青山学院の四季彩-グリーンパーティーへようこそ- プロローグ【1】グリーン色の研究
2019/11/01
食べられるものと食べられないもの──
世の中のものは全て2種類に大別される。
常日頃から視点の全てが食に結びついている広報部員・聖(ひじり)は思った。
ここ青山学院の緑はどうなのかと。
1日に10万人以上の往来があると言われる渋谷のスクランブル交差点。
そこからわずか歩いて15分ほどの場所に青山学院はある。
おびただしい人の流れの中、ひとたび学校の門をくぐると緑が溢れている。
コンクリートの建物が林立する渋谷にあって、まさに都会のオアシスとも言うべき場所だ。
ここにある木々の知られざる姿が見たい。かつ、このアカデミックな場所に植わる木々は文学上でどう扱われているのか知りたい。
食物、いや植物へのあくなき好奇心から聖は、植物と文学に詳しい文学部英米文学科笹川渉先生と
そしてきゅうりを育てている中等部・緑信会のメンバーにコンタクトをとることにした。
あわよくば学内の緑を食べてみたい! という不純な動機をひた隠し、笹川先生に企画を説明するため、英米文学科合同研究室へと向かった。
ガウチャー・メモリアル・ホール。礼拝堂のある大学15号館、通称ガウチャー。
その9階に英米文学科の合同研究室はある。
ガチゴチに緊張しながら、英米文学科の合同研究室に入ると、笹川先生は既に待っていてくださった。
“雅やか”先生の印象はまさにそれだ。企画書を渡すと、優雅な笑みを浮かべた。
──文学の中で植物がよく扱われていますよね。
私が研究しているのはイギリス文学ですが、中世からイギリスの作家たちは植物を作品に描いてきました。
──おおっ、昔から植物は文学と関りがあるのですね。
そうですね。17世紀には科学革命が起きましたが、新たに発明された顕微鏡を使って植物を観察することで得られる驚きや、外国からもたらされる新しい草木が文学に登場します。
また19世紀のロマン派の時代になると、自然観が変化し、植物は作家に大きな想像力を与える役割を果たしてきました。
──“文学との関り”深いですね
ええ。切っても切り離せない関係といえます。神話や聖書に描かれる植物も無視できません。
四季の植物は人々の喜び、愛情、悲しみなどを代弁してくれるものとして使われてきたのです。
──なるほど……先生、突然ですが、グリーンパーティーのメンバーになっていただけませんか。
グリーンパーティーというのは何でしょうか。
──造語です。学内の緑を学内外に宣伝する組織で、中等部生と学内の緑や植物を見に行き、実際に目にしての感想をもらい、先生には植物をご解説いただければと思っています。ご協力いただけませんでしょうか。
できる限り協力しましょう。まずは学内の植物の名前を教えてください。
(リストを渡すと、笹川先生の真剣な目が光る)
なるほど、でもこの内容なら日文(日本文学科)の先生にも協力いただいた方が……。
──先生はグリーンパーティーのメンバーになっていただけないのでしょうか?
えっ(驚く)もっ、もちろん、協力しますよ。
(聖の強い圧を感じつつも、快くOKしてくださった笹川先生)
──ありがとうございます!
やるからには皆様に関心を持たれる内容を紹介できるようにしたいですね!!
──ありがとうございます!!!
(笹川先生は、いと典雅にほほ笑んだ)
調子(いや勢い)に乗った聖は、そのまま中等部へと向かった。(次回に続く)