国語B(ジブリ)「考察しよう~作品に隠されたメッセージ」【青山学院中等部3年生選択授業】
2021/12/09
1971年に始まった中等部3年生の「選択授業」。中等部生たちの個性をいかし、将来の可能性を伸ばすよう、様々な分野の授業を用意しています。
今回は「国語B(ジブリ)」の授業を取材しました。
3Bの教室へ向かう途中、たくさんの教材を抱えた池田麻友子先生、宗教主任の浅原一泰先生とエレベーターで遭遇。あまりの教材の多さに、浅原先生が教室まで運ぶお手伝いを買って出てくださったようだ。授業取材前に、気持ちがほんわかと温まった。
教室に入ると、受講人数が定員いっぱいというだけあって、賑やかだった。
授業開始。前の週に「風の谷のナウシカ」の映画鑑賞をし、この日は“映画と原作マンガとの違い”を考えていく。
プリントが配付され、池田先生の「『風の谷のナウシカ』のテーマを考えて書いてみて」のことばに、みなスラスラ書いていく。
その後、3~4人のグループに分かれ、グループ毎に原作マンガが配付された。
「映画と原作で違うところを書き出してみましょう」と池田先生。
メンバー全員で一冊のマンガを見ながら「ここは(映画にも)あったよー!」「こんな場面あった?」と確認しながらプリントに書き込んでいくグループもあれば、それぞれが黙々と読んで違いを書き出しているグループ、違いを探すことに苦戦するグループも……。その間、先生はグループを周り、様子を見守る。
映画と原作との違いの発見だけではなく、「(マンガの刷り)がモノクロじゃなくて茶色いんだ」「紙質も普通と違う?」と別の視点での発見もあったようだ。
なかには「(目的を忘れて)マンガを楽しんじゃう」という生徒もいた。気持ちはすごく分かる……。
授業終了の時間が迫りグループ毎の活動を切り上げ、池田先生が映画と原作との違いをモニターにピックアップして紹介していく。
最後に「この違い、なんで生まれたのか考えてみて」と生徒に投げかけた。それぞれが真剣に考え、プリントに記入していく。
45分間の授業はあっという間に過ぎ、最後の問いへのこたえは次回までの課題となった。
──選択授業でジブリを専門に扱おうと思われたのはなぜですか?
私自身が、ジブリの作品が好きで小さい頃から良く観ていました。ジブリは小さい時に観るのと大人になってから観るのとでは、同じ作品でも異なる感じ方をすることがあります。中学生である生徒たちに、今私自身が感じている面白さを伝えられればと思い、取り上げました。
──どのようなことを生徒たちに学んでほしいですか?
ジブリ作品の奥深さ、隠されたテーマを考えて欲しいと思っています。授業では他の生徒の意見を聞く機会も設けていますが、普段一人で観る時には得られない経験だと思います。また作品の随所にちりばめられた作り手の思いや、物語の背景、テーマについて考える面白さを知ってもらえたらと思っています。
──今年のクラスの特徴はありますか?
この授業は昨年初めて開講し、今年が2年目の開講となりました。昨年の受講者18名に比べ、今年は最大数32名の受講者がおり、抽選となったとも聞いています。ジブリに興味のある子がたくさんいることはすごいことだと思いますし、ジブリ人気の高さを感じますね。
受講している生徒たちについて言えば、去年は3年生の担任をしていたので、受講している生徒を知っていたのですが、今年の3年生はこの授業で初めて関わる生徒たちです。「こういう生徒たちなんだ」と新鮮な思いで授業に臨んでいます。
──生徒たちの反応はいかがでしょうか
三者三様ですね。ジブリが好きで、作品を観たくてとった子、作品を知らなくてとった子、正直楽そうだからとった子など、様々です。グループ活動や発表など様々な作業を通して、その子の感性に触れられればと思っています。
──先日の授業では「風の谷のナウシカ」を取り上げていらっしゃいました。今まで授業で取り上げたジブリの作品を教えてください
今年は「風の谷のナウシカ」以外では「天空の城ラピュタ」「千と千尋の神隠し」を取り上げました。
オンライン授業だった期間は、特別授業がなかなかできなかったこともあり、多くの作品を取り上げてはいないのですが、作品のテーマを中心にグループで話し合いをさせたり、キャッチコピーを見させたりしてきました。
──キャッチコピーですか
作品につくキャッチコピーです。いかに人の目を引き、そこにテーマを入れ込むか、色々と練られており、授業ではその作り方を紐解いてみました。作品を誰かに伝えるという観点から宣伝方法についても考察しました。
授業の最初には「『もののけ姫』はこうして生まれた。」というDVDに収録されているジブリの制作現場の映像を見せ、音入れや絵コンテ作成についても学びました。
──これからの授業の展開について教えてください
授業数の関係もあり、出来るかどうか分からないのですが「風立ちぬ」を取り上げてみたいですね。原作が小説である作品は他にもあるのですが、「風立ちぬ」は他の作品と異なり、ファンタジー要素のない、リアリズムで描かれています。他作品との描写の違い、心情、行動、テーマの書かれ方を比べさせたら面白いと思っています。
また昨年は3学期で、好きな作品の好きなことを取り上げさせました。例えばジブリの食事や音楽、家族の描かれ方についてなどです。
それを個人で研究し、グループ内で発表、グループの代表がクラスで発表する、ということをしました。
今年は受講者が多いので、グループ発表になるのではと考えています。
──ありがとうございました
生徒の皆さんに、アンケートにこたえてもらいました。
──ジブリの授業を選んだのは?
・作品が好きだから
・どの作品も人気なので、どうして人気なのか知りたかった
・あまり観たことがない、詳しくないから
・ジブリ映画の考察をしてみたかったから
・ジブリ作品の音楽が好きだから
──授業の楽しいところ
・友だちと映画の感想を話し合える
・先生の解説
・好きな作品について深く知ることができる
・小さい頃に理解できなかったところを改めて観て、新しい発見ができる
・今までと違う視点で作品を観ることができる
──授業の難しいところ
・考察
・作品のテーマを考えること
・一つひとつの作品にあるテーマが深い
・細かい描写、情景を読み取ること
・登場人物の心情を考えること
──好きなジブリ映画ランキング
第1位 天空の城ラピュタ
第2位 千と千尋の神隠し
第3位 もののけ姫
授業レポート(文・香/photo・聖)