説明しよう!
放課後819(ハチイチキュー)倶楽部とは——
俳句を1から楽しく学ぶことをコンセプトに立ち上がったwebサイト上の倶楽部である。
紹介しよう!
倶楽部員は2人。
顧問は青山学院中等部の国語科教諭、林謙二先生。
第14回の倶楽部活動の様子をここに報告しよう。
(なお、倶楽部活動はリアルと仮想の両方で行われる。)
発展編
林先生
放課後819倶楽部第14回の倶楽部活動を始めます。今回からは俳句の発展編だ。突然だけど、この句。( )には何が入ると思う?
さとは
先生、逸り(はやり)つつってどういう意味ですか?
林先生
ワクワクしているという意味だ。ワクワクしすぎて気持ちばかりが焦る感じだな
はんな
紐むすぶ、だと運動靴のイメージで陸上が思い浮かびますが……
林先生
いい線だ。ただ( )以外、中七、下五を見ると、季語が何もないから、( )には季語になる言葉が入る。運動靴や陸上だと季語にはならないから、別の言葉が入る
はんな
季語になるもので、紐をむすぶ必要のあるものかぁ
林先生
ヒントは、スポーツ。そのスポーツ自体が季語になっている
さとは
あぁ、わかった! スケート
林先生
正解!
林先生
スケート靴は紐をたくさん編まなければいけない。その編む時間も惜しいくらい、早く滑りたいという作者の気持ちがよく出ている句だ。このようにスポーツ自体が季語になっているものがある。発展編ではスポーツに関する句を中心に学んでいく。今日はスポーツの例句から学んでいこう
スポーツと俳句
林先生
これは、授業で扱ったことがあるから、当然覚えているよね
はんな
冬!
さとは
冬!
林先生
さすがに2人同時に正解だ! 解説をすると、跳箱は季語じゃない、つまり上五、中七に季語はないから、( )には季語が入る。そこからも推測できる。ちなみに、もし冬以外の季節、春や夏だったらどうだろう
☆妄想俳句集
跳箱の突き手一瞬春が来る跳箱の突き手一瞬夏が来る
はんな
爽やかさとかキリっとした感じが出ない。なんだか「もわ~」とした感じになる気がします
林先生
そうだね。冬という言葉には寒さを感じる。その冬の寒さに対する体の反応や緊張と、跳箱を跳ぶぞ! という一瞬の緊張感、もうすぐ冬が来るという緊張感がよく合っている
林先生
この跳箱の句も、さっきのスケートの句も実体験を基にした句になっている。でもスポーツの句の良いところは、観戦したことも句にできるところだ
スポーツを観戦して
林先生
この句の( )には何が入ると思う?
さとは
先生、この心がいっぱいある漢字って何ですか?
林先生
これは“しべ”と読む。花に雄しべ、雌しべってあるでしょ? そのしべのことだ。ちなみに花弁というのは花びらのことだ
はんな
しべになったり、花びらになったりする……上五にも中七にも季語はないから……
林先生
そう! ( )には季語が入る。競技自体が季語になっているものが入る
はんな
クルクルって回転するフィギュアスケート? スケートしか思い浮かばない
林先生
惜しい。スケート自体がしべになったり、花弁になるわけじゃない。しべになったり、花弁になるのは、その競技をする人だ。何て言う?
はんな
スケーター?
林先生
正解。氷上を回ったり、跳んだりするのを、花にたとえている。競技自体が季語になっているものを使って、観戦したことを句にしているんだ
林先生
続いて、この句はどうだろう。( )には何が入ると思う?
林先生
そう言えば、菱形って分かる
さとは
こんな形
林先生
そう、菱餅の形だ
はんな
顔が菱形に押されるスポーツ? 何だろう
林先生
中七にも下五にも季語がない。だから( )には季語のスポーツが入る
さとは
柔道?
林先生
柔道は季語じゃない。正解はラグビーだ。冬の季語になっている
林先生
がたいの良いラガーマンたちのぶつかり合う感じがよく出ている。これは実体験ではなく、観戦者の目線で詠まれた句だ。このようにスポーツの句は、
林先生
実体験の句、観戦の句とある。そしてもう一種類、スポーツ用品の句について。まずは句から見てみよう
スポーツ用品の句
林先生
これは草萌ゆるが春の季語になっているから、( )には季語以外の語が入る。ヒントは洗濯して絞るもの。でも2人がかりで絞らなければいけないものだ
はんな
なんだろう
さとは
わかんないなぁ
林先生
正解は柔道着だ。柔道着は分厚い。汗のしみこんだ柔道着は、よく洗いよく絞らないと臭ってしまいそうでしょ?
林先生
このように競技を観戦したり、実体験ではないけれど、スポーツ用品自体を詠んだ句というのもあるんだ
はんな
さっきのスケート靴の句は実体験の句であり、スポーツ用品の句でもありますね
林先生
そうだね。柔道着の句は柔道着が季語ではないけれど、スケート靴は冬の季語になっていた。
このようにスポーツ用品自体が季語になっているものもある。例えば、夏の季語である山登り、登山で使う道具、寝袋やテントも夏の季語になっている。ここでスポーツという視点で季語を見てみよう
スポーツの季語
スポーツの季語
- (春)ボートレース 遠足
- (夏)水泳 ナイター 海水浴 登山 ヨット
- (秋)運動会 相撲
- (冬)スキー スケート スノーボード ラグビー 縄跳び
- (新年)箱根駅伝
はんな
遠足って春の季語なんですね。秋のイメージだったんですけど
さとは
わかる
林先生
遠足、この間(4~5月に)行かなかった? 春に行くものでしょ、遠足は。(←無理やり)だから遠足は春の季語だ。まあ遠足がスポーツかって言うと疑義がありそうだけど……ボートレースは競艇ではなくオールを使って漕ぐボートのことで競漕の方だ
林先生
夏の季語にある、ナイターってわかる?
はんな
夜に行う試合のことですよね
林先生
その通り、これは和製英語で。英語ではnight game。ナイターが夏の季語なのは、生ビールの旨い季節とナイターが結びついたからなのか、まぁ実際のところは不明だ。でも登山が夏なのは、山開きと関係している。富士山の山開きが毎年7月であるように、夏の時期に山開きがある。だから夏の季語
林先生
秋の季語である相撲だけど、そもそも相撲が何場所あるか知っている?
はんな
知りません
林先生
6場所だ。1場所は15日間(昔は10日間)行われる。その大相撲、実は場所が行われる時期によって季語の季節が変わるんだ
スポーツの季語
- (新年)初場所 ※大相撲一月場所のこと
- (春)春場所 ※大相撲本場所の一つ、三月に行われる大阪場所のこと
- (夏)夏場所/五月場所 ※大相撲本場所の一つ、東京で行われる
名古屋場所 ※大相撲本場所の一つ、七月に名古屋で行われる
- (秋)秋場所/九月場所 ※大相撲本場所の一つ、東京で行われる
- (冬)九州場所 ※大相撲本場所の一つ、十一月に九州で行われる
さとは
春夏秋冬、それぞれの季語がある
林先生
その通り。ここで、○○場所を加えて、もう一度スポーツの季語を見てみよう
スポーツの季語
- (春)ボートレース 遠足 春場所
- (夏)水泳 ナイター 海水浴 登山 ヨット 夏場所/五月場所 名古屋場所
- (秋)運動会 相撲 秋場所/九月場所
- (冬)スキー スケート スノーボード ラグビー 縄跳び 九州場所
- (新年)箱根駅伝 初場所
- ※その他、競技をしている人(スケーターなど)が季語になることもある
はんな
こうしてみると、スポーツの季語って、夏と冬が多いですね
林先生
スキー、スケート、スノーボードは雪原や氷上など、冬のイメージだし、ラグビーや縄跳びも白い息を吐きながら行うというイメージがある。まあ大きな大会が冬に多いのも、スポーツに冬の季語が多い理由の一つかもしれない。それからマリンスポーツは夏と結びつきやすいから夏の季語も多い
はんな
あの~、ナイターは夏の季語に入っていますが、野球は季語じゃないんですね
林先生
そう。野球だけではなく、高校野球や甲子園も季語にはならない。テニスや卓球、バスケットボール、バレーボールも季語にはならない
林先生
そういえば、高等部のバレーボール大会ってもうすぐだったよね
はんな
はい、来月です。みんな、バレ大(※バレーボール大会の通称)に向けて練習を頑張っています
林先生
そう。じゃあお題:バレーボール
さとは
えっ!?
林先生
バレーボール大会、バレ大を経験して、バレーボールの句を詠むこと。ちなみにバレーボールは6音だけど、早口に言えばあまり字余り感が出ないから、上五か下五に置くと良いかもしれない。バレーボールを日本語にすると排球(はいきゅう)。4音として使える。まあ排球はちょっと古風な言い方だけど、
さとは
『ハイキュー!!』ってそっかぁ
林先生
?
さとは
バレーボールが排球、だから『ハイキュー!!』(※バレーボールを題材にした漫画)って言うんだ
林先生
? ……排球の方が今はかえって新鮮かもしれないな。とにかく、次回はバレーボールの句を持ってきてもらうよ。ちなみにわたしが以前に詠んだバレーボールの句、聞きたい?
さとは
聞きたくないです(両耳を手でふさぐ)
はんな
(笑)
林先生
じゃあ、わたしの句は君たちの句と一緒に披露するとしよう。では次回
【次回】第15回 バレ大!へ続く