SNSを駆使した教育の還元【ススメ!コミュニケーションの新しいカタチ第7回】
2021/07/29
新型コロナウイルスの感染拡大は、人々の生活スタイルに大きな影響を及ぼし、大学講義のスタイルも一変させてしまいました。これまで大講堂で行われていた実習を伴わない講義はオンライン授業で代替えできることがわかり、英国のケンブリッジ大学や米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)など質の高い大学の講義は今や世界中の誰もがオンラインで視聴できるようになりました。
世界中どこでも質の高い教育が受けられるという利点がある反面、先生方には大きな脅威でもあります。学生が先生を自由に選べる時代、そんな時代が奇しくも到来してしまったのです。大学側が先生の評価アンケートをとらなくても、その評価はハッシュタグと共にSNSで拡散され、履修登録が0人という科目も現実に出てきています。この事実はニューノーマル時代の大学では、学生を集める、科研費をとるのが上手だというスキル以外に、新たなスキルが重要だということを示しています。それはネット上でのコミュニケーションです。
「おい、きみ!何を言っているのかね。ネット上でのコミュニケーション? 研究費捻出できないだろう。ふざけているのかね!?」と怒られるかもしれません。
しかし、ネット上でのコミュニケーションこそが、国や民間の研究費に頼るだけでなく、新しい研究資金の確保に繋がるのです。ここでは自分がコロナ禍においてどのようなネットでの活動をし、生徒が授業で使うマイクロチップ等の教材や、自分の個人的な研究費を確保したか説明したいと思います。
科研費の特別推進研究や基礎研究Sは雲の上の存在として、基礎研究B・CそしてAが一般的だと思います。友達に百戦錬磨の科研費の書類を書く達人がいたので、挑戦的研究に仲間と一度採択を目指そうと考えましたが、獲得できる研究費の余りの安さにモチベーションが上がらず途中で書くのをやめました。「この程度の研究費、ネットで簡単に稼げるのでは?」という気持ちがあったからです。「それにせっかく頑張って研究費をとったとしても、一度集められて再分配されるのも馬鹿らしいな」と思ったのもあります。
さて本題のネット上でのコミュニケーションですが、コロナ禍において、ブログとYouTubeを始めました。そしてそれぞれに、リンク先の商品購入や契約に至ると報酬が発生するアフィリエイト広告のリンクを張り、収益を得る仕組みを作りました。折角なので勉強になるかと思い、ネットでの収入の得方を教えている学生に日々公開し、「君たちの教材はここから出してあげるよ」と基本授業での教材費用の負担を限りなく0円にしています。
GIGA ch.
教育版マインクラフト Minecraft:Education Edition MakeCode
YouTubeの収益ですが、基本的にチャンネル登録者の10倍くらいの収益が上っています。(個人差はありますが、チャンネル登録者が1万人だと、毎日更新すると月々約10万円の広告収入とお考えください)。何でこんなに広告費が入るの?と思うかもしれませんが、今までTVの宣伝に使われていた広告費が2020年頃を境に逆転し、ネットに流入しているからです。
また、これ以外にもブログの記事収益やアフィリエイト収入や企業とのタイアップ企画を含めると軽く科研費のB以上にはなります。
大学でもそうだと思いますが、「お金を分配できる人が偉い」みたいな資本主義の呪縛から解放され、自分の好きな研究だけに没頭し、生きていけるようになります。
もちろん大学の研究費は科研費だけではなく、様々な財団からも多額の費用をいただけることも知っています。しかし、これらの資金は客観的に無駄だと思われるものには使えません。ただ、無駄なものからこそ意外な発見や研究成果が生まれるものだと思います。
私の配信設備についてちょっと紹介しておきます。
この設備は自宅用ですが、学校でハイフレックス型授業を展開するときはエフェクターケースにコンパクトにまとめています。
音声に関しての簡単な配線は下図の通りです。
オンライン授業というと、一般の人は映像の配信を重視しますが、もっと大切なのは音声なので、ラジオ番組を配信するような気持ちで音声環境を整えるとよいです。先生用は有線でつながるマイク、無線のピンマイクは学生の音声を明瞭に拾うために必須だと思います。
多くの先生方はなぜ、授業を公開する必要があるのか、講堂だけで講義をすればいいのではないかと考えるかもしれませんが、「良い教えは多くの人に広めるべきだ」という考えがあるからです。
これは、青山学院教育方針の根底にあるキリスト教信仰にも通じるものがあります。イエス・キリストが天に上げられ、神の右に坐した後、弟子たちは世界中に散らばり、弾圧されて殉教しながらも、布教し、世界にその教えを浸透させました。現代において、よい授業や講義を積極的にYouTube等のSNSで拡散させ浸透させること、それが私たち青山学院に勤めるものの使命ではないかと思います。大げさな配信機材、それは自分にとって教えを広める礼拝堂そのものなのです。