人を幸せにするために、 人と向き合う〈卒業生・古田 貴之さん〉
2019/04/18
「ロボット・クリエイター」という、聞いただけでワクワクするような肩書きを持つ古田貴之さん。最先端の技術を開発し続け、福祉やエネルギー分野など、あらゆる産業から注目されています。ロボット技術を活かした数多くのビッグプロジェクトに取り組んでおり、多くの注目を集めた原子力災害対応用の水陸両用新型ロボットも、実は古田さんのチームによるものでした。その情熱はいつから、どのように育まれてきたのか。そして今、古田さんにはどんな未来が見えているのか。穏やかな表情に秘めた揺るぎないポリシーを伺いました。
──ロボットというと鉄腕アトムのような人間と同じ形をしたロボットを思い浮かべますが、そのようなものばかりではないのですか。
「人間型ロボット」って、改めて考えると不思議ですよね。人が何かに名前を付けるとき、普通はその機能性を表現します。「ワイヤレス」マイク、「携帯」電話など。でも「人間型」ロボットって、「形」しか表現していないんですよね。何をするものなのかを示していない。それはアニメーションやマンガなどで形からロボットを作ってしまったからです。
それが悪いというわけでは、もちろんありません。僕自身、ロボット技術に関心を持ったきっかけは、子どもの頃に見た「鉄腕アトム」なんです。その頃の夢は「巨大ロボットで世界制覇」(笑)。でも、人間に似た形だけ先に作ってどうするんでしょう。ロボットの本質は「感じて、考えて、動く」ことなんです。つまり「周囲の状況の認識」「考える人工知能」「動くための運動制御」。その機能の集大成の一つが、たまたま「人間型」なんです。ロボットは、人を幸せにするための「技術」にすぎません。
──「人を幸せにするための技術」ですか?
仕事の本質というのは、どんな職でも同じです。それは「人の心を動かすこと」。料理人は美味しい料理を作って人々を満足させる、スポーツ選手は素晴らしいプレーで観客を感動させる、学校の先生は愛ある教育で生徒たちを導く。それが、人を幸せにすることだと思っています。おそらく人間の文化や未来は、いろんな仕事が層を成して創り上げているんだと思います。僕はたまたまロボット技術が得意だった。だからそれを活かして、人々が不自由と思っていることを解決したい、豊かな社会づくりに貢献したいんです。