説明しよう!
放課後819(ハチイチキュー)倶楽部とは——
俳句を1から楽しく学ぶことをコンセプトに立ち上がったwebサイト上の倶楽部である。
紹介しよう!
倶楽部員は2人。
顧問は青山学院中等部の国語科教諭、林謙二先生。
第17回の倶楽部活動の様子をここに報告しよう。
(なお、倶楽部活動はリアルと仮想の両方で行われる。)
句会!
林先生
放課後819倶楽部の第17回目の活動を行います。今回は、前回の吟行で詠んだ句をもとに句会を開催します。引き続き横須賀学院高等学校の寺澤始先生と横須賀学院高等学校の生徒さん6名、そして中等部3年選択授業の俳句履修者の4名に参加いただいています
寺澤先生
どうぞよろしくお願いいたします
林先生
(プリントを配布しながら)それでは早速句会を始めましょう。皆さんには、吟行終了後に2句ずつ投句してもらいました
林先生
自分の句以外の4句を選んでください。こういう句を選ばなくてはいけないとか、そういうルールはありません。「ああ、わかるわかる」と共感できる句でも、「おもしろいな」と思った句でもいいです。とにかく4句、いいなと思った句を選んでください
林先生
そろそろ選べましたか? では、選んだ4句を読み上げていただきましょう。それでは、順番に……さとはさんから
さとは
さとは選。5番。豊熟に実る赤茄子都会っ子 8番。猛暑日や帽子並んでひとやすみ 20番。風ゆるしビルの谷間のかぶと虫 26番。炎天の下咲き誇る音の花
はんな
はんな選。2番。樹の下に空蝉一つ泣き別れ 5番。豊熟に実る赤茄子都会っ子 12番。紫陽花の黄と青混ざり枯れてゆく 20番。風ゆるしビルの谷間のかぶと虫
あい
あい選。5番。豊熟に実る赤茄子都会っ子 9番。汗たらしさまよい歩く午後の二時 18番。夏の庭青色の花透き通る 26番。炎天の下咲き誇る音の花
この後、林先生、寺澤先生を含めた参加者全員が推しの4句を発表した。
そして句会は、それぞれが推しの句への愛コメントを発表する段になり、大いに盛り上がった。
しかしここでは、放課後819倶楽部の2人の句をメインに、高得点の句などいくつかの句に絞り、
句とそのコメントをここに紹介することにする。
わたしがこの句を推す理由!
林先生
句を選んだ方はそれぞれコメントしていただければと思います。まず今日最高得点の句から。5番
林先生
5番を取ったさとはさんとあいさん。どこが良かったかコメントをお願いします
さとは
都会っ子というリズムがいいと思いました。また、豊熟に実るという言葉が田舎のイメージなのに、都会っ子という言葉がとても対照的で、強く印象に残りました
あい
都会っ子というのはあまり見たことのない表現だなあと思いました。また今日あった出来事を思い出しました
寺澤先生
これは今日一番人気の高かった句ですね。先ほど、さとはさんのおっしゃられた通り、“豊熟に実る赤茄子”までは田舎の風景に思うのですが、次に都会っ子とくる。その意外性がよく効いています。都会の学校になっているトマトをよく表現していると思います
林先生
寺澤先生、ありがとうございます。こちらはどなたの句でしたか
ゆうき
はい
あい
すごい!
林先生
では次に得点の高かった18番
林先生
この句は、私も取りましたが、寺澤先生も取っていらっしゃいますね
寺澤先生
青の花がとても印象に残る句ですね。青学に来たことにちなんで使ったであろう青という字、そして透き通るという言葉も加わり、とても涼しげです
林先生
ありがとうございます。こちらはどなたの句でしたか
こうせい
はい
寺澤先生
こうせい君の句でしたか。よく観察していますね
林先生
それでは、こうせい君の句と同じ得点の句。26番
林先生
では、たまき君、いかがですか
たまき
「音の花」という表現に惹かれました。「音の花」が何かは分からなかったけど、きっと音楽なのだろうと思いました
林先生
こちらは、どなたの句でしたか
りりか
はい
林先生
りりかさんの句か。なるほど吹奏楽部だったね
りりか
暑い中、吹奏楽の音楽が聞こえてきて、炎天の下で音が拡がる。それが花のように拡がる感じがする、というのを詠みました
林先生
なるほど。次いで高得点だった8番
こうせい
よく気持ちがわかる句だと思いました。“並んでひとやすみ”というところから、大人の休憩ではなく、小さい子ども達の光景が浮かびました
林先生
なるほど、ありがとうございます。こちらは、どなたの句でしたか
はんな
はい
林先生
はんなさんの句でしたか。それでは、11番にうつりましょう
ゆうき
炎天下のキャンパスで集中して読んでいる。本好きなのがよくわかる句だと思いました
寺澤先生
本の虫、という表現が良いですね
林先生
ありがとうございます。こちらは、どなたの句でしたか
あい
はい
林先生
あいさんの句でしたか。それでは12番
はんな
枯れてゆく、というのが切ない感じがして、良いなと思いました
寺澤先生
色をよく見ている、良い句ですね
林先生
ありがとうございます。こちらは、どなたの句でしたか
さとは
はい
林先生
さとはさんの句でしたか。では続いて20番
さとは
ビルの谷間にいるかぶと虫はとても窮屈そうに見えるのですが、風ゆるしという言葉のおかげで、かぶと虫がのんびり生きている感じに印象が変わる句だなと思いました
ゆうき
実はかぶと虫で詠もうとして、上手く詠めなかったのですが。この句は自分の言いたいことを上手く表現している句だなと思いました
寺澤先生
さとはさんのおっしゃる通り、風ゆるしが上手く使われていますね。生暖かい空気の中、涼しい風が吹く。すごく良く出来ていると思います
林先生
ありがとうございます。実はこれ、わたしの句です。では続いて22番
ゆうき
虫にもしっかり意志があるというのがいいなあと思いました。夏らしい生命力を感じました
寺澤先生
ありがとうございます。実は、私の句です。角が小さいオスを見つけた時、人間の社会でも性の多様性が言われるようになってきたけど、昆虫の世界でもそうなのかもしれないなと感じました。多様性を詠みたいと思って詠んだ句です
林先生
ありがとうございます
最後に……
林先生
今日の放課後819倶楽部は横須賀学院高等学校の有志の皆さん、青山学院中等部3年選択授業俳句の有志の皆さんと共に行いました。最後に感想をどうぞ
あい
いつもとは違う感じで楽しかったです。普段は見られないようなものも見られたし
あい
普段とは違うメンバーと句を詠むことも出来ました。あと、いつもとは違って、みんなよそ行きの句を詠んでいる気がしました
林先生
よそ行き?
あい
いつもは笑いを取るような句が一つはあるのですが、ふざけた句がなく。受けの良さそうな句が多かったです。気をひきしめて詠んでいるなと感じました
林先生
では、放課後819倶楽部の2人
さとは
色々なパターンの句があり、一つの要素がかぶっても、全てが重ならなくて面白かったです。また自分の句をどう直したらいいか考えられて良かったです
はんな
いつもとは違う句に触れて、とてもいい刺激になりました。ありがとうございました
林先生
確かに、毎回同じメンバーで句会をしていると、誰の句か分かってしまうこともあるもの。こうして、いつもとは違うメンバーで句会を行うと、いつもと感じの違う句が出てきてとても勉強になるものです
寺澤先生
確かにそうですね。先日、講演(※神奈川県高等学校文化連盟・文芸専門部技術講習会の講演)で林先生がおっしゃっていましたが、俳句は、要約するという国語力を伸ばす勉強にもなります。ぜひ、これからも今日のような吟行句会を行いましょう
あい
えぇー
すかがくがいい(※すかがく=横須賀学院高等学校の略)
寺澤先生
はい、はい。みんなで企画しようね
林先生
ぜひ機会があれば。また吟行句会を、よろしくお願いいたします
【次回第18回 季語部屋歳時記 秋冬・新春編!へ続く】