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韓国語②「ハングッ ムンファ 韓国語教室」【青山学院中等部3年生選択授業】

1971年に始まった中等部3年生の「選択授業」。中等部生たちの個性をいかし、将来の可能性を伸ばすよう、様々な分野の授業を用意しています。
詳しくは、まとめページをご覧ください。
今回は「韓国語」の授業を取材しました。

 

授業レポート第2回

「“韓国の文化についての考察発表”を2学期に行います」
韓国語担当の張 嬉卿(チャン・ヒキョン,Chang Heekyung)先生からそう聞いて思わず身を乗り出した。
「インターネットの検索ですぐに見つけられるものや、前の人の発表と同じものは採用しないというルールも作っています」
何でもインターネットで調べられる今時の中等部生が、果たしてどう調べるのか。またどんなことに興味を持ち、どう自分の考えを盛り込むのか――。
あの時、青々としていた学内の木々が今では、すっかり黄金色に色づいた12月。遂に“韓国文化についての考察発表”の授業の開催日についての情報が舞い込んできた。

学内の木々)

 

発表します! 韓国文化について

良く晴れた12月の水曜日。
中等部校舎5階、中庭を囲むように作られた校舎の窓からは抜けるような青空が、より近く感じられる。

中等部校舎)

 

“韓国文化についての考察発表”の授業はここ5階のスタジオで行われるのだ。6限の授業の少し前、先生が待つ教室に早くも発表を行う数名の生徒たちが飛び込んできた。先生が用意したPCで発表資料を確認する生徒、先生へ質問をする生徒。みな発表準備への余念がない。

6限始業の鐘がなり、授業が始まった。
気づけば13名の生徒たちが集まっている。先生が口を開いた。
「今日は8人の発表を予定していますが、一人4~5分で発表をしてください」
すぐに生徒の一人が立ち上がり、素早く前に出て、用意した紙をホワイトボードに貼っていく。

韓国語の発表)

 

韓国の人の肌の方が綺麗なのはなぜか調べました」
綺麗なことに理由などあるのかと思っていると、
「第一に肌への意識が違います。まず食生活が挙げられます。韓国には食べ物は薬であるという言葉があるように食べ物への意識が高く、国民一人当たりの野菜の消費量は日本の2倍、世界第2位だそうです。またキムチには食物繊維やビタミンを多く含んでいて、便秘や肌トラブルに効果的だそうです。辛い料理は代謝を良くしてくれて美容面にも効果があるそうです。
第二に、外で運動する機会が少ないそうです。肌の老化の8割が紫外線によるものと言われており、日本は体育の時間は主に屋外で行いますが、韓国は室内で行います。そのため紫外線によるダメージが少ないそうです。
第三に、美容意識が高いことが挙げられます。一日にかける美容のための平均時間は日本が34分であるのに対し、韓国は倍の68分だそうです。またニキビなどの肌トラブルが起きた場合はすぐに病院に行くそうです」
資料を見せながら説明されていくと頷かずにはいられない。
綺麗なことにもきちんと理由があったのだ。

韓国語の発表)

綺麗の理由

 

食べ物や体育が行われる場所の違いなどにも着目していて興味深い。
発表が終わると張先生が「韓国の高校では受験勉強が中心のため、学生では差があるかもしれませんね」
とコメントされていた。
受験勉強が中心? 韓国の学校とはどんな感じなのだろうと思っていると、ちょうどそのことについて、7つの観点から調べ、発表した生徒がいた。
まず日本と韓国の学校のスケジュールの違い(日本:4月始まり、韓国:3月始まり。日本:夏休みが長い、韓国:冬と春休みが長い)から学校イベントの開催数の違い、校則の違いに至るまで調べ上げた発表には思わず唸った。中等部生とは思えない調査力だ。「日本と韓国の学校にはそれぞれの良さがあると思います」との締めくくりも清々しい。
また受験について調べた生徒もいた。韓国では毎年全人口の4%に当たる200万人前後が大学受験をするといい、86%の進学率を誇るそうだ(全世界第二位の進学率!)。小学・中学・高校入学時には受験がなく、初めて受けるのが大学受験であるため、ほぼ全員が受験するということに加え、財閥系の大企業に就職するためには上位の大学に入学する必要があるという。超学歴社会のため、日本よりも大学受験が熾烈であるらしい。1回の受験でほぼ人生が決まってしまうというのだから苛烈さを極めるのも頷ける。

韓国語の発表)

 

100%では足りず、200%、300%の力で受験勉強をするという

 

また、ゲームの違いについてや、韓国と日本のコンビニの違いについての発表も面白かった。韓国ではゲームはPCで行うもの、日本ではゲームはゲーム機で行うものであったため、ゲーム機や、ゲームの対戦力の発展の違いに触れられていた。ゲームのみならずPCの用途についても国によって違いがある、というところまでまとめられていて興味深かった。また日本のコンビニはトイレや駐車場があるが、韓国のコンビニにはない。それは韓国のコンビニがビルや建物の一部の中にあるため、その建物の中のトイレを利用するからであり、駐車場がないのは、道路上に駐車をしてもかまわないためということだったが、聞いているだけで、韓国にいる気分になれた。

韓国語の発表)

 

また、「なぜ韓国ドラマには中毒性があるのか
パワーポイントを使ったこの発表は、ひときわ目を引いた。
中毒性があるのは面白いからと一言で片づけてしまえばそれまでだが、生徒独自の視点で語られる中毒性についての考察に惹きつけられた。ラブコメからファンタジー、男気溢れるドラマまで豊富なジャンルがあるため、その人に合ったドラマを見つけられるという点や、莫大な制作費(日本の3~4倍)をかけて制作され、音楽にも力を入れ、耳に残るような音楽を挿入しているという点を挙げ、いかに人をとりこにする工夫がなされているかの調査結果には納得させられた。また喧嘩がオーバーでお椀を投げたり、キムチを投げたり、ビンタを食らわせたりと小道具や体を張った喧嘩に迫力があり、他にも何かと設定がオーバーなところも中毒性を引き起こす理由の一つとして挙げた時には教室からどっと笑いが起きていた。
資料の素晴らしさに加え、緩急をつけた発表方法など社会人顔負けのプレゼンに舌を巻いた。

韓国語の発表)

韓国ドラマにはまる(イメージ)

 

「アニメ、漫画、ドラマの日韓の違い」「冷麺の違い」について調べた生徒もいた。
アニメ、漫画、ドラマは両国共に流行った作品やついてその理由などを生徒独自の視点が興味深かった。国や言葉は違っても、アニメや漫画の感じ方は同じと結論付けていた。
冷麺については両国の麺の原材料の違い、麺の細さ、付け合わせの具材、スープの量、辛さ、冷麺の食べ方(全て混ぜて食べるのか、否か)について調べられていて、聞いているだけで食欲をそそられた。日本の冷麺は韓国の冷麺を元に日本人の味覚に合うように辛さを抑えて作られたようだとしながら、昔、韓国ではマイナス15度にもなる冬にオンドル(暖房)の効いた部屋で冷麺を食べていたと紹介し、暖房の効いた部屋で少々辛い冷麺を食べ、血行を促進するのも良いかもしれないと締めくくっていた。

韓国語の発表)

盛岡冷麺と韓国の冷麺(両方美味しそう♡)

 

全ての発表が終わると、先生が満足そうに微笑んだ。
“韓国の文化についての考察発表”があると聞いたあの時、張先生から、
「おもしろい発想が多く、さすが青山学院の生徒だなって思います」
と言われていた理由が分かった気がした。
調べたことに自分の視点を加えた発表は、詰込み式で画一的な授業では出てこないものだ。
張先生が教壇に立った。
「みなさん面白いところをよく調べました。今日で2学期の授業が終わります。韓国の文化体験がなかなかできなかったから、3学期にコロナの状況が落ち着いていたら、みんなでハンボクを着たり、韓国料理を作ったりしましょう」
3学期に文化体験を出来ればという先生の優しさが嬉しい。
ハンボクを着る授業や韓国料理の授業――また楽しみが増えた。

韓国語の発表)

 

授業レポート(文/聖 photo/香)

 

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