アドベント☆アドベンチャー
2020/12/01
広報部員・聖(ひじり)は感慨深く、青山キャンパスのクリスマス・ツリーの灯りを見つめた。
昨年はグリーンパーティーのメンバーとともに、点火祭の前にヒマラヤ杉ともみの木を見て回ったが、今年は、新型コロナウイルスの影響でグリーンパーティーのメンバーを招集できずに、寂しい思いをした。しかし、この銀杏の黄色とクリスマス・ツリーが織りなすキャンパスの華やかさはどうだ。身体も心も懐までもが寒くなってくる季節にあって、なんだか心まで温まってくるから不思議だ。
「アドベント」または「待降節」「降臨節」「待誕節」とも言う。「待誕節」というのが一番分かりやすくその意味を表していると個人的にはそう思う。つまりイエス・キリストの誕生を待つ期間を指し、12月25日の直近の日曜日から数えて4週前の日曜日に始まり(ちなみに今年は11月29日(日)からです)、この日からクリスマスの飾りつけを行ったり、毎週日曜日にろうそくを灯していったりする。
このアドベントには実は専用のカレンダー“アドベントカレンダー”というのがある。
今年のカレンダーの残りがあと1~2枚となる時に新たなカレンダーを用意するという、まったくもって不思議な習慣なのだが、カレンダーには仕掛けがある。
つまり日めくりなのだ。
最近では日本でも、アドベントカレンダーが巷でも見られるようになってきた。一日一日に引き出しやポケットがついていて、そこにはお茶や甘美なお菓子が入っているものが多い。
度肝を抜かれるアドベントカレンダーとしてはドイツのゲンゲンバッハやシュトゥットガルトの市庁舎の建物を丸ごとアドベントカレンダーに変身させるものである。毎日一つずつ窓に絵や数字などが飾られ、クリスマスまでにはすべての窓に絵や数字がそろう仕掛けになっている。こう書いてもなかなかピンと来ないかもしれないが、カレンダーの大きさには圧倒される。確実に美しく、一見の価値がある。なぜ建物をアドベントカレンダーにしようと思ったのか、今度機会があれば市長にでも聞いてみたい。
そしてアドベントには、“素敵習慣”がある。この時期に食べる特別なお菓子が存在する。例えばシュトレン。ドライフルーツやナッツをふんだんに使った発酵菓子で、粉糖をまぶした形から産着をまとったイエスを表しているとも言われる。ドイツではアドベントの期間に少しずつスライスして家族みんなで食べていくという。馥郁(ふくいく)としたフルーツと洋酒の香り、脳天を直撃するような甘さがありながら、スパイスの香りで少しも甘ったるさを感じさせない。ほとんどの家庭がクリスマス前、早々に食べきってしまうという、なんとも魅力的な食べ物だ。スライスなどせず、恵方巻のごとくかぶりつきたい衝動にもかられるが、レシピを見て震えるほど驚いたことがある。砂糖やバターの使用量が半端ないのだ。そもそも約1か月間、熟成しながら食べ続けられるように作るのだから無理もない。
フランスでは、東部のアルザス地方でドライフルーツやナッツを使った発酵菓子クグロフを食べる。 ゲヴュルツトラミネールという甘い芳香が特徴のデザートワイン(白ワイン)とともに食後にいただくという家庭も多いらしい。
イタリアではパンドーロやパネットーネもクリスマスの時期に食べるリッチな発酵菓子として有名だ。卵の黄身をこれでもかこれでもかと投入して作られており、材料費を考えると美味しくても一年中食べることは断念せざるをえない。
もっと気軽に食べられるクリスマスのお菓子としては、スパイスクッキーのスペキュロスやレープクーヘン、三日月形のバニラキッフェル、甘酸っぱいラズベリーが特徴的なリンツァートルテなどなどがある。
アドベント菓子のことばかり夢想していた聖はお腹がすいてめまいがしそうになった。不覚にもよろめきつつクリスマス・ツリーに背を向け、歩き始めた。
日めくりカレンダーは“日”をめくり忘れ、夏休みの日記は8月31日に全部書くという、まめまめしさのかけらもないが、アドベントカレンダーのポケットの中に甘いお菓子が入っているとあれば、アドベントの期間、毎日を迎えるのが楽しみになりそうだ。
いけない、いけない、そうではない。
アドベントは菓子を食べる期間ではなく、要するに12月25日、イエス・キリストの誕生を待ちわびる期間なのだ。もっと粛々とした気持ちでこの時期を過ごそうと、せめて青山学院のアドベントカレンダーを毎日クリックすることにした。