青山の歴史から地域との関係を深める【青山学~青山から考える地域活性化論~第2回】
2021/05/17
この連載は、青山の地理や歴史を深く知ることから始め、今後の青山のさらなる地域活性化を考えることを行っている。それは、青山が地方とつながる、あるいは海外とのつながりをより広めることを期待するものでもある。
まず「青山」という地名の由来であるが、1590(天正18)年に青山忠成が徳川家康から屋敷地として拝領したことが起源とされている。すなわち青山という地名は青山という武家の人名、家名に由来するという説である。青山忠成は、同心100名(鉄砲百人組)をこの地に居住させたが、その衆は青山組と呼ばれ、地名として「百人町」と名付けられた。そこで旧暦7月に行われていた盆灯篭を竿の先に釣り上げ高く掲げる「星燈篭」という行事が、歌川広重の浮世絵にも「諸国名所百景─東都青山百人町星燈篭」として描かれている。その頃から青山の住民は、独創性が高く勢いのある活動を行う人々だったのだろう。
現在の外苑前駅のそばにある「梅窓院」は、1643(寛永20)年に徳川幕府老中、青山幸成が逝去した際に、敷地内に建立され青山家の菩提寺になっている。つまり青山家の敷地の位置を確認できる場所にもなっているのである。
次に、青山学院大学の青山キャンパスは、江戸時代にはどうだったのだろう。それは、伊予西条藩松平家の上屋敷であった。現存する古地図から見てもわかるように、渋谷側がカーブした敷地形状など現在のキャンパスの形状とぴったりと重なる。
伊予西条地域は、江戸時代初期は一柳氏が治めたが、3代約30年で改易され、その後徳川御三家のひとつである紀州徳川家(紀州藩)初代藩主徳川頼宣の三男、松平頼純が1670(寛文10)年に当地に入り、伊予西条藩松平家として統治した。石高は3万石であるが、徳川一門の親藩であり、参勤交代を行わない定府の大名であった。現在の愛媛県西条市には、中心地にしっかりした石垣の掘割があり、城内を形成しているが、伊予西条藩松平家は、城(天守)を建てず、陣屋という屋敷のみが城内にあった。城がある典型的な城下町ではないが、現在も市内の随所に城下町的な情緒・風情は数多く残っている。
伊予西条の地は、海、山(森)、並びに農地に恵まれ、現在も農林水産の地場産品が多数あり、地域活性化のマーケティングの視点からとても興味深い地域である。青学と歴史的な関係もあり、研究対象としてふさわしい地域と感じざるを得ない。
私の研究室では、このほど西条市と連携し、市の関連施設である「西条産業情報支援センター」(SICS)にサテライト型の研究室を開設し、地域活性化に関する研究活動を開始した。青山ビジネススクール(ABS)のMBA課程学生及びアドバイザー・グループ学部生が年に数回、数日間滞在し、西条市の地理・歴史・産業・文化など地域資源をリサーチし、そこから地域価値を創造・伝達・提供する「地域活性化のマーケティング」の観点で研究する予定である。
具体的には、まず青学と松平家の関係を起点に伊予西条藩陣屋エリアを中心とした、歴史・産業・文化などの変遷についての地域調査を実施し、豊富な地域資源を持つ西条市における地域活性化施策を検討する。
またMBA課程学生の企業分析力や事業連携構想力を生かし、西条市の中小企業の6次産業化、民間企業と行政との連携、地域と東京や全国、さらに海外との連携での地域活性化などの検討・提案を計画している。
大学教育で最新型の学修方法とされる「コミュニティ・ベースト・ラーニング」(CBL)を、伊予西条を対象フィールドとして実践する計画である。すでに、学部生アドバイザー・グループによる滞在研究を2018年1月12日から14日に行った。参加学生は地域を視察し地域の人々にインタビューし、自分たちなりの地域資源の発見や、活用案を市に提案した。
また、6月には宮副研究室・MBA課程学生が、東京・新橋にある愛媛県アンテナショップ「香川・愛媛せとうち旬彩館」における西条高校生徒による西条特産「絹かわなす」の販売会に参画し、互いに交流した。夏休みには学部生・MBA課程学生らが4日間滞在し、伊予西条地域のフィールドリサーチと地域活性化のプランニングを行う予定である。
一方でこの7月、西条市側も出口岳人副市長(広報部注:当時)にABS科目「地域活性化のマーケティング」で、MBA課程学生に向け西条市の地域活性化の取り組みについて授業内講演を行っていただいた。
このような伊予西条と宮副研究室との連携活動は、2018年度後期以降、サテライトオフィスを起点に地域企業の事例研究など、さらに活発化する予定であり、今後「CBLは青学」と認められるよう、学生の滞在学習・研究を積極的に進めたい。またABS修了生や青学関係者が行っているスポーツや音楽などの活動も伊予西条に紹介し、地域とのつながりを深めていきたいと考えている。