自粛しながら広がる世界:ゲームを活用したコミュニケーション【ススメ!コミュニケーションの新しいカタチ第3回】
2021/03/25
昨年の春頃から現在まで、「自粛」という言葉を何度も耳にしました。三密を避けるために、外出や飲み会やイベントも控え、大学の授業もオンラインになり、自宅で過ごす人が多かったと思います。そのような環境の中、SNSでは、「自粛疲れ」「淋しい」「友達ができない」という孤独感を表す投稿をよく見かけ、政府も「孤独・孤立対策担当室」を設立しました。
「自粛(ステイホーム)」は必ずしも「一人で」というわけではありませんが、一人暮らしが多い都心部では、一人になってしまうことが多いでしょう。それによって、友達との日々が恋しくなるかもしれません。
一方で、自宅でもできる趣味をはじめ、自粛中でも充実した日々を送る人もいます。また、Netflix(ネットフリックス)のような動画配信サービスのコンテンツも豊富になってきています。しかしながら、それはあくまでも一方的なコミュニケーションで、私たちは単なる「受け手」としてのコンテンツ消費者になります。本記事はゲームを活用して、自粛しながら新しい友達を作って、双方向的なコミュニケーションができる方法を紹介したいと思います。
ゲームを取り上げた理由は、ゲーム自体は遊びとしてのプラットフォーム(場)であり、ゲーム機をインターネットと接続することにより、コミュニケーションのプラットフォームとしての機能が以前より色濃くなったからです。また、個人利用に加え、ゲーム実況者/配信者(ストリーマー)の活動も視野に入れて、ゲームを開発している会社も少なくありません。ゲームは“遊んで終わり”に止まらず、自分が遊んでいる様子をSNSで共有したり、編集した動画をソーシャルメディアに投稿したりすることもできます。このように、より多くの人に見てもらい、仲間やファンと交流し、広告等により収入を得ている人もいます。
今回紹介したいゲームは二つあります。一つは、任天堂が2020年3月に発売したNintendo Switch(以下:スイッチ)用ゲームソフト「あつ森」こと『あつまれ どうぶつの森』(※Nintendo Switch版は2020年12月にリリースされています)です。もう一つは、配信者の間でたくさんプレイされ、人気急上昇中の『Among Us』です。2018年に米国InnerslothよりリリースされたPC/iOS/Android 向けの「宇宙」を舞台としたオンライン人狼ゲーム(※村人側と人狼側の2チームに分かれて、同じチームが協力し合って戦うテーブルトークRPG) です。
あつ森は、『どうぶつの森』シリーズの最新作で、無人島でどうぶつたちと暮らすゲームです。コロナ禍の中、全世界で大人気になりました。リアルでは外出できない代わりにゲーム内は自由気ままに、家を作ったり、友達の島へ遊びに行ったり、遊んだ画面をTwitterやTikTokなどに投稿したりすることができます。スイッチと自分のSNSアカウントを連携すれば、誰でも簡単に投稿できます(※Twitterの場合は、スイッチを通して投稿すると自動的にハッシュタグ が付きます)。更に、周りにあつ森をやっている友達がいなくても、Twitterで「あつ森フレンド募集」と検索すれば、同じく友達を探している人と出会えます。お互いフレンド(特定ユーザーと繋がれるゲーム内の機能)になって、相手の島へ遊びに行ったり、その記念写真をTwitterに投稿したりします。このような行動で、少しずつ友達を増やしていきます。同じゲーム仲間が増えれば、ゲーム画面をTwitterに投稿した時、「いいね!」をされたり、コメントされたり、イベントについて語ったり、より一層互いのコミュニケーションが活発になります。
次は少し難易度を上げて、配信経験者または配信者になってみたい人向けにAmong Us (※PC版は5ドルでスマートフォン向けは基本無料でダウンロードできます)というゲームを活用したコミュニケーションについて説明します。あつ森と異なり、専用のゲーム機がなくてもパソコンやスマートフォンがあれば遊べます。同時に4~10人がプレイできて、「宇宙人狼ゲーム」のような仕組みで、村人は宇宙船の船員である「クルーメイト」(以下:クルー)で、人狼はクルーに紛れ込んだ「インポスター(偽物)」に分かれます。クルーは、インポスターを全員追放するか、宇宙船のタスクを全て終えれば勝ちです。
Among Usの公式Webサイト(https://innersloth.itch.io/among-us)にあるゲーム画面を見ると分かるように、このゲームは特にグラフィックが豪華でもなく、むしろ、質素な感じです。しかし、Among Usの一番注目されているところは、クルー達の議論(※ゲーム内の機能はチャットのみですが、Discordという通話アプリを使えば、音声で討論できます)です。仲間がインポスターに倒された後、残っているクルーの中からインポスターを探る場面や、プレイヤーがインポスターになった場合、どのように言い訳をして逃げ切るかが関心を集めるところです。
このゲームは、プレイヤーの双方向的なコミュニケーションが重視されているため、配信者の間では、Among Usを利用して、初めて知り合った配信者同士が交流を深められます。更に、視聴者側から見ると、新しい配信者を知るきっかけになり、時に自ら配信を始めて、配信者デビューする人もいます。
簡単に二つのゲーム内のコミュニケーションの形を紹介しました。これまでゲームをやる人は「一人の世界」に入ってしまう恐れがあるというイメージがありました。しかし、説明したように近年「遊び」だけがゲームの中心だけではなく、「コミュニケーション」もかなり注目されて、ゲームの要素として加えられました。コロナ禍の中ですが、自粛している間にぜひゲームを手にして、試してみてください。