オリジナルゲームを作ろう~その①【プロプロ☆プログラミング~初等部プログラミング教室を追え~episode 2】
2022/04/08
2021年の秋から始まったプログラミングの授業も、早6か月。
青山学院初等部4年生たちが、ついにオリジナルのゲーム作りに挑戦する。
課題は「小学校1年生でも楽しめるゲーム」。
今まで作った2つのゲームのどちらかを選び改造していく。
難しいのは、いかに小学校1年生でも楽しめるようにするのか、工夫とその理由も必要だ。
しかも、この課題はグループで行い、最後はみんなの前で発表しなくてはならない。
まずは今回の課題について、もととなるゲームを見ていこう。
──井村裕先生、ゲームについて教えてください。
「恐竜から逃げよゲーム」は動いている恐竜から逃げていくゲームです。
途中から、その恐竜が大きくなっていきます。
下に実際のゲームがあるので、ちょっと遊んでみてください。
十字キーで虫を操作します。ゴールはなく、ドラゴンに触れるとHP(スコア)が1減り、HPが0になったらゲームオーバーになります。それでは緑のボタンを押して、ゲームスタート!
──井村先生、途中から恐竜が大きくなるので焦りますね。改造のポイントは?
改造のポイントは
になります。
──もう一つのゲームは?
「的当てゲーム」は、ボールによって点数が違うゲームで、10秒以内に50点取らないといけないものです。
こちらも実際に試してみてください。
マウスカーソルでボールに触れることでスコアを増やしていきます。
黄 → スコアを1増やす
紫 → スコアを2倍にする
青 → スコアを1減らす
緑 → スコアを半分にする
ゲーム開始から10秒経った時点でスコアが50点より大きければゲームクリアとなり、50点以下であればゲームオーバーとなります。
──井村先生、こっ、これは難しいですね。
そうですね。4年生の中でも「難しかった」という声が多かったので、改造のポイントは
の4点になりますね。
──果たして時間内にオリジナリティ光るゲームを作り、プレゼンすることができるのか。
4年桃組のクラスでは、井村裕先生がキビキビとした様子でプリントを配っていた。
「今までは、みんな一緒にゲームを作ったけど、ここからは応用。グループに分かれてゲームを作っていくよ」
先生がスクリーンにゲームを映し出す。
「今まで作ったことのある2つのゲームのうち1つを選んで、小学校1年生でも楽しめるゲームに作り変えてほしい。変えるポイントを4点考えてほしい。どう作り変えたか工夫も必要だけど、理由も大切だよ。プレゼン用の資料も作って、2月16日に、どう作り変えたか上手く発表してほしい(※取材日は2月7日)」
みんなスクリーンとプリントを交互に見つめている。どの子も真剣だ。
「それじゃあ、グループに分かれて、初めて」
机ごと移動が始まり、あっという間にクラス中に島が出来上がった。
早速4名(または3名)のグループに分かれた4年桃組の児童たち。
どちらのゲームを選ぶのか――。
B1グループは、多数決で決めることにしたようだ。
「恐竜がいい人」
司会の男の子が言うと、男の子2人の手が挙がる。
「それじゃあ的当てがいい人」
今度は女の子2人の手が挙がる。
2対2、多数決で決着がつかないようで、
「具体的にどういうところがいいと思う?」
司会の男の子が切りこみ、議論が続く。
他にも、具体的にどういうところがいいか、その部分をとことん話し合うことにしたグループもあるようで、
A2グループ
「僕は“恐竜から逃げよゲーム”がいい。もともとは横と縦に行けるだけだけど、ジャンプさせられるようにすればいいと思う」
構想が拡がり、“恐竜から逃げよゲーム”に決めてしまうのかと思いきや、
「○○はどっちがいいの?」
きちんと他の人の意見を聞くことも忘れていない。
一方、井村先生のところに歩み寄ってきた児童が、
「先生、2つのゲームを組み合わせていいですか?」
井村先生は首を横に振った。
「組み合わせると改造ではなく、全く違うゲームになってしまうから」
開始から20分が経過。
どのグループも改造するゲームを選択し終えたようだ。
2対2で意見が割れていたA1グループは“的当てゲーム”を選択したもよう。
「的当ての的の色によって点数が違うっていうのは1年生には難しすぎるから、点数は、こうもりの数にしようよ」
早くも改造のポイントを話し合っている。
どうしたら小学1年生でも楽しめるのか、“的当てゲーム”の加算の仕組みを変えることにしたグループは他にもあるようで、
B2グループ
「点数によって音楽を変えるのは?」
「ひらがなにしようよ」
そもそものルールを説明してしまうことにしたグループもあるようだ。
C2グループ
「的当てゲームを始める前に、ルールを説明するのは?」
「それいい。OKをクリックしたら、ゲームが始まるようにしよう」
アイデアが光っている。
一方、“恐竜から逃げよゲーム”を選択したグループは、キャラクターを変える作戦を立てたものの、苦戦しているようで、
「1年生の男子が好きなキャラ決めてよ」
「男の子からも女の子からも好かれるキャラがいいよ」
「虫は?」
「虫はヤダ。かわいくないよ」
「黄色い角(つの)なんてありえないよ」
他にも、そもそものキャラクターを変えてしまおうとするグループも。
「恐竜を変えようよ」
「恐竜から逃げるのを猫に変えるのは?」
果たして時間内に話し合いがまとまるのか。
井村先生が各グループ間を回りながら、
「もう11時20分だよ。あと5分くらいで考えて、まとめて」
声を張り上げた。
しかし話し合いはヒートアップするようで、
「こうもりは1体だけにしようよ。たくさん出してもコントロールできないよ」
「背景やタイトルも変えようよ」
「この色に変えるのは?」
「目がチカチカする」
「小1じゃ、まだかけ算、割り算を習ってないから変えないと」
意見が飛び交っている。
「はい、そこまで」
井村先生が、時計を見やりながら声を掛けた。
「今日配った紙を、明日までに書いて提出してね。16日の発表は1グループ4分くらいだから、コンパクトにまとめるようにね。それじゃあまた来週」
児童たちは机を移動させながら頷いた。
黙々と変更点を書くグループもあれば、キャラクターの好みが譲れずに、話し合いが決裂しているグループも。
次回は、実際にゲームと発表資料の作成に入る予定である。