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韓国語①「ブチェ マンデゥㇽギ 韓国語教室」【青山学院中等部3年生選択授業】

1971年に始まった中等部3年生の「選択授業」。中等部生たちの個性をいかし、将来の可能性を伸ばすよう、様々な分野の授業を用意しています。

今回は「韓国語」の授業を取材しました。

 

先生へのインタビュー

──授業のねらいを教えてください
韓国を知らない生徒もいるので、言葉と文化に興味を持ってもらうことができたらと思っています。
年間の一般的なスケジュールはありますが、最初の授業の時に受講の目的を聞くようにしています。すると生徒からは「ドラマを字幕なしで観られるようになりたい」「自分の好きなアイドルに手紙を書きたい」「言っていることを通訳、翻訳なしで聞きたいし観たい」という声がでてきます。その年の希望に合わせて、“文法”や“書くこと”に重点を置いたり、“会話”を中心にしたりして、スケジュールを多少変更しています。
今年は、「ドラマを観て字幕を見なくても少しでも分かるようになりたい」「簡単な会話ができるようになりたい」という声があったので、1学期は文字を教え、2学期は会話中心で進めようと考えています。

張先生)
担当の張 嬉卿(チャン・ヒキョン,Chang Heekyung)先生

 

──特徴のある授業を教えてください
以前は年に2回は授業で韓国料理を作っていました。ホットクにチヂミ、トッポギ、それからキムチを作ったこともあります。冬、生徒たちが疲れているなと感じることがあります。そんな時には韓国のお茶を飲みながら授業をしたこともありました。また生徒たちのストレスが溜まっているなと感じた時は、凧を作って、グラウンドで思いっきり走りながら凧あげをする授業をしたこともあります。
他には、韓国の伝統的な衣装ハンボク(日本の着物のようなもの)を着て、茶室で写真を撮り、その写真を使って年賀状を作ります。日本語と韓国語両方の言葉を添えて、生徒たちはお世話になった人にその年賀状を送るようにしていました。
今年度も状況が許せば、年賀状作りを行いたいなと思っています。
私から見ると一番楽しいだろうなと思う授業は、2学期に行う「韓国の文化についての自分の考察発表」です。インターネットの検索ですぐに見つけられるものや、前の人の発表と同じものは採用しないというルールも作っています。韓国文化について、自分の考察を入れるように指導します。以前「韓国の芸能人はどうして整形しているか」について調べた生徒がいました。「韓国は芸能事務所に入る時、何度でも整形してもよい」という契約書を交わす事実があり、その背景として、外見を大切にしていることが考えられるなど、きちんとまとめられていました。事実調べの上、自分からはこう思うという、自己考察を行うように指導していますが、おもしろい発想で、さすが青山学院の生徒だなって思います。
また、これまで韓国の梨花女子大学附属中学校や東京の韓国学校との交流では、1年に1回は行き来してきました。今年は交流自体が難しいので残念なのですが、出し物として、アイドルグループの歌やダンスを練習して用意したこともありました。その交流会の時に出会った友達と、高校、大学でも繋がっている卒業生もいるようです。お互いメールアドレスを交換していたみたいで、高等部生から「韓国人の友達いるよ」「中等部の交流会で出会った」と聞くことがあり、想像していなかった拡がりもあって、驚いています。

──通常の語学の授業について教えてください
まずハングルを学びます。そのため1学期は一番難しい時期です。文字を学ぶことが最も苦労しますね。読めるようにさえなれば文法は日本語と同じなので、単語だけ覚えれば、自分なりに文章を作れるようになります。
例えば、「水をください」と言う場合、「“水”は“ムル”」「“ください”は“チュセヨ”」です。「ムル チュセヨ」と言えば成立するように、単語だけ教えれば、みんなちゃんと会話文を作れるようになっていきます。
今年度は2学期からは会話の授業を始める予定です。以前、客室乗務員の方の外国語の習得方法について話を聞いたことがあります。100の文章を覚えて、その中で外国語を何とかしているそうなのです。韓国語も文章として使えるものを、50、100と覚えてもらうようにして、会話ができるようにしたいと思っています。

──生徒たちの反応はいかがですか
この授業は“大学に行くための受験勉強をする”ということを目的としていません。その上、週に1日、1年で20時間しかない授業です。興味が持てないと復習ができません。なるべく興味を持ち練習ができるようにさせることが目標です。ありがたいことに、みんな興味を持ってくれているせいか、吸収が速く、定着も速いですね。映画やドラマを観せると、その中の言葉について聞かれることも多いのですが、すぐに覚えていく。毎回すごいなって思っています。

韓国語の授業)

 

──これからの授業の展開、ポイントについて教えてください
2学期は会話を中心とし、3学期は少しでも書けるようにして年賀状が作れたらと考えています。

──先生はなぜ本学で韓国語を教えることになったのですか
私の専門は建築で、東京工業大学で建築の博士号を取得しました。その途中で、「韓国語を教えられるか?」と声をかけてもらいました。「韓国語を学びたい人がいる」ということ、教えるのがクリスチャンの学校だったということが決め手となり、韓国語を教えることにしました。
自分が学んだことに対して、社会に恩返ししなければならない、と恩師から教えられ、博士号まで取ったのだから、自分のできることがあるなら何であれ貢献したいという想いもあり、現在まで続けています。

──日本に興味を持たれたきっかけは何でしたか
芸術でしょうか。日本は芸術への理解度が高く、その価値を認めてくれます。そしてルールをみんなが守り、約束を大事にしているところです。日本は落ち着いていて好きです。時代の流れと共に日本もどんどん変わっていくと思いますが、日本の文化を守っていって欲しいと思っています。

──生徒たちへメッセージをお願いします
なるべくいつも韓国の文化や芸術、食や歴史などに興味を持っていて欲しいと思っています。韓国に興味を持つことができたら、今は韓国語が上手にならなくても、一生でいつかはチャンスもあるし、お互いに理解するチャンスもあるので、ずっと興味を持ち続けて欲しいと思っています。

──ありがとうございました

 

 

「韓国語の授業は言葉だけでなく、文化にも触れてもらうようにしています。韓国を知ってもらえるように、好きになってもらえるように」
そう穏やかに語る張嬉卿先生。コロナ禍で生徒同士の会話練習もままならず、本来ならば、韓国語の歌を学んだり、韓国料理を作ったりしているが、今はまだできていない状況だという。様々なことに制約のかかる中にあっても、できる工夫は全て行うという先生の穏やかながらも確かな熱意に惹かれ、1学期最後の水曜日、韓国文化に触れる特別授業を取材した。

 

授業レポート第1回(うちわ作り~ブチェ マンデゥㇽギ)

「アニョハセヨ」
教室で交わされる涼やかな挨拶──。
本鈴と共に始まった授業は、黒板に飾られた美しいうちわのせいか、教室全体が違う世界であるような、どこか異国の空気が漂っているように感じる。

韓国語の授業)

 

「今日はうちわを作ります。うちわは韓国語でブチェ、と言います。うちわ作りは、ブチェ マンデゥㇽギと言います。発音します」
「ブチェ マンデゥㇽギ」
生徒たちは、先生の発音を正確になぞる様に発音していて、その発音の完成度は高い。先生がうちわを指し、
「牡丹の花は韓国語でモランと言い、龍は韓国語でヨンと言います。韓国では龍は水の王様と考えられていて、雨が降らない時は、龍にお願いしました。それでは発音しますよ」
「モラン」
「ヨン」
 生徒たちの発音はどれも美しい。この時点で既にこれだけ発音できるというのは、今までの授業がどれ程、素晴らしいものであったかが伺える。

韓国語の授業)

 

各々、うちわの絵柄(牡丹の花か龍)を選ぶが、圧倒的に“牡丹の花”の人気が高い。先生は「龍も綺麗よ」と勧めるのだが、“牡丹の花”の人気は衰えない。在庫切れになるのではとハラハラするも、みんな希望する絵柄が選べたようだ。
先生が手にしたうちわの赤い文字を指さす、
「自分の名前を縦か横で書いて。ハンコのように囲ってね」
この場合、自分の名前は当然“ハングルで”ということになる。
自分の名前のハングルを忘れてしまい、先生に助けてもらっている生徒もいたが、ほとんどの生徒がスラスラと自分の名前を書いていく。

韓国語の授業)

 

「はい、ちゃんと書けていますね」
先生の確認が済むと、生徒たちは、うちわの絵柄に色を塗り始める。
夢中で作業をする生徒たちに先生が、「うちわって韓国語で何て言う?」「牡丹の花は?」「龍は?」と時々質問をする。生徒たちは慌ててホワイトボードを見ることもなく、色を塗る手を止めずに「ブチェ」「モラン」「ヨン」と静かに答えていく。

なるほどうちわ作りなら感染対策にもなるし、文化にも触れられる。
先生に「うちわ作りとは工夫されていらっしゃいますね」と声をかけると「夏なので、うちわを作ったら使ってもらえるかなと思いました。そこに自分の名前をハングルで入れる工夫をしました」とほほ笑んだ。「夏の間に作ったうちわを使いながら、自分の名前をハングルで思い出せればよいなと。生徒たちは想像以上に素敵なうちわを作り上げてくれました」
見渡せば、青、ピンク、黄緑、赤、思い思いの花がうちわの上で咲き始め、色鮮やかな龍がうちわから躍り上がるように見え始めてくる。ハングルで書かれた名前と相まって、美しさが際立つようだ。
授業終了の鐘が鳴った。
「カムサハムニダ」
穏やかな時間が“ありがとうございました”の挨拶で終わった。生徒たち達は完成したうちわと共に、夏休みに入る。そして明ければ通常の韓国語の授業が始まる。

韓国語の授業)

 

生徒インタビュー

うちわ作りの後、生徒のみなさんの感想を聞いてみました。
──韓国語授業の楽しいところは

Aくん 韓国の知識や文化も一緒に学べるところ。映画を字幕だけではなく、音からも聞き取れるようになれるところ。

Lさん 韓国の映画を観ることができる。今日のうちわ作りも楽しかった!

Eくん 韓国映画を観られることや、ハングル文字が読めるようになるのが楽しい。

Mさん 韓国ドラマを通して勉強ができるのが楽しいし、先生が優しい。韓国語の発音がよくなり、ハングル文字が覚えられてうれしい。

Kさん 韓国の文化を学べるところ。先生が優しいところ。それといろいろな実習があるので、様々な面で韓国に触れられるところが楽しいです。

Fさん 日本語とはまた違う難しさがある。言語を知れるのが楽しい。日本語と違う読み方をするところが面白い。

──難しいところは

Aくん 発音の違いが難しい!

Kさん 文字の子音が難しい!

Eくん 発音が難しいし、文字を覚えるのも大変。

Fさん 慣れない言語なので、単語を覚えるのが難しい。

──特別授業で韓国語を選択した理由は?
Aくん 韓国が好きだから。特にK-POP全般が好き!

Mさん 将来、韓国語に興味を持った時に困らないように。

Eくん 将来、韓国でK-POPに携わって仕事がしたいので選択しました。

Kさん 韓国のドラマが大好きでよく観ているので、字幕なしで観られるようになりたいから。

Fさん 通っている教会で韓国の子ども達と交流するプログラムがあり、子ども達と話せるようになりたくて、選択しました。

──授業の感想を教えてください

Aくん うちわを作りながら韓国語も学べてよかった。

Kさん 本物に触れることができ、楽しみながら文字が書けるようになったり、発音がよくなってきてうれしい!

Eくん 普段は発音や文字の勉強ですが、今回は民画の入ったうちわ作りで韓国の文化に触れることができました。

Fさん 授業で映画を観た時、習った言葉が使われているのが分かった時、うれしかったです。

「いつもは韓国語の授業をしているんです」と語っていた生徒達。その日も数名が持ってきていた分厚いテキストには、かなり読み込まれた跡が見えた。

 

取材班も一緒に授業を受けて、うちわを作りました

取材班も一緒にうちわを作りました

(取材:茂/香/恵/聖)