説明しよう!
放課後819(ハチイチキュー)倶楽部とは——
俳句を1から楽しく学ぶことをコンセプトに立ち上がったwebサイト上の倶楽部である。
紹介しよう!
倶楽部員は2人。
顧問は青山学院中等部の国語科教諭、林謙二先生。
第2回の倶楽部活動の様子をここに報告しよう。
(なお、倶楽部活動はリアルと仮想の両方で行われる。)
季語について
林先生
放課後819倶楽部第2回の倶楽部活動を始めます。突然だけど、クイズです。スイカという季語が表す季節は分かる?
さとは
夏かな
林先生
残念ながら、秋なんだ
はんな
ええ、不思議! でもどうしてスイカが秋なのでしょうか
林先生
かつて立秋(8月上旬)を過ぎたスイカは甘みが増して本当においしいと言われていたんだ。一番おいしい時期である旬を表す季語だと言えるね。ちなみに“スイカ割り”になると、夏の季語になる
さとは
へぇ、面白い
林先生
では続いて、甘酒という季語が表す季節はいつでしょう?
はんな
夏でしょうか?
林先生
正解!
さとは
はんなちゃん、すごい!!
はんな
本で読んだことがあって。でも甘酒が夏の季語って知った時は意外でした
林先生
確かに! 冬の飲み物というイメージが強いし、甘酒がいつでも飲めるようになった現在でも夏というのは想像しにくいからね。とはいえ、かつて甘酒は夏バテを解消する夏の飲み物だったんだ
さとは
面白いけど、ちょっと難しいですね
林先生
今は温暖化の影響で季節感がだんだんなくなってきているけど、それでも日本は、他の国に比べて季節の移り変わりが美しかったり、激しかったりする。そのため、俳句では季語を大切にしているんだ。例えば、夏の季語で「海水浴」と言ったときに、海水浴のイメージを頭の中で思い浮かべるとあまり差がなく、同じようなイメージになる。
さとは
砂浜とか海の家とか、暑くなってくると行きたくなる
林先生
そうだね。海水浴と言えば楽しいイメージで、つまらないとか悲しいというイメージを持つ人はほとんどいない。一方で「桜」って聞くと桜の花の美しさが思い浮かぶけど、桜の花が散っていく寂しさみたいなものも思い浮かぶ。そういったイメージは私たちに共通しているんだ
季語とは
- 俳句を作るときに使用する、季節を表す語句のこと
- 季語からは季節のほかに詠み手の心情やイメージも読み取ることができる
- 俳句の作者と読者が共通のイメージを共有できる大事なキーワード
はんな
季語が「詠む人と読む人の間をつなぐ重要なキーワード」だというのは分かりました。でも現在の季節と季語の季節ってズレていて、すぐに分からないのが難しいところですね
林先生
季語となった時代背景が影響しているものも多々あるからね。そんな時に役立つのが、「歳時記」。歳時記には大きく2種類あって、1年の折々の自然の事物・年中行事などを記した本来の歳時記と、俳句に特化したいわゆる「俳諧歳時記」や「季寄せ」といわれる書物がある。今日は代表的なものをいくつか持ってきた。ほら、見て
林先生
私が実はいつも持ち歩いているのが『ハンディ版 入門歳時記』。これは本当にコンパクトなハンディ版で、すべての季語が載っているわけではないんだけど、非常に使いやすいんだ
『ハンディ版 入門歳時記 新版』
監修・編集:大野 林火(監修)俳句文学館(編集)
発行元:KADOKAWA
定価:2,090円
林先生
例えば、「蝉」という季語の項目を開くと、蝉の説明が書いてある。ここには辞書に載っているような説明でも百科事典に載っているような説明でもなくて、蝉にはこういう風なイメージがある、というのを説明している。その他に蝉を使った例句が載っていて、例句のうち一句については詳細な説明がついていて、こんな風なことを詠んでいますよということが載っているんだ
歳時記とは
- 俳句の季語を集めて分類・整理した書物
- 一つひとつの季語について、こういう風なイメージがある、というのを説明している
- それぞれの季語を使った例句が載っている
- 例句(の一つあるいは複数)に、詳細な説明が載っている
林先生
今、紹介したものが一番簡略版の歳時記だけど、次に紹介するものは一番大きいと言われている『角川俳句 大歳時記』。この一冊で夏だけ、夏の季語だけが載っているものになる
さとは
すごい!
はんな
分厚い!
左手前が『角川俳句大歳時記 夏 Kadokawa HAIKU Dai-Saijiki』
編者:角川学芸出版
発行元:KADOKAWA
定価:4,400円
※現在、『新版 角川俳句大歳時記 夏』が刊行中
林先生
この歳時記には、先ほどのハンディ版とは比べ物にならないぐらい説明が細かく載っているんだ
はんな
(パラパラめくりながら)本当だ、載っている俳句の量が全然違う!
林先生
例えば、「納涼」という季語についてひいてみると、納涼という季語の解説、昔はどう使われていたかという説明が詳細に書いてある。あとは例句がずらっと載っているんだ。みなさんがこの季語で詠んでみようと思ったとき、歳時記をめくって、この季語がどういうイメージの季語なのかというのを理解する。さらに例句を見て、季語がどういう使われ方をしているか、どういう風な雰囲気で詠まれているかというのを学ぶといいね。例句を見るというのはすごく勉強になるのでおすすめだ。中学生には難しい例句もたくさんあるけど、大歳時記にはたくさん例句が載っているから、理解できるものもあると思う
さとは
歳時記って面白い
林先生
俳句の季節というのは、春夏秋冬に加えて、年が明けたことを祝う新年の5つの季節で構成されているから、この大きさの歳時記が全部で5冊、国語科のメディアスペースの俳句コーナーにも所蔵されているから、今度見てみると良いよ
国語のメディアスペース
中等部には各教科に対応するメディアスペースという場所があり、そこには教科関連の資料がたくさん置いてある
林先生
この『大歳時記』をさすがに5冊持ち歩くことはできないけど、今は便利な時代で、電子辞書で5冊分見ることができるんだ。私はハンディ版と、この電子辞書の『大歳時記』、それと句帳の3点セットをいつも持ち歩いている
はんな
電子辞書でも歳時記が見られるなんて便利ですね
林先生
その他、もっと現代的に、中学生ぐらいの生徒にも分かりやすいように編集した歳時記もたくさんある。この『まいにちの季語』では、〇月×日はこの季語というように、まるで日めくりカレンダーのように、例えば、6月23日は麦茶というような形で季語が載っているんだ
『まいにちの季語』
監修:辻 桃子・安部 元気
発行元:主婦の友社
定価:1,650円
林先生
さらに、花というものだけに注目した歳時記もある。写真付きで載っているので、街を歩いていて美しい花を見つけたときに、花の名前を調べることができるんだ。写真だけではなく、例句もきちんと載っている