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全てはここから始まった【プロプロ☆プログラミング~初等部プログラミング教室を追え~episode 0】

全国初の取り組みが始まる

全国の小学校で必修化されたプログラミング教育ですが、青山学院初等部では、民間のプログラミング教室として5万人以上の児童にプログラミング教育を行ってきた株式会社CA Tech Kids(シーエーテックキッズ)とタッグを組み、プログラミング教育を本格的に導入することになりました。

“プログラミングの授業”と聞くと「プログラマーになるための教育が始まるの?」と、少々戸惑いがちですが、プログラミングの授業は、ものごとを試行錯誤して解決する力、【プログラミング的思考】を身につけることを目的としているのだそうです。

新型コロナウイルス感染症蔓延により、今までとは想像のつかない世の中に突入した世界、容易に答えの見つからない問題が多発する現在において、試行錯誤しながら解を見つける思考力を鍛えることは、確かに必要なことだと思われます。

青山学院初等部において、2016年から既に一部の授業の中に取り込んできた【プログラミング的思考】の涵養に加え、2021年2学期から【プログラミングスキル】も学ぶというプログラミング教育が本格的に始まります。それに先駆け、初等部の中村貞雄部長と井村裕先生、株式会社CA Tech Kidsの上野朝大代表取締役社長にお話を伺いました。

 

青山学院初等部×株式会社CA Tech Kids

──2021年7月にCA Tech Kidsと青山学院初等部が、3年間のカリキュラムで構成されたプログラミング教育に取り組むというパートナーシップ協定を結びました。まずは協定を結ばれた背景について教えてください。

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井村先生 実は青山学院初等部ではプログラミング教育が必修化される前から、プログラミング教育を実施してきました。例えば、初等部1、2年生で、各クラス1コマずつドローンを使ったプログラミングの授業を行ってきました。
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井村先生 また、希望者が集うクラブ活動もあります。アマチュア無線クラブでは6年生の活動として、ロボット製作とプログラミングがあり、千葉工業大学未来ロボット技術研究センター(以下:fuRo)の研究員の方々のご指導の下、毎週のクラブ活動でfuRoオリジナルのロボットの製作と、それを動かすためのプログラミングを行っています。約10年活動していますが、年々参加するクラブ員が増える傾向にあり、プログラミングへの関心が高くなってきているのを感じます。
2019年度の冬休みにCA Tech Kidsとコラボして初等部を会場としてプログラミングワークショップを実施したのですが、それが今回の提携のきっかけとなり、ベースになりました。
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上野社長 弊社は2013年にサイバーエージェント連結子会社として設立し、これまで延べ5万人以上の小学生にプログラミング教育・教育のための学習支援を行ってきました。今回の取り組みは、全国初のもので、しかも3年間という長期にわたるものです。
中村部長 この協定には、青山学院の目標である、“サーバント・リーダー”として役立つ力を身につけて欲しいというのが第一にあります。“サーバント・リーダー”とは、「自分の使命を見出して進んで人と社会とに仕え、その生き方が導きとなる人」を表し、青山学院が育成する人物像のことです。今回は【プログラミングスキル】を学びますが、全員にプログラマーになって欲しいと思っているわけではありません。【プログラミングスキル】が将来役に立つ道具の一つになると考え、今回の協定に至りました。

 

プログラミング教育とは~小学生が学ぶ意義

上野社長 世界を見渡しますと、2013年頃から、アメリカ合衆国では当時のオバマ大統領がプログラミング教育の重要性を語り、幼少期からのプログラミング教育提唱の動きが活発になっています。英国では、2014年より5歳からプログラミング教育が必修化されました。日本でも2016年に政府よりプログラミング教育の必修化が発表され、2020年度より全国の小学校で必修化されました。
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上野社長 しかしプログラミングという教科が新設されるわけではなく、算数や理科など従来の教科の中で【プログラミング的思考】の獲得を狙いとしていて、どのようにプログラミングに触れるかは各学校に委ねられている状況です。
今回はまず、小学生の段階でプログラミングに対して、苦手意識を持たないことが一番重要なのではないかと思っています。
中村部長 小学生からプログラミングを学ぶのはそこに意味があるのですよね。

上野社長 メディアの取材で、中村先生もおっしゃられていましたが、「選択肢を与える」ということにつながると思っています。色々なことを経験させた上で、どれを選ぶかは本人の意思なのですが、その前段階で、とにかく色々な選択肢があるということが大切だと思っています。プログラミングも数多くある選択肢の一つであればと思います。その選択肢が最初からないとか、選択肢がネガティブに捉えられてしまうということは避けたいところですね。

──プログラミング教育の必要性・重要性について教えてください。

中村部長 必要性・重要性は二つあります。まず一つ目は、【プログラミング的思考】を習得することです。【プログラミング的思考】というと、プログラミングがメインになりそうなイメージを持ちますが、実際には生きていく上で必要な力を身につけるということなのです。
予想のつかない世界の中で、目の前にある様々な課題を解決するには、最適な方法を選び出す力が必要となります。コンピュータのプログラミングを使うと、間違っていれば、自分の思ったような結果が得られません。しかし何度もやり直せるというメリットがありますので、プロセスを分解していく力を身につけるのに役立ちます。
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中村部長 二つ目は、情報システムの裏側を知ることも重要となります。今はスマートフォンやタブレットを当たり前に使い、何をするにも機械や情報システムに触れる時代です。テクノロジーを使っていて、何かトラブルが起きた際に、「トラブルが起こったからやらない」とか「解決してくれる誰かを待つ」というのではなく、自分で対処法を考える、上手くいくようチャレンジしてみようという思考になってもらいたいと思っています。
上野社長 そうですね。プロのエンジニアを10万人増やすより、国民全員のITリテラシーをちょっとでも底上げした方が、恐らく、国全体としてのレベルが上がるのではないでしょうか。今後はプロのエンジニアでなくとも、素養としてプログラムへの理解が必要となってくるのでは、と予想しています。
中村部長 本当に、10年前では考えられないことが起こっていますからね、今の学校の現場は。例えば、10年前に電子黒板を入れましょう、タブレットも入れましょうという話が出てきて導入し、当時「これからこういう物が役に立つのかなあ」と思っていたところ、あっという間に必須アイテムになりました。
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上野社長 タブレットは1人1台の時代になりましたからね。特に2020年からのコロナ禍の影響も大きいでしょうね。
井村先生 こんなにタブレットが一気に必須アイテムとなっていくとは、想定外でした。恐らくプログラミング教育についても同じようなことになるのではないでしょうか。

 

青山学院初等部のプロプロ☆プログラミングの中身は?

─今回の取り組みの中での、本学ならではの特色を教えてください。


中村部長 1995年4月からカリキュラムの中に「コンピュータ学習」を設けていて、これまでは4年生以上からでしたが、今年度からは3年生の後期から、週1時間とっています。

井村先生 今までコンピュータの授業で学んだプレゼンテーションツールなどの作成スキルを、他教科の授業等の発表時に上手に活用している児童が多かったのですが、今回は、その力をコンピュータの授業の中でダイレクトに発揮できるチャンスがあります。
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井村先生 また、今回の取り組みでは「Scratch」(スクラッチ)という学習プログラミングツール言語を使いますが、ツールの言語設定を英語にすることで、青山学院の特徴である英語教育にもつなげていきます。そして内容が刷新される高校の情報科でのプログラミング(コードを書く)へのステップアップもスムーズに移行できるよう工夫してあるところが特色です。
上野社長 少々話がそれるのですが、英語のご指導は小学校1年生からかなりお時間を取っていらっしゃるのですか?
中村部長 週2時間の授業があります。1、2年生の段階では英語に慣れる、親しむということを目的に、歌を歌ったり、踊ったりという授業を主に行い、単語を学びます。文章として学ぶようになるのは3年生くらいからとなります。

上野社長 なるほど、他校と比べて早い段階での導入ですね。プログラミング教育についても、必修化されたとはいえ、学校による温度差を感じます。

─サポート面について教えてください。


井村先生 児童のサポートという面では、プログラミングスクールのようにメンター(※助言などを行い、サポートをする人)を多くして色々とアドバイス出来る環境が作れれば一番理想的なのですが、本校では、メンターとしてTA(teacher’s assistant)が1名サポートに入る形をとります。あとは児童同士の助け合いが自発的に起こることを期待しています。

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上野社長 井村先生がおっしゃるように、分かるお子さんが分からないお子さんに教えてあげる、という場面を促すというのも一つの解決策、そして一つの教育の姿だと思います。興味がある子もいれば、そうでない子もいて、能力の差だけではなく意欲の差もあると思いますので。

井村先生 1対多数で授業を展開する中、児童達がいかに自主的に動けるかという工夫が必要となりますね。

─教材作りに井村先生も参加されていると聞きました。教材はどのように作成されているのでしょうか。


井村先生 CA Tech Kidsはもともと小学生向けプログラミングスクールとして、対小学生における指導の知見はたくさん持たれているので、それを公教育の現場に、全員が楽しく取り組める形になるように、全体のカリキュラムの考案、実際の授業のプログラム見本作成、オリジナルの教材など協働で作成を行っています。

─プログラミング教育を通してどのようなことを学んで欲しいですか?


中村部長 まずは、【プログラミング的思考】を学びつつ、しっかりと【プログラミングスキル】を習得して欲しいと思っています。

井村先生 【プログラミング的思考】の部分はこれまでの教育を通して、青山学院初等部の児童達は得意だと感じています。【プログラミング的思考力】の素地がある青山学院初等部の児童達が、今回の取り組みを通じ、その力をレベルアップしていければと思っています。
上野社長 そうですね。プログラミングの授業以外にも、他の教科や学校行事などで、プログラミングによる課題解決というものが児童から頻繁に挙がってくるところまでくれば……それが理想ですね。
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─具体的な授業について、これからの展開を教えてください。


井村先生 カリキュラムでは、4~5年生は、毎回1つのゲームを作っていきながら、プログラミングの基礎スキルを学んでいく形をとっていきます。

上野社長 プログラミングに苦手意識を持ってしまうことがないよう、ゲームを題材にしますが、ゲームで遊ぶのではなく、作ることを主眼に置いたカリキュラムです。例えば、もぐらたたきゲームのプログラムを作りながら、これは「乱数」の考えかたが使われているよ、という具合です。児童達が楽しみながら、知識を習得できるような教材となっています。
井村先生 Scratchを使って2年間でプログラミングの基本的なスキルを全て学び、その後、6年生では最大の目的である、問題解決にプログラミングを用いた総合的な学びを行っていきます。
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上野社長 3年間の学習のゴールですね。
井村先生 そうですね。生き抜いていくための1つのツールである【プログラミングスキル】を上手に使って、様々な問題を解決していって欲しいと思っています。3年間の長期にわたる取り組みの中で、プログラミング学習の成果や手ごたえを感じてもらえるよう、「プログラミング能力検定」の受検も計画しています。この結果で成績を付けるというのではなく、自分自身の理解度を確認したり、受検を一つのマイルストーンとしてモチベーションを維持していくための一つの⼿法として使っていく予定です。
上野社長 開発した作品を定期的に校内で発表することも計画していますよね。
井村先生 一定のタイミングで、スクールの先生方にお越しいただき、発表の回の授業を見ていただきたいですね。その際は、チームを組み、仲間との信頼関係を築きながら、チーム内で各自がそれぞれの才能を活かし役割を果たしていく“サーバント・リーダー”としての生き方をも学んでいって欲しいと思っています。
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左から:井村裕先生、上野朝大社長、中村貞雄部長

次は初回の授業レポートの予定です。初のプログラミングの授業、児童達の反応とこれからどんな成長を見せてくれるのか楽しみです。

 

関連リンク

 

出演者プロフィール

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中村 貞雄(なかむら・さだお)青山学院初等部 部長

青山学院初等部教諭、教務主任、教頭を経て、2012年度より部長に就任。2018年6月より東京私立初等学校協会副会長。2020年6月より日本私立小学校連合会副会長。

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井村 裕(いむら・ゆたか)青山学院初等部 教諭 情報主任

専任教科はコンピュータ(2020年度より)。情報主任。ICT活用を推進するかたわら、青山学院大学大学院教育人間科学研究科にてICT導入と教員・児童の意識変化を研究。2020年度からは青山学院大学大学院社会情報学研究科で主体的学びとICT活用について研究。

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上野 朝大(うえの・ともひろ)株式会社CA Tech Kids 代表取締役社長

2013年5月CA Tech Kidsを設立、代表取締役社長に就任。小学校でのプログラミング教育必修化に際しては文部科学省の有識者委員も務め、プログラミング教育の普及、推進に尽力する。