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技術B「電気自動車」『製作、そして国家資格にチャレンジ』【青山学院中等部3年生選択授業】

1971年に始まった中等部3年生の「選択授業」。中等部生たちの個性をいかし、将来の可能性を伸ばすよう、様々な分野の授業を用意しています。
詳しくは、まとめページをご覧ください。

 

今回は、技術B「電気自動車」の授業レポートをお伝えします。

 

授業レポート

電気自動車製作、そして国家資格にチャレンジ

2022年6月29日

その名の通り、電気自動車を作るという、技術B「電気自動車」。
今日は、1学期に生徒たちが製作してきた青山学院中等部オリジナルの電気自動車がついに完成し、テスト走行をするという。

5時限目に教室に行くと、薄暗い中で、なんと試験中。
「試験が終わったらテスト走行をしますので」と関隆一先生からご案内をいただいた。
テストの邪魔をしないようにいったん退散。

あとで生徒に聞いてみると、「第二種電気工事士」という国家資格を取得するための過去問の試験だったそうで、複線図の問題などが出たという。これまで生徒たちは実技を行ってきたので、初めての試験に、四苦八苦したようだ。

この資格を取得すると、600V以下で受電する一般住宅や小規模店舗の一般用電気工作物の取り扱いが可能になる。
国家資格にチャレンジすることは選択授業においては初めてのことであろうか。
なぜこの授業をとったのか聞いてみると、「電気工事士の資格が取れるから」という生徒もいた。

そして同時に「エコ1チャレンジカップ 2022 ~中・高校生による手作り電気自動車コンテスト~」に出場するため、生徒たちは電気自動車を手作りしているのだ。

昨年は、同大会にマイコン部として出場し、デザイン賞と日産賞を受賞している。関先生は、マイコン部で行った電気自動車製作を、今年の3年生の選択授業、技術B「電気自動車」に取り入れた。

電気自動車を製作し、国家資格試験合格も目指すという、かつてない壮大で野心的な授業だ。
関先生もだいぶ気合が入っている様子で、年間スケジュールも細かく計画されている。

 

テスト走行

時間をあらためて再度伺うと、電気自動車のテスト走行の準備が始まっていた。
場所は試験をしていた教室の隣のテニスコート。

 

電気自動車レポート

 

黒と赤の2台の車体が登場。黒は「ランボルギーニ」、赤は「フェラーリ」と呼んでいるそうだ。
ちなみに「フェラーリ」の重量は16kgほど。
「1家に1台ほしいね」と言う生徒も。

 

電気自動車レポート

 

男子生徒がブルーシートとベニヤ板を使って四隅のコーナーを作っている。

 

電気自動車レポート

電気自動車レポート
中等部マーク(校章)の入ったヘルメット

 

安全のために中等部マーク(校章)の入ったヘルメットとプロテクターを装備して、早速、テスト走行を開始。
今日は中等部事務職員の小菅さんも参加して一番手として「フェラーリ」に搭乗。かろやかな走行を披露した。
「ステアリングがいいですね」と小菅さん。
方向転換がしやすいようだ。

 

電気自動車レポート
真っ赤なFerrariのシャツを着て搭乗する小菅さん(右)と生徒

 

生徒たちも順番に搭乗。
関先生から、様々な声がけが。
「ゆっくり操作して。大会の時はスピードを出して。今は安全に怪我をしないように」
「油断しないように」
「急ブレーキはだめ。最後はゆっくりと流すように停止」
「大会の時はゆっくりしないで滑らかにつないでいくように。そうしないと試合に負けるぞ」

先生の指導通り、安全に滑らかに運転する生徒もいれば、少しスピードを出して運転する生徒もいる。なかなか上手い。

「スピードを出し過ぎないよう」
「電費がいい走りだね」
「注意一秒、怪我一生」
関先生は常に生徒に声がけをして目配りしている。

スピードも時速20㎞~30㎞が出るというが、体感速度は時速50㎞以上だという。

 

電気自動車レポート

 

すると関先生が「広報部の方もどうぞ」と。
私も運転することに。
「アクセルはこうで、ブレーキはこうです」。生徒たちが優しく教えてくれる。至れり尽くせり。感激した。

 

電気自動車レポート

 

安全運転で、無事帰着。

関先生は最後に、運転が苦手な生徒に再度運転の機会を与える。

 

電気自動車レポート

 

一人の生徒が寄り添ってアドバイスをしている。
みんなが見守る中、第1コーナーをクリアすると、生徒たちから拍手が起こった。チームワークの良さが微笑ましい。

テスト走行が終わり、先生が何も言わなくても、生徒それぞれが撤収作業を開始。

 

電気自動車レポート

 

手作り電気自動車コンテスト

8月27日と28日に開催される「エコ1チャレンジカップ 2022 ~中・高校生による手作り電気自動車コンテスト~」では、細かい実施規定が設けられている。

    第20条【競技方法】
    各チームは、規定により定められた性能、個数のバッテリーを用い、それぞれの性能に合わせた走行計画のもと、以下の競技を実施し、総合優勝を競うものとする。
    (1) スラロームコースをいかに早く安全に走行できるか。
    (2) デザイン性。特に独創性と先進性(低コスト・高機能・材料置換・構造・エコ)を評価する。
※大会「実施要領」より抜粋

既定の30分の時間内に、1周500メートルのコースで1周ごとにドライバーを交代する。生徒全員が運転し、一番多く周回をしたチームが上位となり、同じ周回数の場合は速いタイムのチームが上位となる。
競技車両は、全長:3.0m、全幅:1.2m、全高:1.6m以内。
ほかにも様々な規定がある。

デザイン性も評価されるとすると、フロントウイングのみの「フェラーリ」の改装も重要だ。

 

電気自動車レポート
新たに改装された「フェラーリ」

 

今日のテスト走行の様子を見ていると、生徒のチームワークがよく、先生も生徒を信頼している様子がうかがえ、好成績が出るのではと期待が高まる。
本番が楽しみだ。

取材班は「エコ1チャレンジカップ 2022 ~中・高校生による手作り電気自動車コンテスト~」の取材にも行く予定。
新型コロナウイルスの影響が無ければいいのですが…。
お楽しみに。

 

授業レポート(文/茂 photo/梨)