならではの醍醐味だと思います。

湯婆婆

© 2001 Studio Ghibli・NDDTM

諸星さんが憧れていた湯婆婆

 

──思い入れのある作品やキャラクターを教えてください。
諸星 『アイカツ!』の星宮いちご役はターニングポイントになりました。それまでは声優をしていても、どこか子役っぽさが残っていたような気がしていたのですが、『アイカツ!』で声優のお芝居を意識し始めたというか。キラキラしたアイドルをリアルな私がそのまま演じても全然通用しないわけです。そこで、画を見てそこにキャラクターを乗せていくという作業に重きを置くようになり、今ではそれが当たり前になっています。また、ちょうど青学に入学した頃に『約束のネバーランド』が放送されていたので、「『約束のネバーランド』のエマが好きです」と声をかけてくれたのがきっかけで友人になった人もいました。そういう意味でエマも私にとって大切な役ですね。
また、谷地仁花役で出演させてもらっていた『ハイキュー!!』の収録はとても楽しかったです。当時は出演者全員で一緒に収録をしていたので、本当に部活のような雰囲気でした。マイク前に20人ぐらいが立ち、掛け合いをしながら行う収録では、他の役者さんのお芝居から刺激を受けるのはもちろん、生っぽいお芝居に触れられる、とても良い時間でした。

主な出演作品

 

古典芸能と現代のエンターテインメントとの交流

──佐藤先生、古典芸能と現代のエンターテインメントとの関係性についてのお考えを聞かせてください。

佐藤 映画『犬王』のように能などの古典芸能をテーマにしたアニメが作られたり、逆に「スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』」「新作歌舞伎『NARUTO─ナルト─』」など、古典芸能が現代の漫画・アニメ作品を題材にした新作が発表されたりしています。ちょうど先日、「能 狂言『鬼滅の刃』」を観てきたのですが、深く感動しました。「古典は古くて分からないから遠ざけたい」といったイメージを持つ人も少なくないかもしれませんが、私たちにとっての「古典」は当時の大衆の娯楽だったので、現代にも絶対通じるものがあると思うんです。そして昔の娯楽が時代とともに変化して現代のエンターテインメントになっているので、関係性ということで言えばやはりつながっています。

佐藤かつら先生

 

また、先ほど諸星さんもおっしゃったとおり、例えば能においては人間の喜怒哀楽など普遍的なテーマが存在します。さらに理不尽な目や悲しい目に遭って亡くなった人の魂を慰める「鎮魂」のテーマが非常に重要です。「鎮魂」が大事なことは漫画・アニメの『鬼滅の刃』でも同じだと思います。原作と能のテーマに共通性があり、しかも「能 狂言『鬼滅の刃』」ではそれぞれの表現の良さを生かしながら舞台を作り上げていて、とてもうまく融合していると感じました。

古典芸能と現代のエンターテインメントとを組み合わせた作品は、どのようなものもそれぞれの表現の良さを生かして新しいものを作ろうとしていると思うのですが、歌舞伎なら見得をすればいい、隈取をすればいいなど生かし方が表面的になってしまうと関わりが深くなりません。それぞれの本質的なところをつかまえた上で、何を表現したいか、どういう表現でやりたいかということを考えながら作り上げられた作品は、本当に素晴らしいものとなると思います。

諸星 私は歌舞伎や能という古典芸能と声優の仕事との共通点に気づいたことが先生のゼミを選んだ理由とお話ししましたが、その一方で古典と現代のエンターテインメントの違いを感じることもあります。それは非現実のものとして作られたエンターテインメントを非現実として見ていない人が増えてきた、ということです。古典芸能の場合、幽霊を題材にしたものは幽霊の感情の動きにフィーチャーして物語が進んでいくというファンタジー感がありますよね。落語の『らくだ』は人の死をおもしろおかしく描いているなど、観ている側が非現実は非現実、ファンタジーの世界だと思っているからこそ成立すると思うのですが、今は現実と二次元・非現実が近くなってきていると感じます。それが良い悪いということではなく、発信する側も観る側も価値観は千差万別で、多種多様な演劇の形があるということを理解していれば、芸術や芸能はこの先もどんどんふくらんでいくコンテンツになるのではと思います。

佐藤 さすが、鋭い意見ですね。今後も古典芸能と現代のエンターテインメントを組み合わせた作品はどんどん登場すると思います。ゲーム『ファイナルファンタジーⅩ』を題材にした歌舞伎の上演も発表され、どんな舞台になるのか想像がつかず楽しみですね。『風の谷のナウシカ』も歌舞伎で上演されましたし、色々な試みがなされています。お互いにお互いの良いところをじっくり考えた上で作り出された作品であれば、古典芸能と現代のエンターテインメントのそれぞれの良さや特徴も浮かび上がると思います。
古典芸能を観てみたいという人には、ぜひ予習をおすすめします。古典芸能は普遍的なテーマを描いているといっても表現方法は現代とだいぶ違うので、事前知識があった方が分かりやすいのは確かです。ある程度調べてから観に行くと「全然分からなかった、つまらなかった」とはならずに済みます。今はウェブサイトにたくさんの情報が紹介されていますが、国立劇場の文化デジタルライブラリーのページは伝統芸能のコンテンツがとても充実しているので、そこで紹介されている演目から観てみるというのも良い方法です。

諸星すみれさん

 

芸術のその先へ

──今後の目標や取り組みたいことなどをお聞かせください。
諸星 歌舞伎や能について学ぶことで、台詞を覚え、動きをつけ、稽古を繰り返し、自分の役を体の隅々にまで浸透させるようなお芝居に改めて惹かれました。今は1日にいくつものキャラクターを演じることが多いので、今後は舞台やミュージカルなど、長期間にわたって一つの役と向き合うお芝居もしていきたいです。幼少時から舞台には出させていただいていますが、練習を積み重ねることで役の新たな側面が見えてきたり、たくさんの方と掛け合いをしていく中で「あれ、昨日とは雰囲気が違うな」と感じる瞬間はわくわくします。また、観客の熱気を感じられることも、舞台ならではの楽しさだと思います。それから、歌うことが大好きなので、ギターを練習して、いつか弾き語りなどを披露したいと思っています。そして世の中が落ち着いたら、海外に行ってその土地の芸術や文化に触れたいです。そのために語学の勉強もさらに頑張りたいです。

諸星すみれさん

 

佐藤 比較芸術学科も10年という節目を過ぎ、このたび卒業生有志により同窓会が発足しました。今後は同窓会とも連携を取りながら、ますます比較芸術学科の研究、教育、鑑賞体験を充実させ、大きな活力を生み出したいと考えています。

諸星さんは本学科でしっかり4年間学んで卒業されました。ぜひ学びを生かして、それを発信していってほしいなと思います。今日お話を聞いていても、相変わらず自分の中にしっかりした考えを持っていらっしゃることがよく分かりました。お仕事でも多彩な役を演じられることを期待していますし、演劇だけでなく、音楽や美術など今まで蓄積した知識を多くの場で発揮されることを期待しています。

諸星 ありがとうございます、頑張ります。

──諸星さん、在学生へのメッセージをお願いいたします。
諸星 私にとって比較芸術学科で学んだことのすべてが、表現者としての貴重な糧になりました。この学科に入っていなければ得ることのなかった知識や感動があったと実感しています。素晴らしい先生方の授業、そして、自分にはない個性や感性を持つ友人との交流は、世界を大きく広げてくれます。青学の学生たちはそれぞれの興味を否定せずに認め合い、知識を共有しながらお互いに高め合っていて、私も友人から本当に良い影響を受けました。また、大学は自分次第というところが大きいので、どんなことも食わず嫌いせずに挑戦してみることをおすすめします。意欲的に、積極的に取り組むほど充実した4年間になるはずです。ぜひ、アンテナを高く張って、多くのことを吸収し、経験を重ねてください。

諸星すみれさん

 

──佐藤先生、比較芸術学科を目指す受験生へのメッセージをお願いいたします。
佐藤 まずは高校での学習をしっかり行ってください。そしてぜひ、本をたくさん読んでください。読書は大学だけでなく自分の人生においても必ず良い影響をもたらします。また、美術館やコンサートホール、劇場になるべく行ってみましょう。生で鑑賞体験をすることは芸術を学ぶ上で欠かせません。高校生の段階では大学で芸術を学ぶというイメージが思い浮かばないところもあると思うので、オープンキャンパスで実際に授業を聞くことをおすすめします。そして好きなジャンルがあるに越したことはありませんが、どこかしら芸術に興味がある、という気持ちがあれば、私たちの学科で学んでいくうちに心に触れるものが見つかると思います。意欲のある皆さんをお待ちしています。

佐藤かつら先生

 
諸星さんがおっしゃったように大学は自分次第というところもあるので、入学して漠然と過ごしていると、4年間はあっという間に終わってしまいます。ですから入学後は好奇心の網を張って、自分の心に引っかかるものに突き進んだり、友人から大いに刺激を受けたりしてください。今の世の中なにかと不安があると思いますが、受験生の皆さんはあまり心配しすぎずに、今自分ができることをやってほしいなと思います。

佐藤かつら先生と諸星すみれさん

 

 

[インタビューPhoto:] 河合淳 

 

「青山学報」281号(2022年11月発行)より転載
※本サイト掲載の写真および文章について、無断転載・転用を禁じます。