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忘れ物問題をプログラミングで解決せよ~その③【プロプロ☆プログラミング~初等部プログラミング教室を追え~episode 5】

プロプロ☆プログラミングへようこそ

2021年度から本格的に始まった青山学院初等部のプログラミング教育。
2年間のプログラミング授業を経て大きく成長した青山学院初等部生たちは、
2023年最終学年6年生となり、ついに集大成とも言うべき課題に取り組むこととなった。

2023年10月から「忘れ物をなくす」アプリを開発するため、
「どんな忘れ物が多いのかについてとその対策について」
討議し、アプリにはどんな機能を持たせるか話し合いを続けてきた。
そして迎えた12月——この月にいよいよ発表が行われるのだが……

12月の初等部

12月初日の金曜日、寒い北風の吹く日だが、相変わらず初等部校舎の中は温かで
穏やかな空気に包まれている。中に入ってすぐのクリスマスツリーも優しい空気を醸す一つなのだろう。

 

コンピュータ室へ

授業直前、11時前にコンピュータ室に着くと、ちょうど6年桜組の児童達が入ってくるところだった。みな、外の寒さを感じさせない明るさと元気に溢れている。
授業が始まり挨拶を終えると、井村裕先生が口を開いた。
「この授業の最後に、作ったファイルは必ず保存してね。それから今日はできる限り開発をして欲しい」

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先生の発令と共に、クラス全員が椅子と机を動かし、寄せ合って話し合いを始めた。
タブレット端末には既に、Scratch(教育プログラミング言語)の画面やPowerPointの資料を表示させている。

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真剣にアプリ開発のためのプログラムを組み、発表資料を作る児童達。
それぞれの班に話を聞いてみた。

各班の様子

1班
「今はトライ&エラー。いえトライ&エラーエラーです」
そう語る1班はプログラミング作成に苦戦しているようだ。

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最終的には、「アレクサ(※音声認識サービス)が持ち物を聞いてくれるように、持ち物リストを画面上に作成します。ユーザーが画面上のリストにある物を鞄に入れていき、鞄に入れた物を入力するとリストから消える仕組み」を完成させたいという。
ところが今はかなり手こずっているらしく、話を聞いている最中にも他のメンバーが先生にプログラミングについての質問をしている。
「先生、この矢印をどうしたらいいですか」

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しかしパワーポイントの発表資料の作成はデザインにこだわり、ぬかりなく進めている。この班は明確に役割分担をしているというより、一つひとつの工程を全員で取り組んでいるようだ。

2班
「自分の部屋に(見立てたところに)持ち物リストを作成して、実際に持ち物リストの物が鞄に入っているか聞いてくれます」
と語る2班は2名ずつに分かれてプログラミング作成とパワーポイント作成を作業を進めている。話を聞いた時には、4人で1つの画面に集まってプログラムの確認をしているところだった。

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3班
「“時間割”と“今日の持ち物リスト”を表示させます」
パワーポイントの資料作成も、プログラミングもほぼ完成に近いのは3班。
「“今日の持ち物リスト”はチェック表になっていて、鞄の中にチェック表の物を入れたらリストから消える仕組みになっています」
プログラミングを見せながら説明してくれた。どこか表情にも余裕があるが、まだまだ完成度を高めていきたいという。

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4班
「持ち物と時間割を確認してくれるのが、キャラクターのネコなんです。背景にもこだわり、背景を花にしました」
そう語る4班は、プログラミングを2名が、パワーポイントの資料作成を2名が担当する。

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5班
「明日の用意で、忘れ物をしそうな物をリストに書いておきます」
そう話すのは5班だ。「画面上に現れるリストの物を実際にカバンの中に入れたら、画面上の物の絵が消えるようにする仕組みを考えています。画面上から絵が消えたら音も鳴るよう工夫していきたいです」
この班では、3名がプログラミングを、1名がパワーポイントの資料を作っている。

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6班
「忘れ物をしないためのアプリを考え中です」
画面上に現れるキャラクターを見せてくれたのは6班。自分に見立てたキャラクターをアバターとして登場させているという。
話を聞いた時は、背景の色の設定など細部についての話し合いを進めている最中で、今は4人全員がプログラミングを行っている。

7班
「忘れ物アプリについて、3つの理想の機能を考えました。でもまだこの資料に書いてある機能は理想の形。なので開発はこれから進めます」

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この班は、2名がプログラミングを担当しており、1名がキャラクターデザイン、そしてもう1名がパワーポイントの資料を担当し作業を進めている。

8班
「必要な持ち物を(実際に)準備したら、リストにチェックが出来るように開発中です。ポイントは忘れ物リストを確認してくれるキャラクターを好きなキャラクターに変えられるところと、途中でセーブ(保存)できるところです」

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ビビッドな色を使ったキャラクターが並び、ユーザーである児童の部屋を模したデザインやキャラクターのデザインにもこだわりが見られる。この班は、2名がプログラミングを、1名が、キャラクターデザインを、そして1名がパワーポイントの資料を担当し、話し合いをしながら完成度を高めている。

授業が進んでいくと、持ち物リストを作成するための時間割を探す班や、作ったプログラムが動くか試す班など、どの班も授業時間をめいっぱい利用して試行錯誤している。

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授業開始から38分経ち井村先生が、
「作業はここまで」
と声をかけた。
「今日の時点でのファイルを保存して。それから再来週までにちゃんと提出してください。それでは授業を終えるよ」
その声に、児童達が素早く動く。あっという間に机と椅子を元の配置に戻した。

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すぐに次の授業があるらしく、児童達はタブレットなどを手早く片付けるとコンピュータ室から出ていった。
その後、井村先生に声をかけると、
「実は再来週が発表なんです」
と教えてくれた。まだまだ時間がかかる班もありそうだが……苦戦していたいくつかの班が頭をよぎる。果たして再来週の発表は?

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