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放課後819倶楽部【第7回】添削!

説明しよう!

放課後819(ハチイチキュー)倶楽部とは——
俳句を1から楽しく学ぶことをコンセプトに立ち上がったwebサイト上の倶楽部である。

紹介しよう!

倶楽部員は2人。

顧問は青山学院中等部の国語科教諭、林謙二先生。
第5回の倶楽部活動の様子をここに報告しよう。
(なお、倶楽部活動はリアルと仮想の両方で行われる。)

中七は七音で

林先生 放課後819倶楽部第7回の倶楽部活動を始めます。今日は前回の句会の句を添削していきます。そして今回も引き続き、広報部からも3人、ご参加いただきます

広報部 よろしくお願いしますっ

林先生 これが、前回句会で出された俳句だった

819倶楽部
林先生 それでは1番の句から見ていこう
横顔をほんのり彩る花火かな

──湘


林先生 二人並んで花火を見ていて、ふっと横を向いたら、横顔に花火の色が映ってる、花火を二人で見ている光景が鮮やかに描かれた句だ。
情景は鮮やかに詠めているけど、ちょっとした問題点がある。はんなさん、さとはさん、わかるかな?
はんな 中七……かな

林先生 中七。そう。実は音数を数えると五八五になっているんです

うわ、気づきませんでした。そうですね(苦笑)

林先生 中七の部分は七音で収めたい。短歌は字余りや字足らずがかなり許されているところがある。でも、俳句は基本的には許されない。特に、中七が緩くなってしまうとどうしても締まりがなくなってしまうので、中七はしっかり音数を意識しよう

先生、どうして短歌だと字余りとか字足らずが許されるのでしょうか

林先生 短歌は「五七五七七」と、五句から成っているので、途中で字余りになっても最後で挽回できるというか、リズムをもう一度取り戻せる。一方、俳句は「五七五」で三句しかないので、途中で字余りになってしまうと、そこでリズムが崩れてしまって、崩れた状態で終わってしまう

なるほど

林先生 そこで「推敲」という作業が出てくる。句のイメージをもう一度細かく見ていって、リズムをしっかり整えていく。それでは湘さん、意味を変えないで七音に変えるにはどうしたらいいでしょうか?

難しい……
林先生 では、他のみなさんも含めて、こんな風に変えたらいいんじゃないかという提案、ありますか? 「彩る」は、なかなかそれに代わる言葉はないので残して、「ほんのり」を三字、三音の言葉に直すとなると……
はんな 「淡く」とか?
素晴らしいです、ありがとうございます!

林先生 実は結論から言うと、わたしが考えていたのも「淡く」なんです

はんなさん、すごいっ

はんな やった

漢字かひらがなか

林先生 「ほんのり」と「淡く」は、意味もイメージもそんなに変わらないですよね。だからこれは「淡く」がいいかなと思います。そしてもう一つ考えたいのは、漢字の「淡く」にするか、ひらがなにするか。ひらがなにする場合は、「わ」は歴史的仮名遣いで「は」と表記するので「あはく」になるかな。だから、意味をとりやすくするには漢字の方がいいかもしれない

(ボソッ)ひらがなか漢字か、か……

林先生 漢字で書くかひらがなで書くかというのは俳句の世界ではすごく重要なんです。というのは、俳句は十七音で勝負する文学なのでちょっとしたことでも全部が武器になる。例えば、今回の句は季語を「花火」にしたけど、4番だけ「てはなび」とひらがなで書いている。ひらがなで書く「はなび」と、漢字で書く「花火」って、ちょっとイメージが変わった気がしませんか?

はいっ
林先生 どういうイメージの違いがありますか? 今「はい」と答えた聖さん
「手花火」と漢字で書く方が勢いがあって華やかな花火のイメージ。「てはなび」とひらがなで書くと、火花があまり散らない、例えば線香花火のようなものをイメージします
林先生 はんなさんは今聞きながら「うんうん」って言ってたけど、どう?
はんな 確かに、漢字の「手花火」はばーんと派手な、豪華なイメージなんですけど、ひらがなの「てはなび」はやわらかいイメージがします
林先生 そうだね。ひらがなはやわらかさや軽さを表すことができる。漢字はひらがなに対してちょっと硬い感じや強い感じもしくは重さを表せる。そのことをよく教えてくれるのが、飯田蛇笏(いいだ だこつ)のこの句

をりとりてはらりとおもきすすきかな

──飯田蛇笏

 

林先生 実は飯田蛇笏は最初、この句を漢字で書いていた。こんな感じに

折り取りてはらりと重き薄かな

──飯田蛇笏、推敲中

 

漢字で書くと全然イメージが変わりますね。だこッさん、最終的に全部ひらがなにしたんですよね? なぜですか
林先生 だ、だこッさん? (まあいいか……)あるのかないのかわからないような、すすきの重さを、ひらがなで表わしたんだ。すすきって重みがあまりなく、とても軽いものだから
819倶楽部

林先生 でも、すすきを持ったときに、確かに重みがあるな、と作者は感じた。その重みと、命、生きている重み、「今まで生きてきた」という重みを表そうとしていると鑑賞できる。その上で全てひらがなで書くことで軽さを出した

なるほど

林先生  飯田蛇笏のように漢字で書いた方がいいか、それともひらがなで書いた方がいいか考えると良い。「淡く」に関しては、ひらがなで「あはく」だとちょっとすっと入ってこないかな。すっと入ってくるためには漢字で「淡く」と書いた方がいいだろうなと思います。「彩る」についても、ひらがなで「いろどる」がいいのか、それとも漢字の「彩る」の方がいいのかは考えどころだ。わたしは漢字の方がいいと思う。「彩っている」という華やかさを見せるには、漢字の方がわかりやすい気がする
横顔を淡く彩る花火かな

──湘(推敲後)


 

ありがとうございました。字余りという、初歩的なところでつまづいてしまい、すみませんでした
林先生 いえ、表現は素晴らしいので、音数を整えればよいと思います
“ひらがな”or“漢字”?
  • 同じ言葉でも“ひらがな”か“漢字”かでイメージが変わる(自分の表現したいイメージに合わせてうまく使い分けよう)
  • “漢字”は硬い感じや強い感じ、もしくは重さを表現することができる
  • “ひらがな”は柔らかさや軽さを表現することができる
  • “ひらがな”で書く場合は歴史的仮名遣いで書くことが多い
  • “漢字”か“ひらがな”かは、17音を構成する武器としてこだわる

 

ダメではない。でも、もったいない「季重なり」

林先生 さて、実はもう一つ、ちょっと問題というかもったいないなというのが4番の句です。
てはなびの煙消え去り星涼し

──G


 

林先生 花火が終わってすーっと煙が消えたところで、星が見えた、
そんな様子や時間の経過を詠んだ句だ。でも問題がある。さとはさん、はんなさん何かわかるかな?
はんな 「星涼し」が季語とか?
林先生 ポイントをついているね。実は「星涼し」も夏の季語。だから、「てはなび」という夏の季語と「星涼し」という夏の季語、二つ季語を使ってしまっている。これを「季重なり」と言い、これは俳句の中ではもったいない状態なんだ
さとは つまりダメってことでしょうか
林先生 絶対にダメというわけではない。季語は一つで十分だから、一つの季語を中心に、もっと別の表現が入れられるんじゃないかと考える
はんな どうしても季語を二つ入れたい時はどうしたらいいでしょうか
林先生 その場合は、片方の季語を中心にして詠んでいるとはっきりわかるように作る。この句で言うと、先ほど説明したように「てはなび」がひらがなで書いてあるので、インパクトがすごく弱い。たぶんこの句をぱっと見た時、どちらかというと「星涼し」の方が中心になってしまう
G はい……
林先生 星がぱーっと見えて、ああ涼しいなと感じたわけだから、そっちの方に感動の中心がいってしまう
それはそれで綺麗な情景ですが……
林先生 確かにそうですね。でも今回は「花火」というテーマだったので、そういう意味では残念ながら(テーマから)外れてしまう。では、この句をどう変えていけば季重なりにならないか……
G どこを変えたらいいでしょうか
林先生 そうですね。「煙消え去り」が、すべてを言い切ってしまっていて、やや説明し過ぎなので、ここを変えていきましょう。煙がなくなって、星の輝きが見えたということですので「終わって」という意味の「果てて」を使って「てはなびの果てて輝く……「何とかの星」にするのはどうでしょうか
G 何とかの星?
林先生 ここに「夏の星」と入れて詠んでしまうと、「ああやっぱり夏の星を詠みたいのね」となるので、何か具体的な星の名前にしたい。(はんなさんとさとはさんを見つつ)夏の星座の代表的なものって何かある?
はんな さそり座
林先生 さそり座か。さ・そ・り・ざ……四音だ。五音のがいいな
はんな 他はこと座……
さとは こと座、はくちょう座、わし座
はんな 夏の大三角形だね
林先生 はくちょう座か……はくちょう座! いいかもしれない
林先生 「てはなびの果てて輝くはくちょう座」とすると、より星が具体的に見えてくるし、いいね
広報部 かっこいいっ
林先生 さとはさん、はんなさん、二人ともナイスフォローだ
さとは ちなみに「はくちょう座」はひらがなですか?
林先生 どっちがいい?
さとは ひらがなかな
林先生 ひらがなの方が優しい感じがする。でも漢字で書いて、ピシッとさせるのもありだ。すっきり見えたという感じを出したいのなら、漢字で「白鳥座」かな。どちらでもいいと思います
G ひらがながいいです
てはなびの果てて輝くはくちょう座

──G(推敲後)


 

「~は」は避ける

林先生 次は、点がたくさん入った句
宝石のかけら散らすは花火かな

──聖


 

林先生 意味としてはみんなちゃんと受け取ってるし、共感されているので、この句はこの句でOKです
やったー
林先生 ですが、すごく気になるのは「~は」という部分。生徒たちに俳句を作らせても必ず出てくるのですが、「~は」は理屈っぽい印象を与える。もっと言い切ってしまいましょう
宝石のかけらを散らす花火かな

──聖(推敲後)


 

おぉっ、より鮮やかな印象になりました。ありがとうございました

単語は分かりやすく、表現は説明しすぎない

林先生 次は3番の句
手花火と共に咲きたる夢話

──さとは


 

林先生 言いたいことはすごくよくわかる。ただ、少し違和感があるのは「夢話」という最後の五音。きっと夢の話なのだとわかるけど、日常的な単語ではない。だからあんまり無理に造語せず、他の表現にするといい

さとは はい

林先生 それから「手花火と共に咲きたる」というのも、やや言い過ぎかな。手花火がぱーんと散っている、咲いている、というのと、話に花が咲いたっていうので、手の内を全部明かしてしまっている感じがする。そこはむしろ隠して相手に感じ取らせる
難しい……

林先生 「花火のように話が盛り上がったんだな」「楽しそうにしているんだな」というのを感じ取らせた方がいい。だから「咲きたる」の表現はもったいないからやめよう。この夢話というのは将来の夢を話しているということだった

さとは はい、みんなで将来の夢を語っているところをイメージしました

林先生 複数の人間がいるとするならば、「手花火や」で切ろう。「や」という切れ字を使って

キレ爺?

林先生 「切れ字」です。切れ字の話を詳しくすると、それだけで1~2時間かかってしまうので、ここでは簡単に説明します
切れ字
  • 切れ字のついている語句を強調し、焦点を当てることができる
  • 一度、句を切ることで、カメラワークを切り替える効果がある(視点が変わる)

 

林先生 「手花火や」と最初の上五では花火の様子、手花火のぱちぱちぱちぱちといってる様子に焦点が合ってる。その手元の花火を映していたのが、「や」という切れ字で切れることで、場面がぱっと切り替わる。で、切り替わったときに何が映っているのかというと、二人で将来の夢を語り合ってるという場面。とするならば
手花火や将来の夢語り合ひ

──さとは(推敲後)


 

林先生 どうですか?言ってる内容は合ってる?

さとは はい、合ってます

林先生 わかりにくいところをわかりやすくする。逆にわかりやすくし過ぎてしまってるところを省略するといい。これも俳句を詠むときのポイントのひとつだ

より高みを目指して

林先生 さあ、それでは、最後の句をみてみよう
手花火や腕振り走る宵の竜

──はんな


 

林先生 これは切れ字の「や」を使っている。ただ、この句の場合は逆に「や」を使うことによってややわかりにくくなってしまっている。手花火をしている、それが宵の竜が見えた、とするのであれば、「や」という切れ字ではなくて、ストレートに「手花火を」にしてしまう

はんな はい

林先生 それから、「腕振り走る」も、単語をぎゅっと詰めて無理やり言っているような感じがするので、もう少しゆるやかに

手花火を振りて走りて宵の竜

──はんな(推敲1)


 

林先生 もしくは下五を「竜となす」として、「手花火を竜のようにするんだ」と自分が動いてる様子を(表す)
手花火を振りて走りて竜となす

──はんな(推敲2)


 

林先生 手花火をしている時間と言えば、夜なので、「宵」は要らないよね。「夜」というのは、分かるからとる
はんな はい
林先生 実は、他の先生からは「自分が竜になった」という風にするともっといいかもしれないと提案をいただいたんだ
はんな 自分が竜になったですか……
あの~そのまんま「竜となす」を「竜になる」にしてはダメなんですよね……?
林先生 なるほど。でも「竜になる」が現代仮名遣いだから、その場合は全て現代仮名遣いにして
手花火を振って走って竜になる

──はんな(推敲3)


 

林先生 こんな感じでいいでしょうか? はんなさん、これで納得?
はんな はい

まとめ

林先生 あーよかった。一応納得してもらえて(笑)。通常の句会では必ず推敲するわけではないですが、今回は勉強のために行いました。(生徒たち)二人は句会は経験済みですけれども、広報部のみなさんはいかがでしたか?初めての句会は
勉強になります
林先生 (笑)
結構ドキドキしますね。そして、みなさんが考えた句を読むのもすごくおもしろいと思いました。それから意外と内容がかぶらないものなんだなと思いました
林先生 そうですか? 読みながら、「ああ、かぶったな」と思ったのは、Gさん(4番)の句とわたし(6番)の句でした。どこがかと言うと、花火が終わった後を詠んでいる点。でも、詠んでいる内容や感覚は全然違う。手花火の句が三つでてきましたが、内容的に全然かぶってはいない

G 確かに

林先生 はんなさんが大事にしたいと言っていたのは、目で見た色だったよね。まさに、色というか、その光景、見えてるものを詠んでくれた

はんな はい
林先生 それから、さとはさんは、そこにある感情や気持ちを丁寧に詠みたいって言っていた。今回の句ではその場に出てきている人たちの気持ち、感情というのを上手く詠んでる
さとは はい

林先生 自分たちが詠みたいものを句で表現できているのではないかと思います

G 素晴らしい。句会って本当にいいものですねぇ

林先生 そうなんです。深層心理の中で誰しも自分を表現したいという気持ちを持っているものです。でも表立って自分を表現するのはちょっと恥ずかしい。句会では、上手く「表現したい気持ち」を引き出せたのではないかと思っています。(さとはさんとはんなさんを見つつ)そんな感じしない?

さとは

はんな

林先生 うっ、そんな感じしないね。しないんだね(泣)

さとは でも知らない間に自己表現をしたくなってるかも

林先生 知らない間にね……

はんな やっぱり句会は楽しいです

さとは 点が入っても入らなくても楽しい

林先生 でも点が入らなかったら入らなかったで、本当に悔しくて、次は何とかしてやるぞって気持ちにもなるもの。これからもどんどん俳句を詠んでいってください

はんな 先生、俳句、とっても楽しいので、これからも倶楽部活動ができたらいいなって思うのですが
さとは えっ!? 今日で最後の予定だったんですか?
林先生 青山俳壇(締切9月2日)を目指す、期間限定の倶楽部活動の予定だったから、最後くらいかな、と思ってたんだけど……

はんな 続けてください

さとは 続けてください

林先生 よし、じゃあ2学期からは応用編をスタートさせよう

さとは はい

はんな ありがとうございます
今回のまとめ
  • 中七は必ず七音に収めよう
  • 漢字かひらがなかで受ける印象が違うので、こだわる
  • 切れ字を使うことで語句の強調やカメラワーク(視点)を変えることができる
  • 語句は分かりやすく、表現は説明しすぎない
  • 読み手に想像させる部分、情景をわかりやすく伝える部分を句の中でうまく使い分ける

 

【次回へ続く】