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オリジナルゲーム作り2~その③【プロプロ☆プログラミング~初等部プログラミング教室を追え~episode 4】

プロプロ☆プログラミングへようこそ

2021年に本格的に始まった青山学院初等部のプログラミング教育も早1年。
5年生になった青山学院初等部生たちは格段に難しくなったプログラミング授業に奮闘している。

2022年、秋――。
ついにオリジナルゲーム作りに挑戦することになった。

2021年(当時4年生の時)にも挑戦したオリジナルゲーム作りだが、昨年との違いは、グループ作業からペアで作業することになったこと。そして発表の方法も一工夫あるという。
2022年10月某日、5年梅組の授業桜組の授業の授業を取材した。
「2人で遊ぶ」というテーマに工夫が必要な今回の課題、初回は概ね良好に進んだ印象だ。
第1回目の授業終了後、2クラスを見学していた大学教育人間科学部教育学科教授・杉本卓先生と大学院生2名に話を聞いた。

インタビュー 教育学者目線で見るプログラミングの授業

──杉本先生、授業を見学した感想をお聞かせください。
杉本先生 どのペア(グループ)も1人だけが作業をしているということはなく、それぞれの関係性を上手く保ちながら作業していました。みんな自分なりにプログラムを作れるので、最初から2人で1つの物を作っていくというよりは、それぞれが作業しつつ、お互いの面白そうなところを共有して進めているようでした。
大人ですと最初から「どういうものをつくろうか」と言いがちですが、子ども達の場合、勝手に進めつつなんとなく収束していく、そのバラバラ具合が面白いなと思いました。
また、男の子の方が、動きが激しい物を好む傾向にあるのかと思っていたのですが、この点は特に男女差はないようでしたね。雷や怪獣などを目にして、男の子が突っ走るかと思ったのですが、意外と冷静でした。

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授業を見学中の杉本先生

 

──院生のお2人は今日のプログラミングの授業を見学されていかがでしたか?

院生Aさん わたし自身、Scratchを触ったことがある程度なのですが、最初に驚いたのが、Scratchを英語で行っていたことです。また、ゲームを作る一回目の授業にして、進み具合がすごく早かったのも印象的でした。今後、ここからどうやってブラッシュアップしていくのか気になりました。

杉本先生 確かにどういうペースで進めていくかは興味深いですね。

院生Aさん (改造の)ゴールがないので、どこにゴールを設定するのか。目標がどのくらい明確なのかも気になります。

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既にキャラクターのデザインを変更しているペア。画面のScratchは英語で表記されている。

 

院生Bさん 2時限連続で見学しましたが、クラスによる特色が出ていましたね。2クラス目の桜組は色々なキャラクターを取り入れ、さらに色も積極的に変更していました。あとは2クラスとも選ぶゲームに多少の偏りがあったことが気になりました。お題C(文字をずらしながら重ねていくゲーム)を選んでいるペアがほとんどいなかったのに比べ、ドラゴンを動かして戦わせるお題Aを選んでいるペアやグループが多く、この辺りに小学生らしさを感じました。恐らく周りにあるゲームが発想もとになっているのだろうなと思いました。
その他としては、プログラミングが出来る子の声が大きくなって先導していくのかと思っていたのですが、そういうことはありませんでした。他の子が理解できない意見は通らない。これは実際のプログラミングを使用する現場、つまりプロ集団がゲームを作る際も同じなのではないかと思いながら見ていました。今から小学生がプログラミングを学ぶ意義と言うか、特長が見られたのかなと思いました。

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──プログラミングの知識だけではなく、ということですね。
院生Bさん 授業では、それをいかに教えていくか、どう進めていくかが勉強になりました。これからの授業で、児童達がそれぞれの意見をどう交わらせ、進めていくのか、そのプロセスも興味深いですね。

杉本先生 やはり小学校でプログラミングを学ぶ意義はそこにあります。プログラミングの授業はプログラマーになるためのものではありません。もちろんプログラミング自体について学ぶことも大事ですが、考える力や協働すること、一緒に考えたり、作ったり、考えたことをまとめたり、発表したりと、今必要とされる力を伸ばすことが大切です。こういう力はどの教科の授業でも必要ですが、プログラミングというツールで具体的なものを作るほうが分かりやすく、力を伸ばせます。そしてその力は他の教科の授業の中でも活かされていくと思います。そこがこの授業の良いところですね。

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院生Bさん 話は変わるのですが、小学生は作りたいものが現実離れしていないなというのを感じました。

杉本先生 「ゲームを作りましょう」、「まずプランをしっかり作りましょう」と、バッチリ設計図を作るとなると無謀なプランが出てきやすいと思いますが、そこはふんわりとしていましたね。課題の与え方もそんなに明確じゃないというのが逆に良く効いているのだと思います。最初に示した5つのお題は、子ども達が全部理解できるし、作ることができるものです。それを与えて、アレンジさせようということなので、手を動かしながら、だんだんとこういうのを作ろうかなというのが出てくる。そういうデザインの仕方(授業構成)はあまり学校の他の授業では出てこないかもしれないですが、大事なプロセスですよね。

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──これからのプロセスや発表でどうなるか気になりますね。ありがとうございました。