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オリジナルゲームを作ろう~その②【プロプロ☆プログラミング~初等部プログラミング教室を追え~episode 2】

 

オンライン授業に潜入!?

プログラミングの授業の集大成として取り組むオリジナルのゲーム作り。
前回はグループに分かれて、今までに作った2つのゲームのどちらを選んで改造するか話し合いを行った。
多数決でスムーズに決められたグループもあれば、どこを改造するかで好みが分かれ、なかなか決められなかったグループも。
今回と次回の2回でゲーム作り、そして発表の資料作りに挑む。
しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で授業が急遽オンラインに。果たして?

オリジナルゲーム作り

朝8時30分過ぎ、4年桃組の教室に着くと、井村先生が教卓に座って授業の準備をしていた。
前回と似た光景だが、明らかに違う。
教室には児童が一人も座っていない。だから静かかというとそうでもない。
教卓の脇、大きなスクリーンには児童が一人一人映し出されている。

リモート授業)

 


オンライン授業だ。
碁盤の目のように区切られた画面、小さな四角のその一つひとつに児童が映し出されている。
よく見ると背景を変えている子もいれば、自室らしい窓や壁が映りこんでいる子もいる。
でも共通しているのは、みんな制服を着ていること。
井村先生にその点を尋ねると、
「学校に通っている時と同じようにと指導しているんです」
と、ほほ笑む。
なるほど。
家にいても、学校に通っている時と同じリズムで生活をしていれば、だらけることもないだろう。
そう言えば、さっきから誰もいないはずの廊下から先生や児童の声が漏れ聞こえてくる。
不思議に思っていると、井村先生が案内してくれた。
「隣のクラスは教員も児童も全員自宅からオンライン授業をしています。2つ隣のクラスは、今、オンラインでホームルームをしていますね」
廊下から覗いてみると、教卓に先生が座り大きなスクリーン上に映し出された碁盤の目の中にいる児童たちと会話をしている。

リモート授業)

 

「今週は〇〇の提出期限です。あっ、今、頷かなかった人、目をそらした人。まだ手を付けていないのだったら、急いで取り掛かってね」
自宅学習とはいえ、授業なのだと思い知らされる。

 

時刻が9時を回り、井村先生がスクリーンの中にいる児童たちに語り始めた。
「前回よりグループで活動していますが、再来週くらいまでにプログラムと発表資料を作ってほしい。プログラムを作る人、発表資料を作る人を、それぞれ決めてね。発表資料だけど、アイデアシートとプレゼンシートがあるから見てみて」
先生がスクリーンにアイデアシートを映し出した。

リモート授業)

 

「このアイデアシートには6つのアイデアが入るようにできているから、そこを埋めるように作ってほしい。次にプレゼンシート」
今度は先生がパワーポイントを起動させた。

リモート授業)

 

「アイデアシートを基にして、6枚のプレゼンシートを作って欲しい。表紙、全体の説明、まとめで3枚、そして、こだわりのポイント3枚で合計6枚。このプレゼンシートは文字を打つこともできるし、ペンで書くこともできる。これは共同で作業でき、みんなで作れるからね。いい?」
児童たちが一様に頷く。
「それじゃあ、ブレイクアウトルーム(少人数に分けてディスカッションできる機能)を作ったから、今からグループに分かれて作業してね。9時30分には、みんなを呼び戻すつもりです。先生は各グループをくるくる回っているので、何かあったら知らせて。それじゃあグループに分かれてもらうよ」
先生の言葉に児童の一人が不安げに、
「先生、ブレイクアウトしますかって?(画面に)出ています。ミーティングに参加しますってメッセージが」
井村先生が落ち着いた様子で画面に語りかける。
「メッセージが出たら、“はい”を押して」
碁盤の目状に映し出された児童の一人ひとりが消えていく。グループに分かれていった証拠だ。
急に、スクリーンに児童が大きく映し出された。大きな目が不安そうに動いている。
「先生B1グループに○○君がいません」
「お休み?」
「それが分からないんです」
「あっ、○○君、お休みだね」
「わぁ、どうしよう。○○君がプログラム作る担当になっているんです」
「それじゃあスクラッチ(プログラミング)なしで、進めるところまで進めてみて。できそう?」
「はい、やってみます」
児童の画が消えた。自分のグループに戻っていったらしい。
井村先生が、
「各グループがどのような状態か見てみましょう」
言いながら、キーボードをたたく。

リモート授業)

 

画面がグループの部屋を映し出す。
左右に分割された画面の右には児童4名の画、左にはパワーポイントが映し出されている。
右に映っている児童の1人が慌てたように叫んだ。
「どうしよう、あと12分しかないよ」
「表紙って、どういう感じにしようか?」
「アニメのキャラとか載せる?」
「そういうのじゃないよ」
その時、左側のパワーポイントに黒い線が引かれた。
「ちょっと、これやっているの誰?」
児童たちの目が黒い線に向けられている。
「何なの、これ誰が書いたの?」
すると、1人の男の子が焦ったように、
「適当に書いた。俺が書いたの見えているか教えて欲しくて」
その言葉に、全員が頷いた。
「じゃあ書くよ、『これからB1グループの発表を始めます』」
パワーポイントに文字が打たれていく。

リモート授業)

 

その時、急に
「井村先生どうしたんですか?」
と文字が表示された。
ぎょっとして井村先生を見ると、
「どうやら、こちらで見ていることに気づいたみたいですね」
画面から児童たちの声が聞こえる。
「井村先生どうしたんですかって(どういう意味)?」
「今、井村先生いなかった?」
いたずらでも見つかったかのようにどぎまぎしたが、井村先生は落ち着いたものだ。
「他のグループも見てみましょう」
言いながら、キーボードを操作する。すると今度はD2グループの画面が映し出された。

リモート授業)

D2グループが作る発表資料

 

「D2グループは発表資料を作っているのか……他のグループは……」
次々と画面が切り替わっていく。先生がB2グループの画面で手を止めた。
「このグループは上手いですね。画面でプログラミングの画面を共有して、スライドを共同編集している。しかもスライドを1人1枚ずつ作っていますね」

リモート授業)

B2グループの作業の様子

 

ポカンとしていると、井村先生がやや興奮気味に
「スクラッチ(プログラミング)は共同編集できないんです。だから画面共有をしている」
画面にB2グループのプログラミングの画面が映った。
「そして、見てください。アイデアシートも内容だけ大まかに書いてある。プログラミング画面を画面共有機能を使ってみんなで見ながら、パワーポイントを起動させ、各自1枚ずつのスライド(資料)作りを同時進行させているんです」
左にスクラッチ(プログラミング)画面、右にパワーポイントの画面と分割されているのは見事で、確かに上手い使い方だ。
そういえばこのグループは初回の企画会議でも、黙々と各自がアイデアを書いていた。

リモート授業)

B2グループ

 

児童たちが作成していく画面を眺めていると、井村先生が言った。
「もう9時30分ですね。児童たちを呼び戻しましょう」
画面が切り替わり、児童一人ひとりの顔が大きく映し出されて、碁盤の目の中に戻っていく。

リモート授業)

 

全員が戻ると、井村先生が
「オンラインで難しかったところもあるけど、B2グループが上手く作業していました。スクラッチだけは共同編集できないから、画面共有して、それを見ながら、みんなでスライドを作っていたよ。アイデアシートも内容だけを大まかに作っていたしね」
B2グループのシートをみんなに見せた。
「みんなで作って、3月の最後の授業で発表をするように予定しているからね。それじゃあ、また来週。グループで相談しながら進めようね」
頷く児童たちに井村先生は何かを感じたらしく、
「お休みの日に作業する必要はないからね。来週ゆっくり作業をすればいいからね」
と、優しく言った。

 

授業を終えると井村先生が、
「オンライン授業だと周りに助ける子がいないので、対面授業以上に気を遣うところがありますし、通信の状況によって作業が途切れてしまうこともあります。あと数回準備に時間をかけないといけないでしょうね」
2月16日の発表は授業がオンラインに変更になったことにより延期になった。
3月の最後の授業の発表で、グループの活動が実ることを願うばかりだ。