説明しよう!
放課後819(ハチイチキュー)倶楽部とは——
俳句を1から楽しく学ぶことをコンセプトに立ち上がったwebサイト上の倶楽部である。
紹介しよう!
倶楽部員は2人。
顧問は青山学院中等部の国語科教諭、林謙二先生。
第5回の倶楽部活動の様子をここに報告しよう。
(なお、倶楽部活動はリアルと仮想の両方で行われる。)
選句はセンス
林先生
放課後819倶楽部第6回の倶楽部活動を始めます。今日は、句会を行いますが、今日の句会のため広報部からも3人、ご参加いただきます
湘
広報部の湘(しょう)と申します、よろしくお願いします
聖
同じく広報部の聖(ひじり)です。よろしくお願いします
G
G(じー)です。よろしくお願いします
林先生
(プリントを配布しながら)それでは早速句会を始めよう。ここに6つの句があります
湘
あれっ、6句ある? それに作者名は書いてないんですね
林先生
わたしの句も入っていますので6句あります。それから句会は最後まで作者の名前は伏せた状態で行います。俳句界は一切忖度のない世界なので
聖
良いですね~そういうバチバチ感。燃えてきました!
林先生
それでは、みなさん、1番から6番までの句を見て、自分の句以外で「いいな」と思う句を2句選んでください。特にルールはありません。ただ、よく言われるのは「選句はセンス」。いいなと思う感覚は人それぞれだから、自分の感覚で「いいな」「素敵だな」と思う句を選んでみてください。漢字の読みについて、読めないなというのがあれば教えてください
さとは
うーん。先生、これ……
林先生
どうした?
さとは
2番のって、よいのタツ?
林先生
よいのりゅう(宵の竜)でいいんじゃないかな。「宵」っていうのは「夜」って意味だ。あとは大丈夫か? 6番の「まなうら(眼裏)」って難しい単語だけど、まぶたの裏を表すんだ。それじゃあそれぞれ選んでください
林先生
はい。そろそろよろしいですか? みなさん句は選びましたか? では選んだ句を2句ずつ、それぞれ発表してもらいます。それでは819倶楽部の2人。君たちは既に授業で句会を経験していて、初めてじゃないから、倶楽部生から発表してもらおう。じゃあ、さとはさんから
さとは
2番で、「手花火や腕振り走る宵の竜」。5番で、「宝石のかけら散らすは花火かな」
はんな
5番「宝石のかけら散らすは花火かな」、6番「眼裏も耳も奪ひて花火果つ」
林先生
では次、広報部の湘さん
湘
3番で「手花火と共に咲きたる夢話」と、5番「宝石のかけら散らすは花火かな」
林先生
はい。広報部の聖さんは?
聖
1番で「横顔をほんのり彩る花火かな」。4番で「てはなびの煙消え去り星涼し」
林先生
はい。じゃあGさん?
G
3番の「手花火と共に咲きたる夢話」、5番の「宝石のかけら散らすは花火かな」でよろしくお願いします
林先生
わたし自身は、1番「横顔をほんのり彩る花火かな」。それから、2番「手花火や腕振り走る宵の竜」。
さて、全員、2句選び終えましたが、名前はまだ明かしません。それぞれに、なぜ選んだのかという理由や感想を聞いていきます
わたしがこの句を好きな理由
林先生
では、点が一番多く入った5番の句から聞いていきましょう。「宝石のかけら散らすは花火かな」。4人選んでいます。5番を選んだ、さとはさん、この句を選んだ理由や感想を聞かせて
さとは
花火が上がった後のバッて落ちる感じが宝石みたいできれいだなってことを言ってるのかなと思って、その例えとか、情景が浮かびやすくて。すっと入ってきました
林先生
すっと入ってきた、はい。湘さんはいかがですか?
湘
私も花火の散った火花がキラキラしている様子が浮かんで、夜空とのコントラストがすごくキレイだなと思って、この句を選びました
林先生
おっしゃっている通りですね。パッと散った状態が、宝石が散る、まあ宝石が散る光景ってあまり見ることないと思いますけど、輝いてるものがばーっと散ったというのを、花火が散ったというのと上手くかぶせて光景を詠んでいるんじゃないかなと思います。はい、ではこの句の作者どなたでしょうか。作者を明かします。どなたでしょう?
聖
あっ、これって、名乗り出るんですか? えっ、あっ、はいっ。えっと……私です
林先生
はい、聖さんの句ですね。こんな風に誰が作ったのかというのを明かしていきます。「名乗り」と言って、名前を大きな声で言います。なんで名前を大きな声で言うかというと、「ありがとうございました。私が作った句です」と感謝を伝えるためです。それでは続いて2点入った句が数句ありますので、まずは1番からみていきましょう。「横顔をほんのり彩る花火かな」。聖さん、選ばれていましたね。この句はいかがでしょうか。
聖
花火の情景がすごくよく出ていて、花火をしたり見たりしている時に、顔に花火の色が映っている様子がすごく生き生きと描写されていていいなと思いました
林先生
わたしもこの句を選びました。「横顔を」というので、横顔が見えるということは、二人並んで花火を見ている。並んで見ているのは彼女かもしれないし、彼氏かもしれないけど、ふっと横を向いた時に、その子の横顔にすっと花火の色が映ってるのが見えたという、二人の光景が見えてきますね
林先生
さて、この句の作者はどなたでしょう
湘
はい、わたしです
林先生
湘さんでしたね。では同じく2点の句です。「手花火や腕振り走る宵の竜」。さとはさん、どう
さとは
これは、手花火だからこそある勢いの良さとか、元気の良さとかが出てるいい句だなって思いました
林先生
うんうん。小さい頃にこんな思い出がある人も多いと思う。花火を持った手を回したり、持ったまま走ったり。すると、夜闇の中でまるで竜のように見えたという句だね。共感できる光景、経験だと思う。はい、では作者は?
はんな
はい、わたしです
林先生
はんなさんの句でしたね。では次、3番の「手花火と共に咲きたる夢話」。湘さんいかがでしょう?
湘
手花火を持って円になっている様子を私は思い浮かべたのですが、そこで楽しく話に花が咲いているのと、花火がぱっと咲いているのと、そこが掛かっているのがすごくいいなと思いました。光景が目に浮かぶのが素敵だと思って選びました
林先生
そうですね。手花火を、これも複数人でやっている、もしかしたら二人かもしれないけど、そこでいろんな話をしている。夢の話だから、将来の夢を語っているのかな。みなさんはどちらで感じました?将来の夢? それとも夜にみる夢? どちらでしょう
はんな
将来の夢の話だと思いました
林先生
そうか、将来の夢の話か。二人だったら二人の将来のこととか
はんな
一緒に遊びに行こうよ、とか。そんな話かなと思いました。
林先生
そっちの方がいいな。それでは、作者はどちらでしょう
さとは
はい
林先生
はい、さとはさんでしたね。あとは一点句です。4番。「てはなびの煙消え去り星涼し」。聖さんが選びましたが、いかがですか?
聖
花火が終わった後に夜の暗さとか星の明るさとかをすごく感じることがあるのですが、その感じがすごくよく出ていていいなと思いました
林先生
そうですね。手花火ってすごく煙が出ますよね。花火が終わり、煙がすーっと消えたところで、星が見えた。煙で覆われて見えなかった星が、花火が終わって見えてきたということを詠んでいる句でしょう。花火はぱっと開いている時だけではなくて、終わった時の様子も花火の様子の一つなので、そこを上手く捉えていますね。はい、作者は?
G
はいっ
林先生
はい、Gさんでしたね。ということで、6番はわたしの句でした。「眼裏も耳も奪ひて花火果つ」。はんなさん、どうですか? この句は
はんな
とても共感したというか、確かに、と思いました。花火が打ち上がると、ぐっと花火のことしか思えなくなって、聞くことも見ることも花火に集中しちゃって、花火が終わった後も光の感じとかが脳裏に焼き付いているというか。そういうところも、確かになあと読み取りました
林先生
ありがとう。その通りだよ。句会はこんな風に行います。今回は人数が少ないので、選んだ方々に「選んだ句はどうでしたか?」という風に聞きました。ちなみに場合によっては「なぜこの句を選ばなかったのですか?」という風に聞くこともあります
聖
答え方が難しそうですね
林先生
「選ぼうと思ったのですが、他の句が良すぎて」とか色々と答えます。ところで、みなさん「自分が作ったイメージと、今のコメントの内容とが、ちょっと違うんだけどな……」という方はいましたか? 自分が作った時に込めた想いが、ストレートに伝わっていましたか? (頷いたのを見て)大丈夫? では良かった。第3回の819倶楽部で言ったように「自句自解をしない」という原則があるので俳句は作って発表したら、もうその句について基本的には「こういうつもりで作ったんですよ」ということはあまり言いません。
さとはさんとはんなさんに関しては、俳句を授業でも勉強してきたので、進歩が見られたなと感じました。そして(広報部の)三人は、ほぼほぼ初めての割には良かったと思います
広報部
良かったー
林先生
まだ喜ぶのは早いですよ! もっと俳句が良くなるよう、磨きをかけるため、次回は推敲を行います
今回のまとめ
- 選句はセンス(でも自分が良いと思った句を自信をもって選ぼう!)
- 句会は作者の名前を伏せた状態で行う
- 名乗りでは、大声で自分の名前を名乗り、鑑賞してくれた人へ感謝を伝える
【次回へ続く】