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オリジナルゲーム作り~スペシャル【プロプロ☆プログラミング~初等部プログラミング教室を追え~special episode】

プロプロ☆プログラミングへようこそ

2021年から本格的に始まった青山学院初等部のプログラミング教育。
2022年、5年生になった青山学院初等部生たちは格段に難しくなったプログラミング授業に奮闘していた。
そんな中——。

特別なプログラム

「特別なプログラムを用意しています」
そう井村裕先生から連絡を受けたのは、まだ1月の寒さに凍えるような頃だった。
3月、桜のつぼみが開き始めたその日——遂に「特別なプログラム」が行われる日がやってきた。

休み時間真っ只中の校庭では、春らしい陽光の中、児童たちが駆け回って遊んでいる。
この日は5年生全学年の合同授業で、会場となるのが初等部礼拝堂だという。校庭や校舎を優しく見守るように建てられている礼拝堂。その木製のドアを開けると、光あふれる祭壇、銀色に輝くパイプオルガンが目に飛び込んでくる。その中を、10名ほどの大人たちが忙しそうに動いている。
説教台にはパソコンが置かれ、左右に置かれた祭壇上の大きなモニターには鮮やかなゲーム動画が映し出され音楽が華やかに響いている。見れば後方にカメラも設置されている。
休み時間が終わる少し前、5年生の子どもたちがやってきた。いつもより心なしか大人しく見えるのは、ブレザーを着ているせいだろうか。

しかし見知らぬ大人が多くても物おじしないのは相変わらずで、初見の大人にも元気よく挨拶をしている。

プロプロ

初等部礼拝堂での授業

 

授業開始!

10時50分、
みんなが席に着くと、井村先生がマイクを取った。
「2学期に2人で楽しめるゲーム作品を作ったこと、みんな覚えている? あれは、ただ単純にゲーム作品のプログラミングが出来るようになって欲しかったわけではなく、みんなで一緒に考え、どういう風にしたらいいか、どういう風に発表したらいいか等を体験しながら学んで欲しかったからです」

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井村先生

 

 
「今日は、みんなと同じことを、実際にお仕事でゲームを作っているプロの人たちが作ったらどうなるのか? それを実際に見てもらいます。この授業を通して、こんなことまで出来るんだって知って欲しいし、物事ってこういう風に考えたら良いんだと学んで欲しくて、今日の特別授業を用意しました」

 

自分達(小学生)と同じ材料で、プロがゲームを作ったらどうなるか! 

 

今日の授業のテーマが発表されると、子どもたちは水を打ったようになったが、目だけは面白そうに動いている。
プロがゲームを作ったらどうなるの? その答えを早く見たい! 知りたい!!
と全身で叫んでいるようだ。

次に株式会社CA Tech Kids(初等部と協定を結びプログラミング授業のカリキュラム開発を行っている会社)の教材開発者の松倉健悟(まつくらけんご)さんがマイクを握った。
「今日は“プロから学ぶ! チームで進めるユーザーファーストなモノづくり”というテーマで授業を行います。2学期に用意した簡単なゲームを、2人で楽しめるように、というテーマで皆さんに改造してもらったと思います。今回は、その同じ改造をプロのクリエイターの人達に行ってもらいました。2人で楽しめるようにするため、どう考え、どう実現したのか、物作りのプロの考え方をみなさんに学んでいただければと思っています」

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CA Tech Kidsの松倉健悟さん

 

「それではまずクリエイターを紹介します。全員、サイバーエージェントというIT企業でゲームづくりをしているプロクリエイターの方々です。キャラクターデザイン担当の山田さん、ロゴ・UIデザイン担当の今福さん、エフェクトデザイン担当の村上さん、プログラム作成担当の長谷部さんと菅家さん、サウンド担当のクランキーさん、そして企画担当の児玉さんです。今日の授業の最後には質問コーナーも設けています。プロの方たちから話を聞けるチャンスは滅多にないと思うので、疑問に思ったことは是非質問してください。それではここからは、メインで児玉さんにお話をしてもらいます」
松倉さんに促され、児玉真佑さんが壇上に登った。

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企画担当の児玉さん

 

児玉さんは、「まずはどんなゲーム作品を作ったか、実際に紹介する動画を見てください」
と言い、モニター画面を切り替えた。
するとゲーム作品を紹介する動画がモニター画面いっぱいに映し出された。
ワクワクするような音楽と共に画面にはカラフルでポップな色のキャラクターが現れた。
「わたしの名前はレッドパレット! 赤っぽいものは何でも破壊できるわ」
「俺はブルーパレット! 青っぽいものは何でも破壊できるぜ」
ネイビーブルーの宇宙空間を背景に、ピンクとブルーのキャラクターが画面中を大暴れする。
その名も、
ツインパレットシューターズ

 

いわゆるシューティングゲームだが、効果音や音楽が効いていて、気持ちが高まる。綿菓子のようなカラフルなロゴも魅力的だ。
とにかく、今すぐにでも遊んでみたくなる。
そう思ったのは、子どもたちも同じらしく、みなまばたきを忘れて食い入るように見つめている。
「すごい」
思わず、つぶやく子さえいる。

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紹介動画が終わると、目が覚めるような拍手がわき起こった。

児玉さんが再び、口を開いた。
「僕たちはツインパレットシューターズというゲーム作品を作りました。今から、そのツインパレットシューターズがどんなゲーム作品か紹介していきます」

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内容が説明された。

ツインパレットシューターズについて
  • 二人でたくさんのUFOを破壊して、賞金を稼ぐシューティングゲーム
  • ロケット(プレーヤー)は上下左右ボタンで動かし、攻撃ボタンで弾を発射します
  • ルール:自分のロケット(プレーヤー)と同じ色のUFOしか破壊できません。

 

そしてこだわりポイントは?

こだわりポイント
  • ロケット(プレーヤー)がUFOや壁に当たると賞金額が下がってしまいます。2人で楽しく遊べるように、自分のロケット(プレーヤー)と同じ色のUFOしか破壊できないようにしました。
  • 飽きさせないため、様々なUFOを用意しています。(普通のUFO、2人が弾を当てないと破壊できないUFO、破壊はできないが、避けなければいけないUFO)
  • 最初は簡単なゲームにしていますが、徐々に難しくなるようにして、ロケット(プレーヤー)の気持ちを盛り上げるようにしました。

 

モニターに映るスライド(パワーポイント)を見つめ、呼吸を忘れたように説明に聞き入っていた児童たちに井村先生が口を開く。
「ゲーム作品の説明のスライド(パワーポイント)はみんなが作ったゲーム作品の説明の時と同じスライド(パワーポイント)の流れと枚数で説明しているんだよ」
児童たちから息をのむ声が聞こえた。続いて松倉さんが、
「みんな、外観がすご過ぎて忘れているかもしれないけど、これもScratchで作っています」
すると、怒涛のようなざわめきが沸き起こった。
全く信じられないというような顔つきだ。
ゲーム作品のデモンストレーションでは、もうみな、食い入るように見つめている。
最後に
「面白そうだった?」
という児玉さんの質問に児童たちは満面の笑顔で頷いた。

ゲーム作品紹介の後、
「遊んでくれる人の気持ちを考えたゲームの作り方について学ぼう!」
と題し、児玉さんがゲーム作品の作り方について説明を始めた。

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完成度の高い、まるで市販されているようなゲームは、もちろん1人では作ることができない。
今回のゲーム作品も、デザインの才能、プログラムの才能、サウンドの才能、企画の才能——クリエイター1人ひとりが持つ様々な才能を持ち寄ってチームでゲームを作ったという。

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チームを組んでゲームを作るときの流れ

 

 

最初に企画担当の児玉さんは具体的にどう企画していったのか?
「どんなゲーム作品にするか考えた」
という。
「とにかくここ(企画段階)で面白くなければ、すべて面白くなくなる」
というから、まさに責任重大な作業だ。
そんな重圧の中、特に児玉さんが重視したのが
「遊んでくれる人のことを考えて企画すること」。
相手(ユーザー/お客さん)のことを考えるのはどんな仕事においても大切だと語る。頷く子どもたちの顔も真剣そのものだ。

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考え方のコツとして、テーマである「2人で遊べる」というのはどういうことか掘り下げた。その結果、「2人で遊べる」には2つの方法があることにたどり着いたという。

  1. 2人が競って遊ぶ。→どちらかが勝って、どちらかが負ける。
  2. 2人で協力して遊ぶ。→2人とも勝つ。あるいは2人とも負ける。

 

この方法のどちらか1つを選ぶ際、考えたのが、「遊んでくれる人」のこと。今回のユーザーは小学生。だからどちらかが負けるゲームより、協力して遊ぶゲームが良いと思った。
その後、「2人で協力するのは、どんな時か」を想像し、2人のプレーヤーが喜ぶ姿、ゲームで盛り上がる姿を想像しながら、いろいろなゲーム形態を検討したという。

  • パズル
  • アクション
  • クイズ
  • シューティング

 

「この中から、最終的にシューティングに決めた理由は……」
児玉さんの言葉に児童たちは一言も聞き逃すまいと耳をそばだてた。
「僕の趣味です」
自分の趣味や好みで決めることはプロも児童たちも同じ。
趣味とはいえ、自分が正しい、面白いと思うことを貫くことは大切だ。本当に心から自分が面白いと思ったことでなければ、プレーヤーはもとより、一緒にゲームを作る仲間にも伝わらない。
児玉さんは、「自分が正しい、面白いと思ったこと、自分の考え」をチームの仲間に伝えるために絵と文字を駆使した。

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児玉さんが説明のために作成した資料

 

クリエイターに説明し、通じないところはじっくりと話し合ったという。
この「どうして自分が良いと思うのか、根気よく相手に説明する」というのはオリジナルゲーム作りの教室でも何度となく目にした光景で、プロのクリエイターも同じことをしていたのだ。
児童たちは2学期に自分たちが行ったことを思い出しているのだろうか? その瞳には目の前の説明画面が映っているようにも、2学期の在りし日の授業が映っているようにも見えた。
児玉さんが、
「アイデアを考えて、ぜひ友達に話して欲しいです。自分の考えを言うのは恥ずかしいし、緊張もする。でもそこを乗り越えると、とても良いことがあります」
と企画プロセスの話を締めくくった。

続いて、キャラクターデザインを担当した山田剛司(やまだ こうじ)さんが壇上に上った。

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キャラクターデザインの山田剛司さん(写真右)

 

普段からデザインの仕事をしている山田さんだが、今回のお題にいきなり頭を抱えたという。

  • シンプルに表現すること
  • 万人受けすること

 

この2点が極めて難しいためだ。今回のデザインでは、
「いかにシンプルにみんなに伝わるようにするか」
というところに時間を割いて考えた。
「キャラクターを作る時、誰をターゲットにするのかが肝心です」
その言葉に、児童たちが身を乗り出した。

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今回は小学生がターゲット。そのため既存のゲームのプレイヤーの年齢層をひたすら調べ上げて小学生が好むキャラクターの傾向を探った。魅力的なキャラクターを作る過程で、企画担当の児玉さんから、色の数を減らして欲しいという注文が入った。たくさんの色があると分かりづらくなるためだという。ここで企画担当者とデザイナーのこだわりがぶつかり合ったが、2人のこだわりのおかげでより完成度の高いゲームへと昇華させていくことができた。出来る限り赤っぽい色と青っぽい色に色調を合わせたことで、当初の「シンプルな表現にする」という目標も達せられたのだ。さらに山田さんは、
「キャラクターデザインで大切にするのは“かわいい”ということ。“かわいい”は今や世界共通の認識で、みんなが好きなもの。いろいろなかわいいがあるが、その中でどう魅力を出すかが大切」
と語ってくれた。

続いて、ロゴデザインの今福康仁(いまふく やすひと)さんがマイクを握った。

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ロゴデザインの今福康仁さん(写真右)

 

ロゴや文字を作成した今福さんは今回、児玉さんからのリクエストが新鮮だったという。
「AIが作ったロゴを基にデザインを考えて欲しい」
というものだ。
AIの進歩は目まぐるしく、昨日までできなかったことが今日になったらできる。そのくらいのスピードで日々進化しており、依頼した児玉さんも新しい技術を試したいと思っていたのだそうだ。
一瞬で回答を出すAI。そのAIがロゴを作るのに1個あたりわずか5秒程。AIにかかれば9分足らずで100個のロゴ案が完成する。

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プロプロ

AIの作ったロゴ

 

「AIは文字が書けないので、その部分を変えました」
今福さんはAIの提案を基にロゴを描くことは、通常の0からロゴを描く作業よりも楽だったという。
まずAIが出した100以上の案を並べ、どういったものが良いかイメージの方向性を決めていった。タタキとなる案があることで、アイデア出しや確認の時間がぐっと短縮でき、その分フォントの大きさや種類、色味の調整などのクリエイティブな部分に時間を割けた。
最終的に、ロゴは小学生向けにカタカナにし、ぱっと見るだけで読めて、目につくよう工夫した。

あっという間に1時限が終わり、休み時間に入った。

10分ほどの賑やかな休み時間が終わると、再び静けさが戻った。
後半の授業では、まずサウンド担当のクランキーさんが壇上に上った。

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サウンド担当のクランキーさん

 

「みんなからも日々曲が生まれている」
というクランキーさん。一見難しそうに感じる作曲作業だが、お風呂で歌う鼻歌も、手を叩いてリズムを取ることも作曲だという。その言葉に児童たちの顔がぱっと明るくなる。
「作曲というのは、こういうのを作りたいなというのを音で形にしていく作業」
サウンドクリエイターのクランキーさんは今回の作曲過程で、まずゲームのキービジュアルを見た。「かわいい絵」そう感じた。とはいえ、ゲームはシューティングゲーム。だから、かわいいだけではなく、勢いのある音楽が浮かんだ。さらにUFOが出てくるのであれば、宇宙をイメージさせる音が欲しい。イメージを膨らませ音に変換していく。
ポイントは、必殺技の時に、わざと音を消したことで緊張感を出し、ラスボスが登場する前に、不穏な空気を演出するような音にした。
「緻密(ちみつ)に計画をしても、最後は運や偶然に左右されることがある。だから最後は心に従って作る」
クランキーさんの言葉に児童たちが引き込まれていく。

プロプロ

 

最後に音楽を仕事にしたい児童たちに向けてメッセージを送った。
「普段の音楽の授業での勉強をこなすこと。そして暇さえあれば、音楽に触れること。今はスマホで音を出せるアプリやYouTubeもあり、いくらでも音楽の勉強ができるから」

続いて、プログラムを担当した長谷部巧(はせべ たくみ)さんと菅家洋太(かんけ ようた)さんが壇上に上った。

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写真右が菅家さん、真ん中が長谷部さん

 

「まずはプログラムのコードを見てみよう」
モニターにコードが映し出されると児童たちからどよめきが起こった。

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かつて見たことがないほど複雑なコードが組まれ、画面を縮小しなければ全部を映すことができないほどだ。
「ぜんぜん違う」
児童たちからため息が聞こえる。
コードを拡大しつつ、「ここでステージを作っています」とか「ここでUFOが並んでいます」と解説が始まった。
工夫した点の説明の前に、長谷部さんが質問をした。
「変数ってわかりますか?」「変数に2種類あるのわかります?」
いずれの質問にも頷く児童たちに、
「変数名を分かりやすくし、読みやすく作りました」
と語る。2人のプログラマーの間で混乱が起きないように、また過去に自分が作った変数が自分でも分からなくならないようにするための工夫だ。
そして工夫したもう一つの点は、
「定数を使ったこと」

プロプロ

 

定数の概念を知っている児童がまばらだったため、簡単な説明があったが、要するに定数を使うことで、急な変更にも後から楽に対応ができるようになったという。
プログラムを作る時に心がけたのは、
「このプログラムをみんなが見るかもしれない(だから誰が見てもわかるようにした)、みんながプログラムを組むかもしれない(だから誰でもわかりやすいものにした)」
のだそうだ。

最後に児玉さんが今回のチームで作ったゲームについて総括した。

きょうのまとめ
  • 企画はお客さんに楽しんでもらうように一所懸命につくる
  • 企画をみんなに伝える。自分の思うこと、良いと思うことは伝える
  • 遊んでくれる人のことを考えながら作る(と楽しい)
  • 1人でできないこともみんなでやればなんとかなる

 

説明の後に、大きな拍手が沸き起こった。

質問コーナー

最後の質問コーナーでは、何人もの児童たちが勢いよく手を挙げた。

──このゲームは何日かけて作ったのですか?
今年(2023年)の2月から土日を使って作りました。合わせると、だいたい7日間くらいかな?(企画担当児玉さん)

 

児玉さんの回答にクリエイター全員が大きく頷いた。
子どもたちからは、どよめきが起こった。想像していたより短いと思ったらしい。

プロプロ

質問する児童

 

──企画で一番大切なことは何ですか?
企画する人によって違ってきますが、一番良いと思うものを決めること。そして一番良いと思うものをきちんと出すこと。(企画担当児玉さん)

──他のゲームを真似して作ることはありますか?
20年以上ゲームを作っていますが、意識的に真似したということはありません。ただ子どもの頃に遊んでいたゲームの影響は受けていると思います。(企画担当児玉さん)

プロプロ

次々と手が挙がる

 

──デザインってシンプルな方がいいのですか?
デザインは複雑なものをシンプルにしていく、情報を削る作業です。
複雑なものの方がかっこいいと思いがちだけれど、シンプルなものの方が、伝えたい情報を伝えやすくなります。(キャラクターデザイン担当山田さん)

──絵をキレイに描くコツは何ですか?
めちゃくちゃいっぱい描くこと。常に描く、面白いものを描く。とにかく練習あるのみです。(キャラクターデザイン担当山田さん)

プロプロ

質問を聴くクリエイターのみなさん

 

──背景のデザインはどうやって決めましたか?
キャラクター(プレーヤー)の色が青と赤の2色に決まってから、背景はそれ以外の色で、青と赤が目立つような色を考えていきました。(キャラクターデザイン担当山田さん)

──キャラクターの色はどうやって決めていますか?
「青を決め、青とは全然違う色、遊びやすいような色を選んで欲しい」とリクエストしました。(企画担当児玉さん)

──プログラムを作る中で、右下にあるキャラクターは何体ですか?
今回の作品には50以上のスプライト(Scratchでキャラクターを指す)を作り、それぞれにプログラムを組んでいます。
(プログラム担当の長谷部さん)

この言葉に「めっちゃ多い」と感嘆の声が上がった。

授業が終わると、大きな拍手と感謝の言葉が送られた。

プロプロ

クリエイターのみなさんに拍手が送られた

 

初等部礼拝堂を去る児童たちはどの顔も新しい驚きで満ちていた。
この経験はこれからの人生においても大きな学びとなるはずだ。2023年度、ついに最終学年となる彼らの成長にこれからも目が離せない。

授業を終えて

今回の特別授業を見学されていた大学教育人間科学部の杉本卓教授に話を伺った。

プロプロ

授業を見学する杉本卓教授

 

──ご見学されていかがでしたか?
変数や定数の話ではちょっと集中力が切れていましたが、全体を通して子どもたちが集中して聞いているのが印象的でした。
自分たちが作ったことのあるゲームを、プロが作ったらどうなるのか?
というところに興味が持てたためだと思います。
紹介映像を見ている時、児童たちは普段馴染みのあるようなゲームだと感じたはずです。そのゲームは、自分たちが作ったものと同じもので作られており、自分たちが学んでいることや、していることの延長線上にあるものなのだと、そう実感することはとても大切です。
プログラミングの授業でも言われたことをただ打ち込んで練習していくのではなく、冷蔵庫のプログラムについて考えたり、身近なものの仕組みを考えたり……。
学習を重ね(プロセスを経)たら、もうちょっと高度なものができるのではないか? 今日の授業ではそう感じることができたはずです。この特別授業を経て、子どもたちがこなす課題に変化が出てくるのではないでしょうか。

話が逸れますが、ロゴ作成でAIを使ったというところが興味深かったです。AIの利用は、あくまで提案させることのみに留めたことで、クリエイティブな作業に時間を割くことができました。これは上手い方法だと思います。今話題のChatGPTもそうですが、どうAIを使うのか。これは教育の分野でも重要な課題となってきます。AIの出す答えが本当に正しいのか。ユーザーのことをきちんと考えた答えなのか。どこをAIに任せるのか。どう使うのか。そこを考えることは大切で、それを教えるのがこれからの情報教育となるでしょう。

サイバーエージェントの浮田光樹さんに話を伺った。

プロプロ

サイバーエージェントの浮田さん

 

私達は、ゲーム作りを物作りと呼んでいます。物作りで大切なのは、誰に届けるかを意識すること、想像すること。相手がどうしたら喜ぶかを、考えることが物作りです。
弊社ではかつて新卒の新入社員たちにバーベキューを企画させていました。
そこで、新入社員たちは食べ物や飲み物の量はどのくらいにしたらいいか。場所はどうするか。雨が降ったらどうするか。様々なことを想定して企画し、それを通して他人を喜ばせることはどういうことか、相手について考えることを学びます。
今回のゲーム制作も、実はやっていることは同じです。
ゲームは1人の天才が作っていると思われがちですが、そうではありません。1人で解決できないことも、みんなで協力して実現していくことができる。それがゲーム作りであり、物作りです。今回ゲームを制作したメンバーは、特に周りを大切にするメンバーで、とても風通しが良いのも特徴的でした。遊んでくれる小学生のことはもちろん、メンバーのことを考えながら、そして何より楽しみながら作っていました。
これからの授業の中で、児童たちが周囲のことを考えながら素敵なものを届けられるようになってくれれば幸いです。

最後に井村先生に話を伺った。

プロプロ

授業後、浮田さんと話をする井村先生(写真右)

 

自分の感じたことや考えたことを言語化して伝えること、それはどんな職種であっても大切なことです。
プロの人たちは、分業と協力を上手く使い分けていました。相手の能力をきちんと受け入れ、1つのものを作り上げていました。
子どもたちがそこまで気づいてくれると良いですが、今日の授業はキャリア教育の一環にもなったと思います。子どもたちも、互いの能力を見つけ、認め、活かし合い、協力して1つのものを作り上げていって欲しいですね。

プロプロ

 

実際にゲームで遊んでみよう

ツインパレットシューターズで遊んでみよう!!

遊び方
  • 青ロケットの人は、上「Eキー」、下「Dキー」、左「Sキー」、右「Fキー」攻撃は「Qキー」を押します
  • 赤ロケットの人は、上「↑キー」、下「↓キー」、左「←キー」、右「→キー」攻撃は「Pキー」を押します
  • 自分のロケットと同じ色のUFOを攻撃して賞金をゲットします
  • UFOにぶつかったり、壊せない壁にぶつかると賞金が減ります
  • 次第に難しくなりラストには大物が…!協力コマンドを使おう!

 

つづく