青山学院のボランティア精神
2019/10/24
──ボランティアに必要なものは何だと思いますか。
谷 積極的に参加する姿勢が必要だと思います。組織として活動する場合、やる気がない人がいると周囲にも影響しますし、継続した活動にも支障が生じます。
ボランティア部の部長になったときに改革宣言をし、まずは活動にまったく参加していない部員には辞めてもらい、残った部員を四つのグループに分けました。やる気はあるけれど大勢の前で発言するのは恥ずかしいという人もいるし、何をすればいいのか分からないという人もいます。グループ単位にすることで発言しやすい環境を作り、さらに全員に仕事が行き渡ることで全体のモチベーションがアップし、ますます積極的に活動するようになるというプラスの循環が生まれました。
近藤 私はおごり高ぶらない心が大切だと思います。ボランティアを始めたばかりの頃、どこかに「自分はえらいのかな」という気持ちがありました。けれどボランティアをするほど〝してあげている〟という意識は消え、実は〝相手から与えてもらっている〟のだと気づきました。
今村 ボランティアでは目的をしっかり持っていることが大事だと思います。ハンドベルのコンサートでは、いつもその瞬間を楽しんでいただけるように、そして「明日からまた頑張ろう」と思っていただけるような演奏ができるよう、全力を尽くしています。そして聴きに来てくださる方にとっても最初で最後の機会かもしれません。「いくつもあるコンサートの一つ」ではなく、〝一期一会〟を大切にする気持ちを忘れないようにしたい。それがグロリアス・クワイアの復興支援です。
ヤマウチ 課題発見・解決能力だと思います。それがないと、単に自己満足だけの活動になってしまいます。意義のあるボランティアなのか、そこは紙一重でいつも難しいと感じるところです。だからこそ、課題発見能力とそれを解決する能力を軸に行動するようにしています。
──ボランティア活動を通して、誰かに「支えられている」と感じることはありますか。
近藤 緑信会の顧問の先生にすごく支えられていると感じます。表立ったところはすべて生徒に担当させてくれて、先生は影の見えない部分、大変な部分を一手に引き受けてくださっています。また、中等部全体も自由な雰囲気がありますが、それは先生方が様々な形で生徒をサポートしてくださっているからだと思います。
谷 私も先生方や学校全体に支えられていると思っています。ユニファイドスポーツの企画では先生方のサポートがなければあそこまで成功しなかったでしょう。また、母もボランティア活動には積極的で、兄も高等部・大学在学中にボランティア活動をしていたので、家族はボランティアに対して理解があり、私の活動を応援してくれています。
今村 宗教主任の吉岡康子先生は、宮古市で知らない人はいないのではと言えるほどの有名人で、先生のおかげで現地の皆さんとのつながりがより強いものになっています。ほかの先生方も、宮古市訪問の際はバスや宿泊先の手配といった細かな仕事を引き受けてくださっていて、とてもありがたく思います。
青山キャンパスには幼稚園から大学・大学院までが集約されているため、それぞれでどのような活動が行われているか、把握しやすい環境だと思います。
ヤマウチ 中学や高校では先生方が行ってくださっていることを、大学では自分たちで実行するようになります。より主体的に動くことが求められる一方で、海外に行くボランティアなどでは、家族の理解が得られないケースも出てきます。子どもを心配するゆえなのですが、学生たちも皆、大きな志と目的を持って活動しているので、まずは現地の情勢や活動内容を正しく理解していただきたいと感じます。
とはいえ、親御さんの賛成を得られないまま海外のプログラムへ参加することに私は反対です。そのため「理解を得られないまま無理に行こうとせず、国内でできることに挑戦してみたら?」と勧めています。例えば難民の故郷の味を学食のメニューに導入するM4R(Meal for Refugees)というプロジェクトは、海外のプログラムに参加したくても諸事情で行けなかった1年生が再立ち上げしたプロジェクトです。
──皆さんにとって、ボランティアとは何ですか。
ヤマウチ ボランティアとは和訳のとおり「協力」「一緒に行うこと」だと思っています。何か問題があるときに双方が協力して解決するという、シンプルなことではないでしょうか。日本ではボランティアという言葉が違う意味でひとり歩きしている部分があると感じることがあります。ボランティアが必要ない世の中が理想なのですが。
今村 「人と人がつながるツール」です。実は、宮古市でボランティア活動をしているという感覚はありません。ハンドベルを聴いてくださる方にその音色を届けるという気持ちで行っているので、ハンドベルを通して現地の方とつながっていると思っています。また、宮古市にハンドベルが寄贈されたことでより身近な楽器となり、現地ではご近所が集まるきっかけになっていると聞いてとてもうれしいです。
谷 「人のためにも自分のためにもなること」だと思います。どちらか一方だけではなく、双方のためにならないといけないと思っています。
近藤 「大切なことや、当たり前だと思っていたことが実は当たり前ではないことに気づかせてくれ、考える機会を与えてくれるもの」です。
──最後に、今後の目標をお聞かせください。
近藤 普段の活動を友達に話すと「えらいね」「すごいね」と言われるのですが、そうではなく、ボランティアが誰にとっても当たり前で身近なものになってほしいです。私自身も、今後もボランティア活動を続けていきたいです。
谷 ボランティア部で行っている活動を、より定期的に、ひんぱんに行えるようにしたいです。たとえばユニファイドスポーツも今回限りではなく恒例行事となるよう、ぜひ後輩に受け継いでいってもらいたいです。
今村 宮古市とのつながりは短大生活で培ってきたものなので、卒業した後も大切にしていきたいです。ホームステイ先の方ともやりとりを続けていきたいと思っています。女子短大での活動は今年度で終わってしまいますが、グロリアス・クワイアやBlue Birdの活動が大学で引き継がれるので、この先も青山学院と宮古市がつながるツールになってほしいと願っています。
ヤマウチ Rooteとしては、後輩たちには私たちの学年を踏み台にしてどんどん成長してもらいたいと思っています。そのための土台をしっかり作ってから引退したいですね。個人的には、将来は国際協力に関わる分野に進みたいと思っているので、学生時代の経験を活かしていきたいです。
──皆さんのお働きに感謝いたします。本日はありがとうございました。
大学国際政治経済学部国際政治学科3年、ボランティアセンターの学生スタッフで構成されるグループRoote代表。国内外の各種プログラムを実行するほか、新たな活動企画を提案、ボランティアを募集し実施している。
女子短期大学現代教養学科国際専攻2年、ハンドベルのグロリアス・クワイアと東日本大震災被災地支援ボランティアのBlue Birdに所属。学内では礼拝の賛美奉仕など、岩手県宮古市では演奏活動などを行っている。
高等部3年、ボランティア部部長。東日本大震災等の被災地支援、寿地区でのホームレス支援、古切手や使用済みハガキ回収によるアジア支援、文化祭でチャリティー販売等によるバングラデシュ支援などを実施。
中等部3年、ボランティア等を行うクラブ、緑信会で活動。校内や外部施設でのボランティア、災害被災地への募金活動、校内緑化活動のための植物の栽培、古切手回収などを行っている。